「考えるな!聞け、見ろ!」ロスト・ハイウェイ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
考えるな!聞け、見ろ!
オープニングでデビッド・ボウイの歌声が聞こえてとても嬉しかった💕ひたすらセンターラインの上を猛スピードで走る夜のハイウェイの映像。かっこいい!スタイリッシュでバウハウスみたいなアールデコみたいな家の外観。でも家の中は物が少なくて生活感や温かみに欠ける。フレッドとレニー夫妻の冷えた関係のように寒々しい。フレッドはレニーを愛しているがセックスで彼女を満足させられない。レニーは「いいのよ」と言うけれど「別に~」という感じ。フレッドとの会話でも文になってなくて語だけ投げやりに言ってる。フレッドに同情してしまう。フレッドはジャズのテナーサックス・プレイヤーだ。
入れ替わって現れた若いピートはフレッドの願望だろう。フレッドは最初の方で言ってた。カメラによる記録が嫌いなのは、自分は自分のやりかたで記憶したいから。妻を殺してもそこから逃げたい、覚えていたくない、その頭の中でピートを分身として生み出した。だからピートは妻のレニーと同一の外見の女性アリスに恋する。アリスはブルネットのレニーとは違ってブロンド。異なるのは外見だけでない。よく話し積極的で自分を愛してくれる。そしてピートはガールフレンドともアリスともガンガンとセックスできてその点もフレッドと異なる。でもフレッド(自分)を思い出してしまうから、テナーサックスの音を嫌う。ラジオから流れてくると頭が痛くなってラジオを消してしまう。自動車整備士仲間のおじちゃんは喜んで聞いていたのに。
フレッドはレニーの友達であるアンディの家のゴージャスなパーティーに妻と行く。レニーとアンディがいちゃいちゃしているのでフレッドは妻とアンディとの関係を疑う。帰りの車の中でアンディと知りあったきっかけを尋ねるも、レニーは、昔、お仕事をくれたの、どんな仕事かもう忘れちゃったけどと、なんか秘密っぽく言う。フレッドにとってアンディはライバル!だからフレッドの頭の中の分身ピートはアンディを殺した。アンディは居間のテーブルの角に頭を刺されたような無残な姿で死ぬ。
アンディのパーティーで出会った白塗り顔の男はドイツ表現主義の映画に出てきそうな顔。カリガリ博士のようなメフィストのような。
サウンドデザインはリンチ監督、凄くセンスがいいと思った。どこで流れたのか忘れてしまったけれどエンドクレジットで"Heirate mich"(結婚してくれ)というドイツ語の歌が流れていたことを知った。それと違うかもしれないけれど、低い男の声でドイツ語が話されていた。二カ所位。でもボワボワと響いていて内容はよくわからなかった。いや、わかった!その男のモワモワ声が"Heirate mich"の冒頭の歌詞なんだ!歌うはドイツのロックバンドのラムシュタイン(Rammstein)!わかったー!すっきりー!
とても可笑しかったのは、エディの車を後ろから煽り運転した男をエディがコテンパンにやっつけて、交通安全の教科書をちゃんと読んで勉強しろ!と言う所。ボコボコに殴りつつ模範的なことを言うからすごく笑ってしまった。お父さんが息子を叱っているみたいだった。
小屋が燃えたかと思ったら元にもどるシーンは時間で遊んでるみたいで面白かった。
デビッド・リンチ監督の映画を私は好きなんだと思った。好きな監督がまたできて嬉しい!
おまけ
血糊がオレンジがかっていてあんまりリアルでなかった。
リンチの作品は全て最高です、監督作品も少ないので、でも一作品ずつ濃厚で、気分爽快は『ブルーベルベッド』と『ワイルド・アット・ハート』ですね、喋り過ぎました。
マルホランド、ロスト・ハイウェイよりも難解でぶっ飛んでイカれたリンチの今の所、最後の作品です。個人的には三部作って感じがします、間に『ストレイト・ストーリー』はありますが。