Love Letterのレビュー・感想・評価
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理屈では割り切れないイビツな関係性と感情が描かれている
岩井俊二という監督が深夜ドラマから頭角を現したときの衝撃はよく覚えていて、それが長編映画を撮るというのだから期待値マックスで観に行ったものだが、今思えば、こちらの期待からちょっとズレたものを見せてくれるという意味で、最初からとても岩井俊二らしい映画だったのだと思う。ちょっとズレた、というのは、一般的に思い浮かべるエモさとはちょっとズレているところで成立していることで、なんなら中山美穂のお元気ですかという叫びも、なんかいい顔して見守っている豊川悦司も、ちょっと唐突で理屈では飲み込めないところがあるのに、なんでかクライマックスとして成立してしまうのが不思議でしょうがない。よくよく考えたら初恋の相手と顔が超似てる(というか一人二役なんで同じ顔なんだけど)だけの女性と出会ってすぐ告白した藤井樹(柏原崇)という男はかなりヤバいと思うのだが、そのヤバさをあまり弄ることなく、それでいて美化してるわけでもない宙ぶらりんな塩梅のまま、残された者の物語が進んでいくというのはかなり奇妙な映画ではないだろうか。そしてさらに、これだけじゃ終わりませんよともうひとつ押してくるエピローグが凄い。倫理や善悪では割り切れなさみたいなもの残しつつ、最後になんかちょっとエモさを噛みしめる藤井樹(中山美穂)の気持ちが言葉で説明できない感じも実にみごとである。
映像と音楽の美しさ、中山美穂の魅力
中山美穂さんの一人二役、最初は困惑しましたが、理解した後はその演じ分けに感動すらしました。
育ちも方言も性格も異なる2人を見事に演じられていたと思います。手紙を読む時の声も、渡辺博子のときはおっとりした品のある声、藤井樹のときはサバサバした女性の声に感じられました。
4Kで映える30年前の中山美穂さんをスクリーンで観れるだけでも十分鑑賞価値がある映画でしたが、それに加えて、小樽•神戸のそれぞれの自然の美しさ(と時に厳しさ)が素晴らしい音楽で引き立てられており、岩井俊二さんの世界観にどっぷり浸り幸せな時間を過ごすことができました。
劇中、藤井少年は藤井少女に対して好意的な言葉を一言も発しませんが、藤井少女を泣かせた男子に激昂したり、二人の名前を書いた図書カードを多数の本に残したり、自転車の灯りのもとで二人で過ごす時間をできるだけ長引かせようとしたりと、不器用ながらも淡い恋心を感じさせるエピソードが多数あり、まさに青春という感じでした。
本人に一言も伝えられなかったからこそ、瓜二つの渡辺博子さんに会った時は、今度こそはと初対面で告白してしまったのかもしれませんね。それでもプロポーズの言葉を博子さんに言えなかったのは、やはり違う女性である博子さんに初恋の相手を重ねてしまうことに罪悪感や迷いを感じてしまっていたからではないでしょうか。
このように映画ならではの間接的な描写は様々な解釈をする余白を残しており、それもまた岩井俊二さんの作品の魅力かもしれませんね。
一人二役
中山美穂はかわいい
中山美穂さん、素晴らしい映画をありがとう!
