悪い奴ほどよく眠るのレビュー・感想・評価
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闇深き権力構造に挑む!
黒澤プロダクション第一回作品。
Blu-rayで鑑賞。
東宝から独立した黒澤明監督が、自身のプロダクション初製作作品に選んだ題材は、当時世間を賑わせていた大企業と国が絡んだ汚職の実態に迫る、という骨太な社会派路線でした。
描写はリアルでありながら、エンターテインメント性も忘れず…。蜥蜴の尻尾切りで自殺した父親の復讐のために行動する西幸一を主人公に、スリルとサスペンスが炸裂しました。
冒頭の披露宴シーンで、背景説明を分かりやすくスマートにやってのけたかと思えば、後は最後までノンストップ、息も吐かせぬハラハラ・ドキドキの展開に手に汗握りました。
悪を追い詰めるためには、自らも悪に染まるしかないのか。目的と手段の相克に苦悩しながらも、ジワジワと標的を追い詰めていく西。しかし、敵はあまりにも巨大でした。
闇深き権力構造に対して、個は無力なのか。正義を貫徹することが何故こんなにも困難なのか。苦い結末の後の「これでいいのか!」と云う怒りの叫びも虚しく響き渡るのみ…
決して表に出ることなく、利権を貪り、国民の血税を懐に納め、枕を高くして眠っている悪い奴には、指一本触れることさえ出来ないのか。今も昔も不変な黒い機構に戦慄しました。
※修正(2023/06/01)
存分に堪能できるサスペンスの傑作です
長すぎてだれる!!
長尺の上どのシーンも長くテンポが悪いです。冒頭の結婚式のシーンも長すぎます。黒澤作品はいつもタイトルは熱いのですが、中身はひたすら起伏に乏しい気がします。夜道に切り替わると、おっ暗殺パート来たかとなりますが、重要人物が誰もいない夜道を一人歩きしたり、官庁で一人居残っていたりするのでネタ映画になっています。10年前の第一次安倍内閣では松岡農相の不審死がありましたが、死体を見つけて一時間通報しなかったそうです。次の赤城農相の顔がボコボコになっていたり、農水官僚も次々と痴漢で逮捕されたので、これは農林中金を寄こせという脅迫によるものでしょう。経世会の政治家は次々に汚職が発覚したり殺害されたり病気にさせられました。昨年、加藤の乱で森喜朗に歯向かった加藤紘一が亡くなり、谷垣は自転車事故で半身不随となったので邪魔者はいなくなり、清和会は現在も安泰です。社会派のようで、下山事件の黒幕のGHQや現在でいうジャパンハンドラーズのような存在も出てこないし、中川昭一殺害を指示した世界銀行のロバート・ゼーリックみたいのが出てくればワクワクしましたが、リアルさに欠ける内容の映画でした。
黒澤監督の逸品
田中邦衛さんがヒットマン役で登場。
検事役の宮口さんは七人の侍と同様にクールな役どころ。
志村さんは悪役。
笠さんはこの作品では若かった。
藤原さんは隠し砦の三悪人同様に情けないオーバーな演技。
オールスターで揃えた凄い作品です。
世の中、こんなものだよね
忠誠心と正義
企業汚職という現実の闇を背景に、忠誠心と正義の衝突を描いた異色のサスペンス。主人公・西(三船敏郎)は父の死をきっかけに復讐を遂げようとするが、復讐対象の娘を愛してしまったことでその正義が揺らいでいく。その葛藤は決して大声では語られず、口笛やタバコの所作といった沈黙の演技で滲み出る。三船らしからぬ抑制の効いた演技が、この作品の静かな緊張感を生んでいる。
和田課長補佐(藤原鎌足)は、一見頼りないが、誠実さと優しさを併せ持つ存在として、観客の「こうなってほしい」という願いを代弁する。しかし物語はその願いを裏切る形で進み、和田もまた翻弄される。そこにこそこの作品の本質――「現実は希望通りにはいかない」という黒澤の厳しい視線がある。
正義は果たされず、忠誠心もまた報われない。それでも愛する者を守ろうとする意志が、最後にかすかな救いとして残る。まるで希望を差し出してからそれを突き放すような構造は、観客に深い問いを投げかける。何のための忠誠なのか?正義とは何か?そして、なぜ悪い奴ほどよく眠れるのか?
複雑な構成と心理描写が見事に噛み合い、一見シンプルな物語の裏に普遍的なテーマが息づく。観るたびに違った面が見える、観るものに永遠のテーマを投げかけてくれる作品。
(2016/02/11 記載)
「サスペンス映画の傑作」
片刻も目が話せず151分があっという間。
主人公の三船敏郎をはさんで公団の課長補佐役の和田(白髪のメガネ)と
加藤武が天使と悪魔のように配置されたカット。
三船が天使の方を向きその話に従ってもうまくいく訳ではない。
理想主義者が喜びそうな展開にうんざりさせられるのか思いきや・・・。
政治サスペンス映画としても屈指の出来であります。
96点
テンポよく展開して飽きさせない。2転3転する。ただ、画面からは空気...
テンポよく展開して飽きさせない。2転3転する。ただ、画面からは空気感のような緊張感があまり感じられない。これは最近の映画のような音楽や効果音を多用していないことではないかと思った。
その音を使わない代わりに、光や表情や態度の演技は迫り来るものがある。
この映画の三船敏郎はいい!
どうしようもない気持ちになる
毎度黒澤作品はストーリーや前情報をなるべく入れずに見ているのですが、今回は復讐モノかと少し上がるテンション。復讐モノにありがちな「復讐なんてくだらないよ」的なメッセージはほぼほぼ皆無で、むしろある人物のその甘さがあの悲劇的な結末を招いていると言っていい。そしてその結末から僕たちが受け取るものは資本主義社会の暗部、大人の汚さ、数の暴力…ああ気持ち悪い。しかし黒澤監督のそういうものに対する怒りがラスト付近のある人物の慟哭に託されている。あれを聞いていると、紛れも無い悪に対する怒りや悲しみが湧き上がり混ざり合いどうしようもない気持ちになってくる。あれは名演でしょう。これと併映されたのが成瀬巳喜男監督の『秋立ちぬ』って心ズタボロになるわ!!どっちも名作!!
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