「優しい記憶に映画が寄り添う喜びを感じられる作品」Love Letter ihatakaeightさんの映画レビュー(感想・評価)
優しい記憶に映画が寄り添う喜びを感じられる作品
岩井俊二監督の1995年長編デビュー作、中山美穂を主演に2つの恋を描いたドラマ。4Kリマスター版リバイバル上映を鑑賞。
映画は、亡き恋人「樹」に対し、時間が止まってしまった一人の女性の手紙から始まる。帰ってこないとは知りつつも、止まってしまった時間に想いを届けたい一心で。そして、初恋の淡い記憶に登場する亡き恋人を知っているもう一人の「樹」。前半のミステリー要素から後半の初恋話を加速度的にテンポが上げていくところはまさに見事だ。
30年ぶりの鑑賞だが、映画同様、朧気だった記憶が少しずつ、そして一気に当時の記憶と映画の内容を思い出させてくれた。図書室の窓から入る柔らかいそよ風の中に溶け込む「樹」。優しい記憶とはこういうものではないだろうか。
1995年に十代二十代だった観客の方も結構いらっしゃるだろう。また新たにこの映画をご覧になられ、若い感性でとらえている今の十代二十代の方もいるだろう。映画同様、これまでも、これからも優しい記憶は私たちのそばにいる。そんな優しい記憶に映画が寄り添う喜びを感じられる作品だ。
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