Love Letterのレビュー・感想・評価
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理屈では割り切れないイビツな関係性と感情が描かれている
岩井俊二という監督が深夜ドラマから頭角を現したときの衝撃はよく覚えていて、それが長編映画を撮るというのだから期待値マックスで観に行ったものだが、今思えば、こちらの期待からちょっとズレたものを見せてくれるという意味で、最初からとても岩井俊二らしい映画だったのだと思う。ちょっとズレた、というのは、一般的に思い浮かべるエモさとはちょっとズレているところで成立していることで、なんなら中山美穂のお元気ですかという叫びも、なんかいい顔して見守っている豊川悦司も、ちょっと唐突で理屈では飲み込めないところがあるのに、なんでかクライマックスとして成立してしまうのが不思議でしょうがない。よくよく考えたら初恋の相手と顔が超似てる(というか一人二役なんで同じ顔なんだけど)だけの女性と出会ってすぐ告白した藤井樹(柏原崇)という男はかなりヤバいと思うのだが、そのヤバさをあまり弄ることなく、それでいて美化してるわけでもない宙ぶらりんな塩梅のまま、残された者の物語が進んでいくというのはかなり奇妙な映画ではないだろうか。そしてさらに、これだけじゃ終わりませんよともうひとつ押してくるエピローグが凄い。倫理や善悪では割り切れなさみたいなもの残しつつ、最後になんかちょっとエモさを噛みしめる藤井樹(中山美穂)の気持ちが言葉で説明できない感じも実にみごとである。
何度観ても...良い
4Kリマスターになったし、中山美穂追悼の意味も込めて観てきた。
いやぁ、DVDも持ってるが、やっぱ劇場でこれ見るのはいいな。30年前と比べてシアターの設備が良くなってるのもあるし。
今更内容にふれる必要も無い岩井俊二の代表作。ストーリーも素晴らしいが中山美穂の可愛さ炸裂。もう一回くらい見に行こうかな。
4Kリマスターだけど、あんまり解像感を上げる方向ではない。なので30年前の映画っぽい古さはそのまま。所々いまどきの4Kっぽい絵が挟まる感じ。だから昔の印象そのまま。
現実は記憶の中に作られる
偶発的な出来事をきっかけに一気に蘇る埋もれていた思い出と、それによって展開する現在進行形なストーリーが、小樽の街を舞台にスタイリッシュでどこかしらノスタルジックに綴られています。
中山美穂は一人二役、おすましな方がしっくりこなくてよそよそしい感じがします。もう一人の樹のあっけらかんとした演技の方が彼女の持ち味が良く出ていますね。
最後に出てくる、プルーストの「失われた時を求めて」は、ラストを締めくくる重要な役割を担う本ですが、この本の主題である記憶と時間軸のテーマがそのまま本作のテーマと言えるでしょう。
そんなことを思い自分に置き換えると、思い出の深いところにダイブしていくような錯覚にとらわれます。
大きな盛り上がりのない淡々と描かれる、言ってみれば「単なるラブストーリー」なんですが、とても感慨深い作品でした。
──中山美穂亡き今、この作品の記憶がより深く静かに胸に染み入ってきます。 彼女の声も、表情も、雪の中の足音も、すべてが記憶の中で生き続けているように思えるのです。
評価 ★★★★★
朝っぱらからお騒がせします
15年ほど前、出先の事業所から直帰しようと退社したところ同僚から電話がかかってきたんです。「〇〇が死んだって聞いた?」〇〇はうちの会社をその数年前に辞めた元同僚で当時無職で私の親友でした。1ヶ月ほど前二人でラーメンを食べに行ったのに、入院していたなんて全然知りませんでした。同僚の電話を切ったものの駅に向かう夜道で呆然と立ち尽くしてしまい、目に入った右手の携帯電話で思わず〇〇に電話しました。「ただいま電話に出ることが出来ません。ピーっという発信音が...」いつもの〇〇の声の留守番電話でした。「モシモシ、お前、ほんまに死んだんか?」。私の“亡き者への問いかけ“はこんな感じでしたが、「お元気ですか? 私は元気です。」の方が物語の始まりとしてオシャレで美しい、雲泥の差です。
新しい恋に踏み切れない渡辺博子、一つ前の恋についてモヤモヤしてまだ終わっていなかったから?そのモヤモヤの理由が二つ、前彼の“一目惚れ告白即断“の理由と“プロポーズ躊躇“の理由。初めて会った時にすぐ告白したくせにこれから添い遂げようとプロポーズする時に躊躇したのは一体何やネン!?私に何か問題があったのかしら?その理由がわからないままでは新しい恋に両手放しでに飛び込めない私、ということなんでしょうか。
