「お前らは歌って踊るだけのこの世のクズだ」ファイト・クラブ kakao_2rises4さんの映画レビュー(感想・評価)
お前らは歌って踊るだけのこの世のクズだ
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とにかくブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンがカッコ良い。エドワード・ノートン演じるナレーターの内面的人格として描かれるタイラーだが、彼のやることは滅茶苦茶で酷く暴力的だ。でもカッコ良く見えるのは、彼が本能で動き、社会に支配されない自由な生き方をしているからである。レビュータイトルとして挙げたタイラーのセリフは、この映画の名セリフといっても過言ではない。エドワード・ノートンも素晴らしい。自分を痛めつけるシーンやタイラー(自分自身)との格闘は見事だった。やり方によっては陳腐に見えがちだけどカメラワークや編集などもうまく活用していて、一つの混沌として自然な「バトル」が創り上げられている。内容的に最初は前のめりに現代社会の構造に対する批判を説く挑戦的な映画だと思った。
でもそれだけではないと後で感じた。なぜなら暴力を肯定する映画なんて存在するわけがないから。社会構造への抵抗ともう一つ、前向きなメッセージが込められている。それはつまり「人は本気になれば理想に近づける」ということ。ナレーターは、タイラーと生活を共にすることにより徐々にタイラーの性格に近づいていく。タイラーは暴力的な人間だがナレーターの「理想」という理解があれば、タイラーに似る事は己の成長を意味すると解釈できる。タイラーが、ナレーターが成長するために邪魔だった「足枷」を取り除いたのだ。レイモンドを脅迫する場面も同様で、タイラーがレイモンドを暴力的に鼓舞している。この映画は、人間の可能性を説く映画でもあるのだ。
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