劇場公開日 1965年4月3日

「あまりにも現代的なテーマ」赤ひげ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

2.0あまりにも現代的なテーマ

2017年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

幸せ

 大きな地震(おそらく安政の大地震であろう)の後の格差社会を描く。時は幕末なのだが、まるで3.11後をテーマとしたかのような現代性あふれる問題提起である。
 災害により最も被害を被るのは貧しい者たちであり、貧困は身体ばかりか心の健康も蝕む。これは安政でもなければ、この作品が撮られた昭和でもない。まさしくこの平成の日本を描いている。
 そう思えるほどのこの映画の今日性に戦慄すら感じ、心身の健康は金次第であるという身も蓋もない普遍的な視点を貫いたことに快哉を送りたい。
 そうした物語の内容はともかくも、豪華な出演者の顔ぶれもまた観ていて楽しい。山崎努の熱演は瞼の裏にしばらく残り続けるし、桑野みゆきはとても可憐で感情移入するなというほうが無理である。
 また、おとよと長坊の子役も上手い。不憫で、愛らしい彼らが観客の心をかっさらってしまう。
 惜しむらくは、杉村春子にコケティッシュな芝居を存分にさせていないところだろうか。せっかく大根で杉村を殴らせるのだから、彼女にはもう少しスクリーンの中で動いて欲しかった。この女優は台詞ではなく体の動きで芝居をするのだから、大根を飛び散らかした頭をどうにかして欲しかった。あっさりと次のカットへ変わってしまったが残念。

佐分 利信