「怒り、狂気、破滅、愛。全てを語っている。」ファイト・クラブ ナカニシさんの映画レビュー(感想・評価)
怒り、狂気、破滅、愛。全てを語っている。
これまで自分がものの支配下に置かれていた事実を突きつける映画。
多くの人の中に内在する形のない社会への疑問、怒り、
生きているからこその暴力や破滅への憧憬を肌で感じることができる。
ブラッド・ピット扮するタイラー・ダーテンが痺れるほどかっこいい。
ものに縛られて生きる人間。
社会に何の疑問も抱かず生を消費する人間。
そういった人を笑いとばし、目を覚まさせるカリスマ性をタイラーは持っていた。
殴り飛ばされて最高と叫んだ瞬間に、自分もタイラーに魅了された。
印象的で魅力的なタイラーとは対照的に、
主人公はあやふやでつかみにくい。
なぜ不眠症で、なぜあれほど病んでいるのか、
そもそも名前が明らかになっていない。
後半流れが大きく変わる。
ファイトクラブが軍隊に、そしてタイラーが...
その変化や事実が明らかになる過程は狂気じみていて目が離せなかった。
ただ、そこから物語の焦点も何もかもが変わってしまい若干の違和感があった。
特に辻褄が合わないところが多くあるのが残念だ。
しかし、それまでタイラーの陰に隠れがちであった主人公の存在が、後半で大きく変わる。
ファイトクラブではやられ、タイラーの言うことに賛成していた主人公が疑問を持ち、不安を怒りに変えていく。
その描写はとてもよかった。
ラストシーンはとにかく印象的で、素晴らしい。
あそこで物語を終えたことでとても奇妙で綺麗な映画となった気がする。
"You met me at a very strange time in my life."
このセリフは特に印象的だ。
あと、タイラーが映画館のフィルム交換バイトをやっていたことに由来する演出がお気に入りである。
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