中山美穂さん主演の名作が4Kリマスター版で劇場公開、ということで見てきました。
映画は基本、劇場で見る主義なので、今まで一度も中山美穂さんの映画を見たことのない私に美穂さんの映画を見る機会が訪れるとは思ってませんでした。
テレビ、劇場を通じて初見です。
なので、中山美穂さんが渡辺博子、藤井樹の二役を演じていることを知らず、えっ?あれっ?と一瞬戸惑いました。
でも、鑑賞後に考えると二役で正解だと思いました。
なぜなら、亡くなった藤井樹はやはり同姓同名の藤井樹のことが大好きだったことがわかったからです。
渡辺博子とのなれそめのエピソードが描かれてないのではっきりとは解りませんが彼女を好きになった理由は藤井樹の面影を見たからのように思いました。
好きな人がいても気持ちを伝えられない学生の頃の思い出は誰にでもあると思います。
図書カードに書き込まれた似顔絵が彼にできる精一杯の愛情表現だったのでしょう。
それにずっと気づかずにいた藤井樹が渡辺博子からの手紙によって学生時代を思い出し、母校を訪問したことをきっかけに偶然にもその図書カードを目にすることになる。
しかもその本のタイトルがプルーストの「失われた時を求めて」ってよく出来てるなあと感心しました。
そして渡辺博子もようやく踏ん切りをつけることができ豊川悦司演じる秋葉とともに人生を歩みだすラストも良い。
藤井樹は過去の自分に対する藤井樹の気持ちを知ることができて温かい気持ちになれたし、二役だからこそ本当に良い結末だったと思える部分がありました。
中山美穂さんの透明感のある可愛らしさ、チャーミングさ、本当に彼女の魅力満載の良い映画でした。
この映画を見れたことに感謝します。
中山美穂さんのご冥福をお祈りいたします。
中山美穂さんを偲んで
まず、この映画は内容的に素晴らしかった。
ストーリー展開や中山美穂さんの演技、酒井美紀さん、柏原崇さんを始めとした子供達の演技、小樽という絶妙なロケーション、そしてグッとくるラスト。
ちなみに豆知識であるが、小樽という街は、運河、ガラス工芸品、坂道が多い街で、港町として北海道の中でも歴史のある街である。藤井樹♀の家は旧坂別邸(きゅうばんべってい)という小樽の指定歴史的建造物に指定されていたが、2007年に失火で消失している。
樹のおじいちゃんのセリフには、語尾が「びや」「べや」となる北海道弁も多用され、北海道で生まれ育った自分にとっては懐かしい気持ちになった。飛行機もいまはJALに吸収合併されたJAS(日本エアシステム)でしたね。
映画の中では、とにかく中山美穂さんから目が離せませんでした。ファンというわけでは無いのですが、同じ時代を一緒に過ごして来た中山美穂さんの美しい姿を目に焼き付けておきたいのです。
正確なセリフとは違っているかも知れませんが、中山美穂さんが山(で眠る藤井樹♂さんの魂)に向かって大声で「元気ですか!」と叫ぶ有名なシーンがありますが、その一連のシーンの中に「たくさんの思い出をありがとう」というフレーズがありました。それはそのまま中山美穂さんに伝えたい一言でもあります。
中山美穂さんがもし今も元気であったなら見ることは無かった映画かも知れないですが、今日この映画を観れてよかった。
中山美穂さん
お元気ですか!!
たくさんの思い出をありがとう!!
あなたは本当に本当に美しかったし、優しかった。
あなたと同じ時代を生きられて本当に嬉しかったです!!
これまで本当に本当にありがとう!!
さようなら、僕らの中山美穂さん。
Love Letter
『スワロウテイル』以降、岩井作品は観ないようにしていて、一昨年、広瀬すずさんに惹かれて『キリエの歌』を観ました。
それで、勝手な岩井監督嫌いが解消されての、本作。
感想から言うと、良かったです。
目の開け方だけで、二役を完全に別人として演じてみせた中山美穂さん、素晴らしかったです。
完全に彼女の作品になってました。
『キリエ』もアイナ ジ エンドの作品と印象に残りましたが、これは手法なのかな?
