「決して口外するな」ファイト・クラブ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
決して口外するな
家庭の中のモノは何でも爆薬になるとか、フィルム映画のつなぎ目は「シガレット・バーンズ」などと言うとかのウンチクだらけ。ファイトクラブを設立するまでは、病気でもないのにマーラ(ヘレナ・ボナム・カーター)とともに患者の会に参加するというエピソードが面白い。「睾丸がんの会」のネタがストーリーの後半には伏線として生かされてることも絶妙だった。
20年近く経って見直してみたが、どっちがどっちだったか忘れてしまってた。知り合ったタイラー(ブラピ)と廃屋で生活するようになってからも、自分の内臓を一人称にするヘンテコな小説を見つけ、ジャックの延髄などという一人称をたまに吐くのも面白い。とにかくネタが豊富な作品であることは間違いない。
鬱屈した昼間の生活から自分を解放したい奴が続々と集まってくる。日常ではアザだらけ血だらけになって日常に戻る会員たち。ルールのあるファイト・クラブでは自己変革を求めながらも社会生活に順応していたはずだった。徐々に放火や度の過ぎた“宿題”のおかげで彼らは反社会活動家となってしまい、死者も出てしまうことに・・・それが睾丸がんの会のボブだったことが主人公(エドワード・ノートン)にショックを与え、不眠症もいつしか治ってしまう。
徐々に反社行動になっていき、リーダーさえも止められない。騒乱(mayhem)計画なるものも作られ、隠れ家の地下室にはニトログリセリンだらけに。ある意味、テロリストというよりファシズムさえ感じられる展開。こうなったら自分がいなくても次から次へとテロリスト、ファシストは生まれてくる。抑鬱の解放という裏のテーマが静かに身をひそめているのだ。まるでサブリミナル効果のように・・・
初見では単純に二重人格だったというオチを楽しむのもいいだろう。しかし、タイラーに喋らせている台詞は奥が深いので鑑賞2回目以降なら彼らの台詞を楽しむしかない。資本主義の揶揄、しかし非暴力ではない。ガンジーと殴り合いたいなどと言ったのが正解とされるのだから相当なものだろう。しかし、公開されたのが1999年であることも考えると、物質文明を破壊するという世紀末思想も絡んでいるに違いない。全てを“0”に・・・爆弾を仕掛けたのもクレジット会社ばかりというのも頷けるのです。そうして、何かとこの後の9.11を思い出されるため、自分の心の中でも映画の中身を封印してしまっていたかもしれません・・・