“一目惚れ告白即断“の理由は中学時代の初恋相手の藤井樹(女子)に似ていたから?、二つ目の“プロポーズ躊躇“の理由はまだ想いが藤井樹(女子)にあったから?似ていたけどやっぱり別人だと認識したから?それとも全く別の理由なのか、そして宛先不明で返送されるはずの手紙がきっかけで藤井樹(男子)の過去を知ることになって、それが思っていた通りの藤井樹(男子)だったのか全然違う一面を見せていたのか、藤井樹(男子)とのエピソードも渡辺浩子の所感も作中であまり描写されません。観ているコッチとしてはモヤモヤモヤモヤしたまんまですが、嗚呼そうか、そもそも会えなくなってしまった人との心の繋がりなんて、“ずっとモヤモヤしたまんま“なんだと気付かされます。アイツあの時どう思っていたのか、上司のあの言葉はどういう意味だったのか、何故彼はあんなことをしたのかなどなど種々の“モヤモヤ“で人間関係が成り立っていると言っても過言ではありません。
愛情の基本となる感情は「心配」だと常々考えています。久しく会っていなくても、顔を思い浮かべただけで名前を聞いただけで何か問題に直面していないか“心配“になる、フッと湧いてくるこの感情は理屈でも合理でもない、相手を自分と繋がりのある「心の存在」と考えている証拠、その繋がりのある「心」が大丈夫かどうか含めて「お元気ですか?」は愛情の表現として諸々凝縮されていると思います。人間関係は所詮モヤモヤしたもの、立ち入ったことを細々聞くつもりもないけれど、あなたが心配です、元気で居るならそれで構わない、そして私は元気だから心配無用ですヨ。「お元気ですか?私は元気です。」はモヤモヤはとりあえず置いといた愛情の繋がりの手紙、まさしく「ラブ・レター」そのものなんだと思います。
“あー私の恋は(南から北に吹く)南の風に乗って走るわー“、つまり藤井樹(男子)が落ちたクレバスで最後に想ったのは西の神戸にいる渡辺博子ではなくて北の小樽にいる藤井樹(女子)でした、というのが私の解釈、ちょっと悲しい物語。結局のところ藤井樹(男子)は最期まで藤井樹(女子)のことを想っていたのか、それとも死を覚悟して思い残したことが藤井樹(女子)との中学時代の淡い恋心だったというだけなのか、渡辺浩子は今も藤井樹(男子)に想いを寄せているのか、藤井樹(女子)に聞いた話に失望して藤井樹(男子)への想いを断ち切ることにしたのか、モヤモヤしたままわからない。ということは、「あなたはどう感じましたか?」という監督からの問いかけだったのかな〜と思いました。観る人によって見解が変わりながらも色々な感情を呼び起こすのなら誰にとっても思い当たる節があるという訳で、それが名作たる所以なのかも知れません。
最後にお山に向かって叫ぶ「お元気ですか?私は元気です。」の意味も「あなたのことをまだ想っています」なのか「ありがとうさようなら」なのか観る人の経験・立場によって変わってくることなのでしょう。もし渡辺浩子が藤井樹(男子)が最後に想ったのが藤井樹(女子)と知り愕然として、そしてご当地関西ノリの女性だったなら、「想ってたのはワタシや無かったんかーい!しばいたろかボケー!」とお山に向かって繰り返し叫んでいたことでしょう。京都出身の吉岡里穂さんがベストキャスティングかも知れません。
それにしてもミポリンのお美しいことよ!4Kデジタルリマスターで永遠に語り継がれる作品、故中山美穂さんはもう忘れ去られることはないのでしょう。
思い出の中の "時" は美しく
綺麗な映画です。
思い出の中の "時" の物語
流れの中で解明されていく"時"
その"時"が止まる瞬間がある
そして再び動き出す。
その連続を楽しんだ。
鑑賞中、大林宣彦のイメージが浮かんだ。
あくまで浮かんで消えて、また浮かんだ。
映像の、音楽の扱いに彼の姿が浮かんだ。
それ以上に気になるのは
音楽の強さに疲弊した
まさに「聴け、この音楽を」
っていう様な強さで
何度も流れれくる。
もうひとつ、ここは渋谷か
と勘違いするほどの突然の人
多くの人が感情薄く歩いてくる
これはギャグか、と思った。
このシーン全カットでも良く
その後の展開に影響は無いはず。
せっかくの繊細な内容の物語
悪夢の様に残ってしまった。
…この二つ以外は
最初から最後まで綺麗な映画。
素敵な物語だと思います。
※
記憶の共有
名作か?
亡くなった元カレに手紙を送ったら返事が返ってきた。
調べたら同姓同名の自分に似た同級生だった。
元カレの過去を聞く。
同級生は多分両思いだった。
このストーリー面白いですか?