とにもかくにも、中山美穂さんの演技。
どんな名優さんになっていかれたのたろう。
亡くなられたのが、残念です。合掌
図書カードの裏の方。
4月21日(月)
TOHOシネマズ日比谷で公開30周年記念「Love Letter」4Kリマスター版を(初見)。
岩井俊二監督の長編デビュー作。
監督デビュー作(もしくは最初に撮った青春もの)というのは、恩地日出夫の「あこがれ」(1966)、出目昌伸の「年ごろ」(1968)、森谷司郎の「育ちざかり」(1967)など(例えが古くてすいません。70ジジイなもんで)みずみずしい感性で良作が多い(個人的感想です)。
岩井俊二は、前述の堀川弘通や黒澤明の助監督から監督になった人達とは時代が違うから大学時代から自主製作映画撮っていた訳だが、それでも中山美穂を主演に迎えて自主製作やTVドラマとは違って、初の劇場用の長編映画を撮るのは嬉しかったに違いない。冒頭のカメラの長回しなどその気持ちが溢れている気がする。
雪山で死んだ婚約者の藤井樹を忘れられない渡辺博子(中山美穂)は三回忌の日に樹の母から小樽時代の中学卒業アルバムを見せられる。名簿にあった藤井樹の小樽の住所を控えて、その住所に手紙を出す。「お元気ですか?私は元気です。」
なんと返って来るはずのない返事が藤井樹から届く。
返事をくれたのは同姓同名の中学の同級生藤井樹♀(中山美穂・二役)からだった。中学時代の藤井樹♂の事を知りたい博子は樹♀と文通を始める。もっと樹♂の事を教えて。
樹♀は、昔の事を思い出して博子に伝える。
中学時代の藤井樹♀(酒井美紀)は、藤井樹♂(柏原崇)と同姓同名で嫌な思いをした事。テストの答案用紙を間違えられた事(樹♂の答案用紙の裏には宮崎美子のイラストが書かれている)。
同じ図書委員だったのに非協力的だった事。樹♂は本ばかり読んでいた事。
誰も読まないような本を借りて図書カードに藤井樹の名前を残すのが好きだった事。
脚を骨折したのに競技会で走ろうとした事。
思い出せば思い出すほど、自分では意識していなかった樹♂の思いに気付く。そして樹♀自身の思いにも。
最後に会った日、引越すと言わずに借りた本を返しておいてと頼みに家まで来た樹♂(借りた本が「失われし時を求めて」)。
翌日、登校して樹♂が引越した事を知る。
何故か怒りがこみ上げてくる樹♀。
博子は、今の彼氏の秋葉(豊川悦司)と小樽に来て樹の家を訪ねるが会えない。しかし、街角で博子は樹♀とすれ違う。自分とそっくりな樹♀に「藤井さん?」博子は声をかけるが、樹は気づかない。人混みに紛れてしまう。
樹♀の家に中学の後輩達が訪ねて来る。以前中学校に行った時、本を整理する時に藤井樹図書カードを見つけるのがブームだと聞いた。あまりに数が多いから。
彼女達が持って来た本は「失われた時を求めて」だった。図書カードには藤井樹の名前が。これは私が代わりに返した本だ。
「裏です」後輩に言われて図書カードの裏側を見る樹。
そこには樹の似顔絵のイラストが書かれていた。これは渡辺博子には言えないわ。
これは30年前だからこそ成立する話である。手紙による文通も今ならメールやLINEで済んでしまうし、ポラロイドを送って写真を撮ってもらう事も無いだろう。
中山美穂が性格の違う二人を演じるのは大変だったと思う。監督も藤井樹のパートを殆ど撮り終えてから渡辺博子のパートを撮ったそうだ。
中山美穂が輝いている。冒頭に書いた青春ものも主人公は輝いていた。そしてその輝きが不滅の魅力を醸し出しているのである。合掌🙏。
おまけ
4月22日に行なわれた中山美穂のお別れの会で岩井俊二監督がお別れの言葉を述べた。
その中で中山美穂について語ったのは、
最初に出会ったのはフジテレビの歌番組の収録中に映画の出演依頼に行った時で「映画はあんまり好きじゃない、やりたくない、苦手なんです」と言われた事。
藤井樹の役をほとんど撮り終えてから渡辺博子のパートに入る時にどう演じたらいいかわからないと心配そうに相談に来た事。
試写室で出来上がった映像を見た時に泣き崩れ、床に伏せたまま立ち上がれなかった事。
「Love Letter」の後、お互いに次の作品をまた一緒に作る気満々だったのに、その脚本が準備出来なかったのは自分の不徳の致すところで、本当に申し訳ないと思っているとの事だった。
もし、脚本が出来ていたら、もう一つ別の中山美穂の代表作があったのかも知れない。
おまけ2
中学時代の樹♂・柏原崇は、今は内田有紀のマネージャー兼パートナーだそうだ。
題名が?若い時に観たかった(笑)
樹の美穂さん
皆さん、素敵な役を演じきって最高でした
若い二人とらんらんも
ラスト、やはり樹が好きだったのね、樹が
裏の絵が分かったときに
ちょい泣きしてしまいました
映画館で観れて良かったな
キョンキョンも忍さんも喜んでると
合掌
1995年3月
ようやく映画館で観ることが出来ました
公開当時は興味なくて🙇♂️
「35年目」ではなくて30年前の「ラブレター」ですね
最近流行り?の「奇跡の恋愛映画」の始まりはこの作品かもと思っています
ただこの作品を超えていくのはタイムスリップしようが何をしようが難しいのでは
そんな傑作だと思います
今回久しぶりに鑑賞して感じたのはこんなに笑える作品だったのかということ
そして涙はなかったです(最後の追悼文を除く)
作品は変わらないので自分の感じ方が変わった?のかと思います
今までは当然結婚したんだろうと思っていたあの2人は結婚出来たのか?余計なお世話ながら気になりました(笑)
(1995年3月)
調べてみるとこの作品の劇場公開は1995年3月25日
同年同月の11日には「ガメラ大怪獣空中決戦」が公開されています
中山姉妹がとにかく初々しくて(渡辺博子&藤井樹の中山美穂さんと長峰真弓の中山忍さん)
(オマケの個人的妄想🙇♂️:吉田拓郎さんと宮崎美子さん)
・英語の答案用紙の裏のイラストは皆さんの言うように宮崎美子さん?
