「すぐキレる夫が一番怖いかも」レベッカ(1940) tatechanさんの映画レビュー(感想・評価)
すぐキレる夫が一番怖いかも
よくよく考えるとけっこういい加減な話なのだが、見てる間はハラハラドキドキしながら見てたし、満足感もあったから、良質のサスペンスなんだろう。タイトルとなった物語の中心人物が既に死んでいて、関係者の話からその人物像を推測するしかないというのは、市民ケーンと同じ。
結局レベッカの自殺とのことだが、屋敷が燃えた理由と同様真相はわからない。屋敷が燃えたのもダンバースの仕業とははっきりしてないし。レベッカもガンで自殺する理由があるというだけで、自殺かどうかもわからない。夫もキレやすいからカッとなって殺した可能性もあるし、秘密の多い人物だからレベッカが悪女というのも作り話かもしれない。
冒頭のいい加減と言ったのは、
①ヨットが沈んだらそれが捜索されずにそのままにされることはまずないだろう。なくなったら結構大ごとだよ。
②ヨットから引き上げられたレベッカの遺体は1年以上経って骨だけだろうから、それで当時の科学でレベッカと特定できたのか?
③断崖で自殺しそうな男と結婚する気になるかな?
④ベンとかいう怪しげな男は結局なんだったの?誰かが事情聴取すると言って結局していない。
⑤従兄弟という男がレベッカについて一番よく知っていると思うが、これも何も問いただしていない。不倫してたのならダンバースが気付くはず。
⑥サスペンスの対象となる疑惑は基本的にこのストーリーにはない。強いて言えばヨットが見つかってからの、レベッカの死因についてだけ。新妻に身の危険は全くない。
⑦結婚前のロマンスはストーリーに不要。
⑧夫の話によるレベッカの死の原因も不自然だが、映画では曖昧なまま。
若い頃に読んだミステリーはたいてい結末で種明かしがされると、スッキリと説明されて、謎が残らないが、映画では結構謎の残る結末が多い。この映画がその走りなんだろうか?そういえば市民ケーンも謎がはっきりとは解き明かされなかった。
ヒッチコックはハラハラさせるのが目的で結末などどうでも良かったのか?だからとにかく派手に屋敷を燃やしただけなのか?それとも意図的に謎の残る結末にしたのか?
ヒッチコックの頭の中が一番のミステリー。