「兄弟のこころの再生を丁寧に描いたアメリカ映画の真面目な感動作」レインマン Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
兄弟のこころの再生を丁寧に描いたアメリカ映画の真面目な感動作
今年度オスカー候補の一作。実の兄弟が旅をしながら心が通じ合う心情変化を追ったシリアスドラマで、ダスティン・ホフマン演じる障碍者の兄の記憶力の超人さでユーモアを出す微笑ましいロードムービー。そつが無い作品に仕上がっているが、ホフマンに対する登場人物のリアクションに作為が見え透いたところがある。芝居の巧さを見せるホフマンの演技が突出していて、映画全体のバランスが最良とはなっていない。上手すぎるホフマンの所為ではなく、バリー・レビンスン監督の演出力の問題であろう。「パピヨン」のスティーブ・マックイーンのような映画的演技の対比があると、このホフマンの芝居はもっと生きるはずだ。トム・クルーズの健康的で嫌味のない素直な演技は良いのだが、もっと内面表現の優れた俳優でキャスティングされれば、主題が深い部分まで描かれたのではないだろうか。真面目な映画だけに批判的にはなれないのだが、思い切ってコメディのスタイルで創作されたなら、もっと面白く感動的に仕上がったかも知れない。しかし、それだと時代に合わない作品に陥る可能性もあるか。このアメリカ映画には、小さく纏まった印象を受けた。
1989年 3月4日 宇都宮オスカーシアター
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