「いまのキミはピカピカに光って」というメッセージでしょうか
・偶然にも「いまのキミはピカピカに光って」の作曲者鈴木慶一さんがイラストを描いた樹(男)の父役でご出演
・私はこの映画を最初に観た時に吉田拓郎さんの曲「元気です」を連想しました
・「元気です」を主題歌としたドラマ「元気です!」の主役(ヒロイン)が宮崎美子さん
酒井美紀
中山美穂と酒井美紀、顔が似ているとは思わないけれど、それが気にならないほど酒井美紀演じる女子中学生藤井樹が可愛らしかった。特に「ご愁傷様です」の後の笑顔。この映画、イラッとする場面が結構多かった。アキバの男の嫉妬と無神経なところと年長者への失礼な態度(年代や性別、出身地でアキバへの印象は振れ幅大なはず)、不動産屋の親戚の気持ち悪い笑い、祖父と母の救急車を巡るやり取り。だけど、柏原崇と酒井美紀の場面は全て良かった。この二人のキャスティングは絶妙だったと思う。好きだった子にソックリの女性に遭遇してキャラ返上のアプローチとか、藤井樹は藤井樹のことが大好きだったのだなあ。
中山美穂さんの美しさが際立っていた作品。 本年度ベスト!
4Kリマスター版で鑑賞。
長年観たいと思っていた作品をやっと鑑賞でき、感謝の気持ちでいっぱい(笑)
優しくも切ない、そして何よりも美しい物語って感じだった。
中山美穂さん演じる渡辺博子。
亡くなった婚約者・藤井樹(イツキ)の三回忌の場面から物語がスタート。
藤井のことが忘れられない博子。
彼の生前の住所に送った手紙がきっかけとなり、思いがけない返事が届く展開に引き込まれる。
物語前半は、他界した藤井との手紙のやり取りの理由が分からず(笑)
見事に仕掛けられた真相に「なるほど」と納得(笑)。
豊川悦司さん演じるガラス職人の秋葉は現在の博子の恋人。
それでも、博子が亡き藤井を忘れられない様子は、観ていて胸が締め付けられる。
そして、豊川悦司さんの若々しさにも驚く(笑)
鑑賞後に酒井美紀さんも出演されていたことを知り、改めてその若さに時の流れを感じる。
アイドル時代の中山美穂さんにはあまり関心が無かったけど本作での彼女は本当に美しく、素晴らしい演技だった。
30年前の作品でありながら、全く古さを感じさせない魅力を持った作品って感じ。
予告編で印象的だった中山美穂さんの「お元気ですか~」という叫び。
意味不明だったけど、物語の終盤で博子がある決意を込めて叫んだのだと理解し涙が流れる。
本作のタイトルである「ラブレター」は、博子の文通のことだと思ってたけど全く違う意味合いだった(笑)
個人的に、中学生の図書委員の女の子たちが博子に届けた本の最後のページに挟まれていたものこそが、本当の「ラブレター」だったのだと感じた。
改めて、中山美穂さんのご活躍を心よりお祈り申し上げます。( ´∀`)
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