列車に乗った男のレビュー・感想・評価
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人生の乗換駅で、何を想うのか。
えっ?そういう終わり?と軽くパニックになりながらも、ラストの二人の顔がいつまでも心に残る。
人生の折り返し地点を曲がってしまった世代の二人。
初老の男が元教師っていう設定に笑ってしまった。
豪華な家だけど、壁紙がはがれたままになっているとか、細かい設定が粋。
初めて部屋履きを履く男。それだけで、これまでの生活が想像できる。
おしゃべりに飢えている男と、おしゃべりを楽しみながら食事をとったことがない男。
その二人が、食事を共にする様子、酒を共にする様子で心の距離が描き出される。
一つ一つの台詞に日常をにじみださせ、
それぞれの表情・光の使い方で、人生を忍ばせる。
なんて映画だ!!!
音楽もニクイ。
弦の不協和音で何が起こるのかこの先を期待させ、
ハサミの音、犬の音さえ、ドキドキさせる。
そして時折響く元教師のピアノ。最初、孤独のメロディが、終盤には故郷のように響いてくるから不思議。
誰が裏切ったのかとか、よくわからない部分はあるけど、ラストはそうくるかと思った。何かしらのどんでん返しはあるんだろうと思っていたけど。
何を選択し、何を為すか。
自分の力で決められるようでいて、どこかおのずと決まってしまう人生。
夢をみた他の生き方、やりたかったこと。
二人の男を観て考えてしまった。
愛も日数で計れないけど、
友情も、お互いの心の底の底で渇望しつつも、自分でさえ気づかぬふりして隠し持っていたものに触れあってしまえば、日数では計れない。
正確には、友情と呼ぶより、自分の幻影を相手に観ているだけなんだけど、お互いが、お互いが欲しがっているものを共有できる様がうらやましい。
別の人生。誰もが一度は夢想する。
そんな侘びしくも愛おしい想いが込められた映画でした。
ルコント監督らしい幻想的な一本。
引退教師と銀行ギャング…。全くの接点のなかった二人の男性の出会いと、二人の間に静かに育まれる深い友情。
作中の列車は、異なるものを遠くから運んでくるもの(等質だったものを引き離して遠くに運ぶもの)の隠喩なのだろうか。
すっと画面から消える人物やクルマ。
ストーリーの点でも作画の点でも幻想的な映画作品で、その点ではいかにもパトリス・ルコントらしい作風の一本と言えると思う。
ルコント監督が好きになった
フランス語の詩を教えているマネスキエ。アンティークな古びた館でひっそりと一人暮らしをして、たまに来る人とおしゃべりしたくてしょうがない。この町に列車から降り立った男ミラン。謎めいたアウトローの雰囲気を漂わせ、拳銃を持っている。老人は狭心症の持病のため、土曜日には手術を受ける予定で、一方の男は土曜日に仲間と銀行強盗する計画なのだ。
今までの平凡で堅実な生活に疲れ、何もやり残せなかった人生を悔やんでいるところへ、ワイアット・アープに憧れを抱いた少年時代を思い起こさせるワイルドな男の登場である。ミランが銀行強盗を計画していることを知ったマネスキエであったが、計画を止めようとするのではなく、自ら第二の人生を切り開くきっかけになると思い、参加させてくれと頼んでしまう。この少年のような目の輝きがたまらないほど素敵なおじいさん。友情という言葉では片付けられないほどミランに憧憬を抱くのだ。一方のミランも自分の計画性の薄い性格を変えてみたくなり、次第にマネスキエの生活をうらやましく思うようになる。まるで血液型のAとBの対比のようだ。
パン屋の店員や、1日の内午前10時にしか口を聞かない不気味な男といったサイドストーリーが冴えています。もちろん、おしゃべり好きな老人のコミカルな台詞にもやられました。ハードボイルドとコミカルな部分の融合というのは、どうしてこうも面白いのだろうか。字幕から目が離せないくらいにひきつけられてしまいました。
邦題の意味を考えたため、ラストには予想を裏切られ、ファンタジー色の強い内容となりました。死の直前のほんの一瞬の出来事・・・もっと人間臭いドラマだと思っていたのに、釈然としませんでした(途中までは満点評価)。
【2004年9月映画館にて】
重なる
他者とは違う列車に乗って歩んで来た人生が、ふと重なる時がある。
だけど、また自分の列車に乗り込んで行く。少しだけ変わった自分と大きく変われなかった自分と共に。
ルコントらしい、距離のとり方。
生まれ変わってもこれでいいのだ。
だからこその人生。
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