赤ひげのレビュー・感想・評価
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人生の出発点と終点
総合85点 ( ストーリー:90点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
医者に行きたくても行く金もない貧困層に尽くす医者の話かと思いきや、必ずともそうとも言えない。むしろ治療にかける医術の話、特に医療の技術的な話は控えめで、ただそこに生きる人々の姿を養生所を通して見せる形になっている。
それでその人々だが、それぞれの抱える重い事情と背景がしっかりと描かれていて引き付けられた。もうどうしようもない半生を背負ってやっとここに流れ着いた最後の場所という雰囲気が出ていた。ここは単なる養生所ではなく、働いている人も治療を受ける人も、ここで人生を終えたり人生を始めたり人生を賭けたりする場所だった。インドでマザーテレサが誰も気にかける者も無いままに路上で死ぬ人々の手を握ることで孤独から解放するというものに近いような、人々の救済を感じた。
あえて挙げる欠点としては、良い人が良くて悪い人が悪いと簡単に分けられているところ。これだけたくさんの人が集まる場所だと、ただ食いっぱぐれた人やいい加減な人や小ズルい人がもっと色々といてそのような人の起こす問題に忙殺されそうなもの。しかしいわゆる味方側の人々はいい人が多くて内部の管理がすごく簡単になっていたのはやや都合が良い。
それから医療に関しては、医療が大変なのだという描写からの視点であって、医療のためにどのような努力、特に技術的な努力をしているのかという視点が少なかったかと思う。医者として具体的に何をやったかということにおいて、『仁』のように梅毒患者に対して薬を作ったというようものが含まれていても良かった。
あまりにも現代的なテーマ
大きな地震(おそらく安政の大地震であろう)の後の格差社会を描く。時は幕末なのだが、まるで3.11後をテーマとしたかのような現代性あふれる問題提起である。
災害により最も被害を被るのは貧しい者たちであり、貧困は身体ばかりか心の健康も蝕む。これは安政でもなければ、この作品が撮られた昭和でもない。まさしくこの平成の日本を描いている。
そう思えるほどのこの映画の今日性に戦慄すら感じ、心身の健康は金次第であるという身も蓋もない普遍的な視点を貫いたことに快哉を送りたい。
そうした物語の内容はともかくも、豪華な出演者の顔ぶれもまた観ていて楽しい。山崎努の熱演は瞼の裏にしばらく残り続けるし、桑野みゆきはとても可憐で感情移入するなというほうが無理である。
また、おとよと長坊の子役も上手い。不憫で、愛らしい彼らが観客の心をかっさらってしまう。
惜しむらくは、杉村春子にコケティッシュな芝居を存分にさせていないところだろうか。せっかく大根で杉村を殴らせるのだから、彼女にはもう少しスクリーンの中で動いて欲しかった。この女優は台詞ではなく体の動きで芝居をするのだから、大根を飛び散らかした頭をどうにかして欲しかった。あっさりと次のカットへ変わってしまったが残念。
息子と観ましたが
人間ドラマの一つの到達点
『赤ひげ』
あまり好きじゃない
原作に負けずと劣らず
名作だ。
誰もがこの社会は努力すればよくなると、信じていけそうなくらいの夢を与える。
山本周五郎に負けずに、三船さんなりの赤ひげを作れたのも勝因の一つ。
なんとなく教育されてる感じが嫌な人は、避けた方がいいかなぁ…
赤ひげ
世界映画史のベスト5に入る名作。映像、演出、音楽、演技、効果音、照明など、諸々の要素が全体の統一美を持ち、喜怒哀楽の情を越えた悟りに近い思想を円心構造で何重にも描いている。良い映画は優れた脇役が映える。杉村春子、香川京子、仁木てるみ、山崎勉などが秀逸だが、藤原鎌足が誰を演じているか観客には分からない。「天国と地獄」に続いて、その迫真の演技に魅せられる。最後に登場する笠智衆他歴史的な名優の存在感も卓越している。三船敏郎の代表作であり、加山雄三が若くしてその人物の大きさを地で表現した見事な映画であり、映画を超えた映画とも云える。これほどの完成度を持つ映画は二度と出ない。「七人の侍」「生きものの記録」「隠し砦の三悪人」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」と続いた黒澤組の最高峰、集大成と云って間違いない。この書評を大袈裟と思われる方は、一見なされば納得なされるかと思います。(誤記訂正しました)
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