Love Letterのレビュー・感想・評価
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理屈では割り切れないイビツな関係性と感情が描かれている
岩井俊二という監督が深夜ドラマから頭角を現したときの衝撃はよく覚えていて、それが長編映画を撮るというのだから期待値マックスで観に行ったものだが、今思えば、こちらの期待からちょっとズレたものを見せてくれるという意味で、最初からとても岩井俊二らしい映画だったのだと思う。ちょっとズレた、というのは、一般的に思い浮かべるエモさとはちょっとズレているところで成立していることで、なんなら中山美穂のお元気ですかという叫びも、なんかいい顔して見守っている豊川悦司も、ちょっと唐突で理屈では飲み込めないところがあるのに、なんでかクライマックスとして成立してしまうのが不思議でしょうがない。よくよく考えたら初恋の相手と顔が超似てる(というか一人二役なんで同じ顔なんだけど)だけの女性と出会ってすぐ告白した藤井樹(柏原崇)という男はかなりヤバいと思うのだが、そのヤバさをあまり弄ることなく、それでいて美化してるわけでもない宙ぶらりんな塩梅のまま、残された者の物語が進んでいくというのはかなり奇妙な映画ではないだろうか。そしてさらに、これだけじゃ終わりませんよともうひとつ押してくるエピローグが凄い。倫理や善悪では割り切れなさみたいなもの残しつつ、最後になんかちょっとエモさを噛みしめる藤井樹(中山美穂)の気持ちが言葉で説明できない感じも実にみごとである。
記憶の共有
名作か?
亡くなった元カレに手紙を送ったら返事が返ってきた。
調べたら同姓同名の自分に似た同級生だった。
元カレの過去を聞く。
同級生は多分両思いだった。
このストーリー面白いですか?
名作と言われる所がよくわかりませんでした。
活字なら想像を掻き立てて、面白いのかもしれませんが、映画だと1人二役で描写の切り替えも分かりづらい。
何気ない日常の言葉がラブレターに変わる瞬間
「お元気ですか、私は元気です。」
かの有名な「ロミオ、あなたはなぜロミオなの」と並ぶ名台詞というのは誉めすぎだろうか。
しかし、このなんてことのない言葉を、かくも美しい言葉に変えた奇跡にただただ打ちのめされ、その美しさに酔いしれ涙を流したのは紛れもない事実だ。
クライマックスで絞り出した言葉に込められた様々な想い。
もう二度と会えない恋人に会いにきた。
突然の死別で時が止まったままの主人公の感情が徐々に溢れる。
彼が命を落とした雪山に向かって必死に叫ぶ。
木霊は当然ながら同じ言葉しか返してくれない。
それでも何度も何度も叫ぶ。
お元気ですか、私は元気です。と。
違う言葉を返してくれるのではないか。
そんな願いも込められていたのだろう。
この言葉が、亡き恋人への哀切であり、これから違う道を歩んで行く決意であり、別れの言葉になるとは思ったこともなかった。
あのシーンで何を言わせるのか、それがこの台詞なんて、考えれは考えるほど恐ろしい。ここまで紡いできた物語が台無しになるかもしれない。それでも言わせた脚本と演出、見事に演じた演者。映像美、音楽、音響。どれが欠けても成立しなかったに違いない。
亡き恋人に手紙を送る。そのロマンチシズムを甘いととるか、文学的ととるか。その後の展開の見事さと二人の中山美穂と、過去と現在、優れた構成が甘ったるいという批判を無意味なものにし、失われた時を求め、取り戻す旅に誘う。
非日常でありながら普遍的で色褪せることのないラブストーリーに昇華した奇跡の映画である。
初の岩井節
中山美穂さんを悼んで
