「ルパンオタクとして」ルパン三世 カリオストロの城 悠さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ルパンオタクとして

2023年11月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

久しぶりに観ると驚くべき快活さに満ち満ちた作品だと気づかされた
誰かのレビュー動画で最高のオープニングと言われていたのを想い出した
そのとおりだと思った
勝手なイメージかも知れないが宮崎駿といえば無駄なことを好んでやる監督と思っていたが初期作品の洗練具合たるや
特にクラリスが盗まれるところのカットの鮮やかさは格別
顔を見せるところと見せないところ
ショットの距離感覚なんかもすんばらしい
演出面では圧倒的に宮崎駿の最高傑作だと思う
活劇として完成されている

意外にもと言ったら失礼だがキャラクターがめちゃくちゃ立っていた
『カリオストロの城』がルパンファンから敬遠されてるきらいがある理由にあまりにも宮崎駿の作品過ぎてルパン三世として評価されることが少ないことがあげられる
まるでジブリ作品かのように『ルパン三世』を語られると良い気分はしないのはファン(特に原作ファン)の間の共通点で『ルパンVS複製人間』の方が評価が高いことが多い
しかし改めて観ると宮崎駿はルパンのキャラクターの本質を無駄なく適切に表現できていると感じた
宮崎駿はストーリー上では自分の語りたい物語にキャラクターを従わせている一方で彼らの細やかな表情にその人間性を表現させている点が匠だ
ルパンが悪い顔をするところ、照れ隠しのおふざけに戯れているところ
物語上では別にカッコつけててもいいところで敢えてワルの顔をする
ふとした場面の表情の野蛮さ
凶暴性を経験(クラリスなどによる優しさとの触れ合い)で覆い隠しているルパンの本質を的確に表現できている
ルパンは非常に矛盾まみれの人間だ
無報酬で女の子を助けるのに決して義賊ではない姿を最も高度な台詞ではなく表情と声色(ここは声優の功績)のみで表現しつくしている
見事だった
しかも敢えて顔を見せないところも多く、別れのところなんて並の監督ならスクリーンいっぱいにルパンの絶妙な表情を見せるところを(それを描く技術があるにも関わらず)敢えて引きで足早に逃げ去る動きを捉えるところが名匠である
『カリオストロの城』はルパン三世としても、宮崎駿監督作品としても大傑作である

悠