劇場公開日 2025年2月7日

「ロイ・オービソンが普通に聴けなくなるトラウマ作」ブルーベルベット 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ロイ・オービソンが普通に聴けなくなるトラウマ作

2025年2月28日
PCから投稿

亡くなったことでまた過去作に脚光が当たっているデヴィッド・リンチだが、最初にたまたま観たのが『ブルーベルベット』だったことに感謝している。リンチらしい悪夢のような世界観、恐怖に裏打ちされた幻想譚と、セクシャルな犯罪スリラーというジャンル映画のブレンドのバランスが非常によくて、最初に『インランド・エンパイア』とかを観ていたらリンチへの扉を閉ざしてしまっていたかも知れない。

不謹慎ながら真似せずにいられないデニス・ホッパーの怪演、やたらと嘆き叫んでいるときの口の形が気になったローラ・ダーン、なにかが崩れそうな妖艶さを見せたイザベラ・ロッセリーニ、端正な顔がより違和感を呼び覚ますカイル・マクラクラン。ビジュアル的なセンスが冴えているのは当然として、キャストひとりひとりの顔が完全にリンチ的で、最高のアンサンブル映画だったと思う。

しかし本作のせいで、ロイ・オービソンを普通に聴けるようになるまで相当の時間を要した。リンチが悪い。ありがとう。

村山章