名作と言われる所がよくわかりませんでした。
活字なら想像を掻き立てて、面白いのかもしれませんが、映画だと1人二役で描写の切り替えも分かりづらい。
何気ない日常の言葉がラブレターに変わる瞬間
「お元気ですか、私は元気です。」
かの有名な「ロミオ、あなたはなぜロミオなの」と並ぶ名台詞というのは誉めすぎだろうか。
しかし、このなんてことのない言葉を、かくも美しい言葉に変えた奇跡にただただ打ちのめされ、その美しさに酔いしれ涙を流したのは紛れもない事実だ。
クライマックスで絞り出した言葉に込められた様々な想い。
もう二度と会えない恋人に会いにきた。
突然の死別で時が止まったままの主人公の感情が徐々に溢れる。
彼が命を落とした雪山に向かって必死に叫ぶ。
木霊は当然ながら同じ言葉しか返してくれない。
それでも何度も何度も叫ぶ。
お元気ですか、私は元気です。と。
違う言葉を返してくれるのではないか。
そんな願いも込められていたのだろう。
この言葉が、亡き恋人への哀切であり、これから違う道を歩んで行く決意であり、別れの言葉になるとは思ったこともなかった。
あのシーンで何を言わせるのか、それがこの台詞なんて、考えれは考えるほど恐ろしい。ここまで紡いできた物語が台無しになるかもしれない。それでも言わせた脚本と演出、見事に演じた演者。映像美、音楽、音響。どれが欠けても成立しなかったに違いない。
亡き恋人に手紙を送る。そのロマンチシズムを甘いととるか、文学的ととるか。その後の展開の見事さと二人の中山美穂と、過去と現在、優れた構成が甘ったるいという批判を無意味なものにし、失われた時を求め、取り戻す旅に誘う。
非日常でありながら普遍的で色褪せることのないラブストーリーに昇華した奇跡の映画である。
初の岩井節
中山美穂さんを悼んで
彼女の名演、美しい小樽の映像、アカデミー賞総舐めも納得の名作
恋愛映画の傑作 だけど今の時代だったら受け入れられるのかなぁ
日本の恋愛映画としてエポックメイキングな作品という評価に違わず
非常に完成度が高い印象です
序盤から「死者に宛てた手紙の返事が届く」という程よい奇跡を軸にテンポよく進むストーリーが秀逸
何が程よいかって同姓同名のクラスメートがいるっていう「それはないっしょ」とまでは思わせない偶然
しかもその二人が甘く切ないアオハルを過ごしていた描写が物語が進むにつれて盛り上がっていきます
そして映像が美しい
冒頭の雪の中の中山美穂が白眉ですね
一時代を築いたアイドルであり女優さんなので当たり前っちゃあ当たり前なのですがお綺麗です
その後の工房でガラス炉の紅い光に照らされながらのキスシーンも見事でした
何気ない藤井樹の寝室のシーン一つとっても絵画的な美しさを備えていて
光の明暗や構図など全編にわたりケチのつけようがない映像美がこの監督の才能なのでしょう
他の作品見てませんので
多分
昨今流行りのどんでん返しなどはありませんが爽やかな余韻を残しつつどこか切なさを感じるラストは「そうそう恋愛映画ってこういうんでいいんだよ」と思わせます
因みに予備知識なしで見た妻は中山美穂の一人二役にしばらく気づかずストーリーを把握するのに困惑していたそうです
30年前の作品ゆえの分かりにくさ
当時はその辺りを含めておおらかな展開が良さだったのでしょうが
サブスク全盛の令和の現代
この雰囲気を許容できる懐の深さがあるのかなぁと思ったりもしました
純愛
作品全体の雰囲気や、雪国の風景がロマンチックでした。
序盤、中山美穂が一人二役であることが理解できず、途中から話に合流しました。
樹は中学生の頃の方が落ち着いていて、大人になってからの方が子供っぽいのが謎でした。一人二役を演じ分けるには、一人があれくらい無邪気でないといけないのかもしれない。何気におじいちゃんが、名脇役でした。
女優さんの魅力を存分に感じる映画です。
永遠の名作ですね
映像と音楽の美しさ、中山美穂の魅力
中山美穂さんの一人二役、最初は困惑しましたが、理解した後はその演じ分けに感動すらしました。
育ちも方言も性格も異なる2人を見事に演じられていたと思います。手紙を読む時の声も、渡辺博子のときはおっとりした品のある声、藤井樹のときはサバサバした女性の声に感じられました。
4Kで映える30年前の中山美穂さんをスクリーンで観れるだけでも十分鑑賞価値がある映画でしたが、それに加えて、小樽•神戸のそれぞれの自然の美しさ(と時に厳しさ)が素晴らしい音楽で引き立てられており、岩井俊二さんの世界観にどっぷり浸り幸せな時間を過ごすことができました。
劇中、藤井少年は藤井少女に対して好意的な言葉を一言も発しませんが、藤井少女を泣かせた男子に激昂したり、二人の名前を書いた図書カードを多数の本に残したり、自転車の灯りのもとで二人で過ごす時間をできるだけ長引かせようとしたりと、不器用ながらも淡い恋心を感じさせるエピソードが多数あり、まさに青春という感じでした。
本人に一言も伝えられなかったからこそ、瓜二つの渡辺博子さんに会った時は、今度こそはと初対面で告白してしまったのかもしれませんね。それでもプロポーズの言葉を博子さんに言えなかったのは、やはり違う女性である博子さんに初恋の相手を重ねてしまうことに罪悪感や迷いを感じてしまっていたからではないでしょうか。
このように映画ならではの間接的な描写は様々な解釈をする余白を残しており、それもまた岩井俊二さんの作品の魅力かもしれませんね。
一人二役
中山美穂はかわいい
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