■若き時に恋人フィンを、ネイティブアメリカンの襲撃により亡くした男ダンスン(ジョン・ウェイン)が牧場を開拓するも、南北戦争の終結後、牛の買い手がいなくなったために、ミズーリまで所有する牛約一万頭を大移動させる計画を敢行する。
しかしその事に当初から懸念を感じていた幼い頃に知り合い、ダンスンを慕うマット(モンゴメリー・クリフト)は、旅を続けるうちに彼と激しく対立し始め、到頭彼を隊列から追い出すのであった。
◆感想<Caution!内容に簡単に触れています。何故ならばこの映画だけではなくモノクロームの映画(だけではないが)、物凄いレビューを書かれている大先輩が複数いらっしゃるからである・・。
・今作は、矢張り、資料に書かれている約一万頭の牛の大移動の迫力がまず、凄いのである。1952年公開作なので、CGではないであろう。
ハワード・ホークス監督は、如何にしてあの数々の大移動のシーンを撮ったのであろう。
特に、ケネリーが夕食時に皿をガチャガチャと落としてしまい、敏感な牛たちが逃げ出すシーンや、河を渡るシーンなど、これだけで評価は4点である。
・ダンスンは旅の初めの頃は、人情に篤い。例えば牛たちが逃げ出した際に、見張りに立っていたダン(ハリー・ケリー・Jr)が遺体で見つかるシーン。
ダンスンは、生前にダンが言っていた”到着したら100ドル貰える。そうしたら家を建てて、妻が欲しがっていた赤い靴を買うんだ。”と言う言葉を覚えており、”アイツの嫁さんに大金と赤い靴を買ってやれ。”と部下に告げるのである。
・だが、食料が乏しくなり、ダンスンも徐々に意固地になって行き、人心が離れていく。元々ダンスンは、恋人フィンを、ネイティブアメリカンの襲撃により亡くした時から、寂しいが故に意固地になっていた心を、ジョン・ウェインが絶妙に演じているのである。
・今作の印象的な人物としては、ダンスンを良く知る剽軽な食事係のグルート(ウォルター・ブレナン)が居る。彼の存在と発言が、作品に幅を持たせているのは間違いがないであろう。
・そして、もう一人は途中から登場する、マットと恋に落ちる強気だが、人の心の機微を見分ける天才であるテス・ミレイ(ジョーン・ドルー)である。彼女はマットの気持ちを察し、単身、新たに仲間を集め、隊を追われた時にマットに“追い付いて、殺す。”と言ったダンスンの元に行き、マットとの仲裁を図ろうとするシーンはとても良い。ダンスンに対し一歩も引かず”私に命令しないで!”とバシッと言い放つと、途端にダンスンの表情は和らぐのである。それは彼女の手首に有った亡き恋人フィンが付けていた装飾品の影響もあるであろう。
・だが、ダンスンはマット達に追いつき、銃を彼に撃つ。だが、いづれの銃弾もマットの身体には当たらない、というか当てないのである。
そして、殴り合いになった時に、再びテス・ミレイが言い放つのである。”ずっと、殴り合っていればいいのよ!”と。
我に返った二人は,かつての様に笑顔で隣同士で座り、ダンスンは木の枝でマットに”牛にDとMの烙印を押そう。”と告げるのである。
<今作は、無骨な男が旅をする中で仲間達と決別するが、或る女性の出現により和解する、牛の大移動シーンの迫力も凄き西部劇なのである。>
■近年、劇場で西部劇が殆ど掛からない。近年(と言っても、随分経つが)Netflix制作の、ジェーン・カンピオン監督の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」や「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール」が限定一週間公開で映画館で上映された時は嬉しかったし、面白かったモノである。Netflixは、西部劇を結構製作している。
ここ一カ月で2作、Netflix制作の映画を劇場で観たが、私は又西部劇を作ってくれることを切望しているのである。