マリー・アントワネット : 映画評論・批評
2007年1月9日更新
2007年1月20日より日劇1ほか全国東宝系にてロードショー
ガーリー・ムービーの女王による究極のガーリー・ムービー
これは、ガーリー・ムービーの女王によるガールのための究極のガーリー・ムービー。なにしろ、ソフィア・コッポラは、コスチュームプレイは重厚という常識を覆して、フランス最後の王妃の日々をスウィートなピンクで染めあげてみせたのだ。
だが、18世紀を代表するファッションセレブながら、まだティーンエイジャーだったマリーの気分を現代に置き換えれば、こんなポップな色彩こそがふさわしいのかも。それに、自身もファッション・リーダー的存在であるソフィア。その美意識に応えたパリの老舗ラデュレのマカロンにインスパイアされたという甘い色彩のドレスやシューズも、そのラデュレが手がけたスウィーツの数々も、女のコ心(元・女のコも含む)をくすぐりまくり。
しかも、パーティ三昧の生活から一転、出産するとプチ・トリアノンでロハスな生活を始めるマリーに、現代のセレブたちの姿を重ねさせる批評精神も。無邪気な少女が王妃の自覚に目覚めるまでの心理的陰影は浅いし、ドラマツルギーに欠けるというソフィアらしい難もあるけれど、そのへんは一般常識としての歴史的な知識が補ってくれるわけで。ガーリーなものが苦手な向きも、この洗練されたピンキッシュ・ワールドには、きっとハマっちゃっいますから。
(杉谷伸子)