「願い=ささやき」ミツバチのささやき humさんの映画レビュー(感想・評価)
願い=ささやき
戦争がおとす影。
その時間を生きていくということ。
人の思いをこれほどにも静かに深く表した背景。
涙が出ないほどの衝撃が胸を刻む。
………
〝皆一緒に幸福だったあの時代は戻りません
…人生を本当に感じる力も消えた様に思います 〟
やさしいフルートの音色と真逆の
苦しみの底で枯れ果てそうな気持ちを
したためた手紙を運ぶ汽車の窓
うつろな乗客たちに
彼女は何をみて
うつろな彼女に
乗客たちは何を感じたのか
戦火が裂いた日常が
あとからあとから殺していく人の心とからだを
お互いに抱きしめたのだろうか
六角の枠の黄色い窓ガラスが
どんなにやさしく甘い蜂蜜色の光を
その部屋に送りこもうと
大人同士には
笑顔も会話もなく
無邪気なこどもが微笑むと
未来を願うことをふと思い出すのだ
一瞬で危険に触れる隣り合わせの世界で
目を輝かせ今を信じる澄んだ目の横だけで
〝唯一の休憩たる死もこの巣から遠く離れねば得られない…その目には悲しみと恐怖があった〟
かわいいミツバチたちの安らかな寝顔をみつめる父は
今夜も眠りにつけずに
書斎で書き溜める本音をあわてて消す
おそらく物凄く大切な手紙を焼く母の姿も
何かを断ち切るように
同じころ
汽車を飛び降り廃墟にしのび込んだ男性が
手紙の相手であり
アナの実父だったのではないだろうか
母にこっそり会いにきて
アナを驚かしたイサベルのように
出くわしてしまったイサベルの口を塞いだ
犬が吠え
アナが見たのは
精霊が去る姿
イサベル
あの人は行ったから
もう大丈夫
起きて
廃虚の納屋の小さな秘密が
あの銃音で終わった
アナが差し入れる林檎やパン
結んでやる靴紐
懐中時計の音と手品
みんなが忘れていた
優しい平和なやりとりが
そこにあったのに
アナはまた
答えのなかった問いを続けるのだ
〝なぜ、殺したの?
なぜ怪物も殺されたの?〟
得体の知れぬ恐怖体験を
現実に重ね合わせて顔を歪める大人と
好奇心と未知の疑問に目をみはるこどもが
違う世界を観ていたあの巡回映画の日のように
アナが出会った精霊は
大きな足跡をつけ
けがをしていた
お腹をすかせて
隠れていた
林檎を受け取り
かじってくれた
懐中時計の音をきいたとき
不安になったけど
手品をして
すぐに
笑わせてくれた
なのに
パパはなにをしたの?
私の優しいともだちに
だからアナは
願いをこめてささやく
〝わたしはアナです〟
精霊やイサベルに
またすぐに会えますようにと
こんばんは♪コメントありがとうございます😊
やはり‥‥、当初から10回は観てスペイン🇪🇸🥘内戦の勉強しないと私はなかなか。『エル・スール』しか観てないですが、レビュアーさんお薦めは、
『カラスの飼育』という作品です。また詳しく知らないですが、この監督の新作が公開?されているかも?です。内戦って同じ国民同士でですよね。怖いですね🦁
すみません、あっちもこっちも
戦っていて、日本🇯🇵の平和、
あたりまえと思ってはいけないですね。ロシア、プーチンのすること、映画よりも怖すぎますね。
イスラエルも、わけわからず。
日本は地震で建物壊され、あちらはすすんで破壊する、あの瓦礫の町というか、狂ってますね。スペイン内戦も酷かったらしいですが。エルスール、評価低いですが、ちょっと怖さも。よければご覧になってみてください🦁
おはようございます🌞コメント
ありがとうございます。
本作難し過ぎて、口にマスク状態
2.3 回観ていますが、イサベルが生きているのかどうなのか、まだ検証しきれず。今上映されているのですが、行きたくない映画館⁉️えっ⁉️と思いました、私は。でも8割入っているという情報が。パイプ椅子にシーツのようなスクリーンですよ、そこ。片道3時間かけて行こうとは思えないのです。TV放映待ちます。🥲
humさんへ、返信遅れてすみません。
他のヨーロッパ映画と比べて殆ど観ていないので断言は避けますが、このエリセ作品がスペイン映画の最高傑作のひとつと思います。「汚れなき悪戯」「愛のアンジェラス」を10代の頃に観て、キリスト教の信心深さに驚くと共に子供への大人(作者)の視点の優しさに感銘したのが原体験になります。デル・トモ監督の「パンズ・ラビリンス」もスペイン映画らしい力作でした。他にペドロ・アルモドバルの名作もあり、最近では「インポッシブル」も良かったですね。
humさんの詩的なレビューにはいつも感心してしまいますが、この名作を讃える繊細な感性には映画に対する愛情が溢れていて感銘いたしました。エリセ監督に影響を受けた映画人に岩井俊二監督がいます。あの「Love Letter」の雪の丘の名シーンは、この映画へのオマージュなのかも知れませんね。詩的な映画は、時に難解で小生も理解しきれないものがあります。それでも、この作品にはスペイン映画の神聖さを強く感じました。
humさんへ
共感とコメント、
ありがとうございました。
humさんの詩のようなレビューに、
新たな気付きと
この作品への想いが甦ります。
再鑑賞が楽しみです。
今後とも“映画.com”でのお付き合いの程、
宜しくお願いいたします。
こんにちは。
humさんの感性と映画を「観る」力って。。凄いですよね。いつもですが、本作レビューも素晴らしかったです。
私もアナのパパかな?って思いましたけど、、
隠された背景やメッセージ、全て受け取れてはおらず、
エリセすんません( ; ; )って感じです。
私にはまだ無理みたい(°▽°)
子のクラスが学級閉鎖になってしまい、リアルタイムで体験出来たエリセ新作も、ボーちゃん、梟も観られなくなりそうで泣いております。カァ〜🐦⬛