彼女の名演、美しい小樽の映像、アカデミー賞総舐めも納得の名作
恋愛映画の傑作 だけど今の時代だったら受け入れられるのかなぁ
日本の恋愛映画としてエポックメイキングな作品という評価に違わず
非常に完成度が高い印象です
序盤から「死者に宛てた手紙の返事が届く」という程よい奇跡を軸にテンポよく進むストーリーが秀逸
何が程よいかって同姓同名のクラスメートがいるっていう「それはないっしょ」とまでは思わせない偶然
しかもその二人が甘く切ないアオハルを過ごしていた描写が物語が進むにつれて盛り上がっていきます
そして映像が美しい
冒頭の雪の中の中山美穂が白眉ですね
一時代を築いたアイドルであり女優さんなので当たり前っちゃあ当たり前なのですがお綺麗です
その後の工房でガラス炉の紅い光に照らされながらのキスシーンも見事でした
何気ない藤井樹の寝室のシーン一つとっても絵画的な美しさを備えていて
光の明暗や構図など全編にわたりケチのつけようがない映像美がこの監督の才能なのでしょう
他の作品見てませんので
多分
昨今流行りのどんでん返しなどはありませんが爽やかな余韻を残しつつどこか切なさを感じるラストは「そうそう恋愛映画ってこういうんでいいんだよ」と思わせます
因みに予備知識なしで見た妻は中山美穂の一人二役にしばらく気づかずストーリーを把握するのに困惑していたそうです
30年前の作品ゆえの分かりにくさ
当時はその辺りを含めておおらかな展開が良さだったのでしょうが
サブスク全盛の令和の現代
この雰囲気を許容できる懐の深さがあるのかなぁと思ったりもしました
純愛
作品全体の雰囲気や、雪国の風景がロマンチックでした。
序盤、中山美穂が一人二役であることが理解できず、途中から話に合流しました。
樹は中学生の頃の方が落ち着いていて、大人になってからの方が子供っぽいのが謎でした。一人二役を演じ分けるには、一人があれくらい無邪気でないといけないのかもしれない。何気におじいちゃんが、名脇役でした。
女優さんの魅力を存分に感じる映画です。
永遠の名作ですね
映像と音楽の美しさ、中山美穂の魅力
中山美穂さんの一人二役、最初は困惑しましたが、理解した後はその演じ分けに感動すらしました。
育ちも方言も性格も異なる2人を見事に演じられていたと思います。手紙を読む時の声も、渡辺博子のときはおっとりした品のある声、藤井樹のときはサバサバした女性の声に感じられました。
4Kで映える30年前の中山美穂さんをスクリーンで観れるだけでも十分鑑賞価値がある映画でしたが、それに加えて、小樽•神戸のそれぞれの自然の美しさ(と時に厳しさ)が素晴らしい音楽で引き立てられており、岩井俊二さんの世界観にどっぷり浸り幸せな時間を過ごすことができました。
劇中、藤井少年は藤井少女に対して好意的な言葉を一言も発しませんが、藤井少女を泣かせた男子に激昂したり、二人の名前を書いた図書カードを多数の本に残したり、自転車の灯りのもとで二人で過ごす時間をできるだけ長引かせようとしたりと、不器用ながらも淡い恋心を感じさせるエピソードが多数あり、まさに青春という感じでした。
本人に一言も伝えられなかったからこそ、瓜二つの渡辺博子さんに会った時は、今度こそはと初対面で告白してしまったのかもしれませんね。それでもプロポーズの言葉を博子さんに言えなかったのは、やはり違う女性である博子さんに初恋の相手を重ねてしまうことに罪悪感や迷いを感じてしまっていたからではないでしょうか。
このように映画ならではの間接的な描写は様々な解釈をする余白を残しており、それもまた岩井俊二さんの作品の魅力かもしれませんね。
一人二役
中山美穂はかわいい
中山美穂さん、素晴らしい映画をありがとう!
