「トム・クルーズの二枚目過ぎるキャラクターが成長譚を上手くは…」レインマン KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
トム・クルーズの二枚目過ぎるキャラクターが成長譚を上手くは…
最近、同じバリー・レヴィンソン監督の
「グッドモーニング,ベトナム」を
観たこともあり、関連付けての鑑賞。
若い頃に観た時は、
この作品の骨子は
トム・クルーズ扮する弟の成長譚なのだと
思うものの、
兄役のダスティン・ホフマンの演技に負けて
焦点がぼけてしまったじゃないか、と
トムの演技力を批判した記憶がある。
改めての鑑賞では、冒頭でのいきなりの
排ガス規制により
車の販売が行き詰まるエピソードや
風力発電の風車シーンには、
環境問題を先取りする要素のある作品
だったのだなぁと、先ずは驚かされた。
また、ダスティン・ホフマンの
スターウォーズのC-3PO的歩行には
今回も思わずニヤリだった。
この映画はアカデミー主要4冠受賞と
キネマ旬報第4位とのことなので
名作の誉れ高い作品なのだろう。
しかし、私には再び不満が残った。
やはり、多分にこの物語は、
兄と出会ったことによる
弟の成長物語なのだろうが、
それがヒシヒシと伝わってこない。
ひとつは、トム・クルーズの演技以前に
兄に対する弟の想いの変遷が
上手く編集出来ていないように思うからだ。
兄がレインマンであることや
彼が施設に入れられた原因が
自分との関連であることが解ったり、
弟の感謝の告白や兄とのダンスシーン等、
要素は多々あったのだが、
それらが弟の段階的成長の描写として
まとまり切れていない気がする。
その意味でも、
成長を遂げた彼が真っ当な人間として
ランボルギーニ問題を解決するシーンが
不可欠ではなかったろうか。
今回、再鑑賞して、
原因が演出や脚本だけにあるのではなく、
やはり、トム・クルーズの演技そのものにも
あると感じる。
例えば、吉永小百合が誰を演じても
吉永小百合であるように、
トム・クルーズの場合も、
彼は誰を演じても
ドラマの最初から最後まで二枚目然でいて、
彼の演技力というよりも
彼のそういったキャラクターから
抜け出すような誘導の出来ない演出力が、
彼が演じる人物を
成長譚たらしめない人物像として
導いてしまう原因ではないだろうかと
思った。
弟役はトム・クルーズではない
別の性格俳優だった方が、
より優れた作品になっていたような
気がしている。