劇場公開日 2021年11月5日

「野心作ではあるものの面白くはない」ベルリン・天使の詩 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5野心作ではあるものの面白くはない

2024年6月1日
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鑑賞方法:映画館

日本公開は1988年。当時、結婚したばかりの妻と2人で日比谷シャンテで観た。ミニシアターブームに乗っかった配給で雑誌や新聞では絶賛の嵐。大いに期待していたのだが、なんじゃこれはっていうのが当時の感想。ミニシアターといってもロードショー館と料金は同じ。何の割引もないため正直、若い我々にはこの出費は痛かった。それだけにとても損をした印象が残っている。
個人的な遺恨はさておき、36年ぶりに劇場で観た印象はやっぱり面白くはないということにつきる。この監督はユーモアセンスはほぼゼロの人なのでなんのくすぐりもなく単調に2時間を超えるフィルムをみせられるとかなりキツイ。
無理に意味をもとめるとこの映画もヴィム・ヴェンダースのお家芸のロードムービーってことになるのでしょうね。誰も旅行してないじゃないかって言われそうですが、ヴィム・ヴェンダースのロードムービーっていうのは初期作品を除けば、監督自ら旅行者、エトランジェの視点で街や街道やそこを行き交う人々を描くところに特徴がある。
この映画も前半部分(モノクロ)は2人の天使が降り立ってベルリンの人々の心の声を聞いたり若干の人助けをしたりしていますが、これは天使視点=ヴェンダース視点で街の記憶を見聞きしているっていうことでしょうね。当時のベルリンは壁が崩壊する直前で長い冷戦期を経て街は荒廃、一方で戦災の名残も色濃く残っていたようです。そのあたりの感じがなんとなくは伝わります。
さて後半(カラー)に入って、天使ダニエルとサーカスの空中ブランコ芸人のマリオンは結ばれハッピーエンディングっぽい幕切れとなります。
これは街の再生と希望を、エトランジェであるところのこの2人に仮託したっていう意味なのでしょう。ほら終盤のマリオンの長台詞(何言ってるか分かんないと評判の悪い)で「私たちが世界だ」っていってるじゃないですか。世界はともかくとして、少なくともベルリンという街は、彼らや、この映画に出てくる他の人々、なかでも子どもたち、が主体となって再生させ、変貌させ、新たな記憶を創り出していくんだ、ということを言いたかったんだとは思います。映画的ファンタジーの構築という観点からして野心的な映画だと思いますが、やや我田引水の面は否めません。
この方法論ははるか後年の「PERFECT DAYS」でも踏襲されてますね。役所広司の演じる平山という人物が、東京の記憶や個性を代表する人物として描かれているところ。ああ、あの映画に対して私が抱いた反感の源流が、ベルリンにあったんだと今回、思い当たりました。

あんちゃん
きりんさんのコメント
2024年11月11日

おお、新婚さんで観に行かれたんですね💕
良かったじゃないですか。映画自体は大したことなくっても、そういうのがいい思い出になるものですよ(笑)
で、きりん家の場合はどうだったかって?
はい。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に克明に書いておりますです
😭

きりん