中山美穂さん主演の名作が4Kリマスター版で劇場公開、ということで見てきました。
映画は基本、劇場で見る主義なので、今まで一度も中山美穂さんの映画を見たことのない私に美穂さんの映画を見る機会が訪れるとは思ってませんでした。
テレビ、劇場を通じて初見です。
なので、中山美穂さんが渡辺博子、藤井樹の二役を演じていることを知らず、えっ?あれっ?と一瞬戸惑いました。
でも、鑑賞後に考えると二役で正解だと思いました。
なぜなら、亡くなった藤井樹はやはり同姓同名の藤井樹のことが大好きだったことがわかったからです。
渡辺博子とのなれそめのエピソードが描かれてないのではっきりとは解りませんが彼女を好きになった理由は藤井樹の面影を見たからのように思いました。
好きな人がいても気持ちを伝えられない学生の頃の思い出は誰にでもあると思います。
図書カードに書き込まれた似顔絵が彼にできる精一杯の愛情表現だったのでしょう。
それにずっと気づかずにいた藤井樹が渡辺博子からの手紙によって学生時代を思い出し、母校を訪問したことをきっかけに偶然にもその図書カードを目にすることになる。
しかもその本のタイトルがプルーストの「失われた時を求めて」ってよく出来てるなあと感心しました。
そして渡辺博子もようやく踏ん切りをつけることができ豊川悦司演じる秋葉とともに人生を歩みだすラストも良い。
藤井樹は過去の自分に対する藤井樹の気持ちを知ることができて温かい気持ちになれたし、二役だからこそ本当に良い結末だったと思える部分がありました。
中山美穂さんの透明感のある可愛らしさ、チャーミングさ、本当に彼女の魅力満載の良い映画でした。
この映画を見れたことに感謝します。
中山美穂さんのご冥福をお祈りいたします。
中山美穂さんを偲んで
まず、この映画は内容的に素晴らしかった。
ストーリー展開や中山美穂さんの演技、酒井美紀さん、柏原崇さんを始めとした子供達の演技、小樽という絶妙なロケーション、そしてグッとくるラスト。
ちなみに豆知識であるが、小樽という街は、運河、ガラス工芸品、坂道が多い街で、港町として北海道の中でも歴史のある街である。藤井樹♀の家は旧坂別邸(きゅうばんべってい)という小樽の指定歴史的建造物に指定されていたが、2007年に失火で消失している。
樹のおじいちゃんのセリフには、語尾が「びや」「べや」となる北海道弁も多用され、北海道で生まれ育った自分にとっては懐かしい気持ちになった。飛行機もいまはJALに吸収合併されたJAS(日本エアシステム)でしたね。
映画の中では、とにかく中山美穂さんから目が離せませんでした。ファンというわけでは無いのですが、同じ時代を一緒に過ごして来た中山美穂さんの美しい姿を目に焼き付けておきたいのです。
正確なセリフとは違っているかも知れませんが、中山美穂さんが山(で眠る藤井樹♂さんの魂)に向かって大声で「元気ですか!」と叫ぶ有名なシーンがありますが、その一連のシーンの中に「たくさんの思い出をありがとう」というフレーズがありました。それはそのまま中山美穂さんに伝えたい一言でもあります。
中山美穂さんがもし今も元気であったなら見ることは無かった映画かも知れないですが、今日この映画を観れてよかった。
中山美穂さん
お元気ですか!!
たくさんの思い出をありがとう!!
あなたは本当に本当に美しかったし、優しかった。
あなたと同じ時代を生きられて本当に嬉しかったです!!
これまで本当に本当にありがとう!!
さようなら、僕らの中山美穂さん。
Love Letter
『スワロウテイル』以降、岩井作品は観ないようにしていて、一昨年、広瀬すずさんに惹かれて『キリエの歌』を観ました。
それで、勝手な岩井監督嫌いが解消されての、本作。
感想から言うと、良かったです。
目の開け方だけで、二役を完全に別人として演じてみせた中山美穂さん、素晴らしかったです。
完全に彼女の作品になってました。
『キリエ』もアイナ ジ エンドの作品と印象に残りましたが、これは手法なのかな?
とにもかくにも、中山美穂さんの演技。
どんな名優さんになっていかれたのたろう。
亡くなられたのが、残念です。合掌
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