ファーゴのレビュー・感想・評価
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グラデーションの価値観。
◯作品全体
保険金目当てで妻の誘拐を依頼したことをきっかけに、どんどんと大事になっていく物語。
誘拐を依頼したジェリーの行き当たりばったりな行動や、実行犯・ゲアの躊躇の無い残虐な行為、そして事件解決にあたる妊娠中の刑事・マージの存在感…印象に残るシーンが多々あったが、個人的に一番面白いと感じたのは、登場人物たちの価値観がグラデーションのようになっていることだった。
価値観について、未来をお腹に宿したマージと対照的なのは、まぎれもなくゲアだ。順風満帆な家庭を持つマージには暖かな人間性が存在するが、ゲアにはそれがない。自分にとって不要な物であればすぐに実力行使に及ぶし、必要がなければ会話もしない。冷え切った人間性が随所で表現されている。
その二人の間に価値観を置くのが、ジェリーとカールだ。ジェリーはどちらかといえばマージ寄りに価値観を置く。妻や子を積極的に傷つけるつもりはなく、仕事では相手の気持ちを慮ろうとする様子もあった。ただ、マージと違うのは自分の都合次第では相手を突き放す行動に出ることだ。それでもカールのように実力行使に出る勇気はなく、社交性の裏に小さな悪意を隠していて、マージとカールの間に価値観がある。
カールはゲアのような純粋に尖った感情ではないが、カールのような善性もない。悪意の裏に小さな社交性を隠しているような人物だ。ゲアに反抗するような勇気はないが、自分より弱い人間は平気で殺す。ジェリーとゲアの間に価値観を置くような存在だった。
こうした階調的なキャラクターの価値観は、マージとゲアのような対極にいるような人間でもグラデーションを通して見るとそれぞれの価値観は地続きである、ということを印象付けたかったのではないか。
暖かそうなベッドで夫と他愛のない話をしながらテレビを眺めるマージと、殺したジェリーの妻をそのままにしてテレビを見ながら食事するゲア。一見まったく違う環境に見えるけれど、テレビという共通点や、二人の間に価値観を置くジェリー、カールを通して見ると、決して別世界ではないことがわかる。そのことにユーモアを感じる部分もあるし、一歩間違えばゲアのような価値観になるという恐怖もある。ゲアは殺人兵器ではなく、同じ地域にいる人間なのだということを主張しているように感じた。
ラストシーンでは、価値観の対極にある二人が同じ車の中で同居する。幸せについて語るマージを聞き流しながらポールバニヤン像を眺めるゲア。同じ車内に居ながら同じカメラに収まることはなく、居場所を同じにしながらも遠い存在のように映る。バニヤンの逸話のように幸せがおとぎ話に聞こえるゲアにとっては、価値観は階調ではなく対照のものなのかもしれない。
グラデーションの価値観による物語の俯瞰は、実際の事件のように登場人物をリアル描写していた。
〇カメラワークとか
・ファーストカットとラストカットが同一…ではないけれど、似たような演出になっていた。真っ白な画面から白い雪景色が見えてきて、冒頭ではレッカー中の車が、ラストではパトカーが見えてくる。すべて白い画面でありながら少しずつ色や影が付いてくる演出は、価値観のグラデーションという部分に合致するものだった。
・マージは真正面から表情を撮るカットが多い。隠し事のない、正義のような印象。それでいてセリフや仕草はすごく人間臭さがあった。
〇その他
・途中で出てくるヤナギダはマージとジェリーの間に価値観を置くような人物だった。悪意を顕在化させることはないが、マージに近づくために嘘をつく。そんな自分に自己嫌悪する感情はある…というような。
同じ学校に通い、同じ時間を共有した友だちでありながら、一歩踏み込めばジェリーのように犯罪に手を染める。マージにとって危険な色へと進んでいくグラデーションを意識させる存在になっていた。夫に「私たち、幸せよね」と訊ねるシーンは、自分が黒ではなく白であることを確認するような場面だった。
・冒頭の「事実に基づいた」という嘘情報は、何度も映るバニヤン像で嘘だとネタバラシしていたんだなあ、と、終わってから気づいた。
・ジェリーの考えてるようで全然考えてない感じ、一番実際に居そうな感じ人物だった。こういうタイプって同じような人間には好かれるけど、それ以外からはトコトン嫌われるんだよなあ。
・『ノーカントリー』もそうだったけど、コーエン兄弟の作品に出てくる悪役って容赦ない。めちゃくちゃヤバイやつなのに、社会になんとなく潜んでいる感じが怖い。
タッカーとデイルから来ました
ん?実話?にしては何だこれ、と思いながら最後まで観て、ウッドチッパーで「タッカーとデイルで観たやつだ!!!」と大興奮。ファーゴのオマージュだったんですね…意図せず原点に辿り着けるとうれしい😇
ブラックユーモアが評価される割に、現代日本人にとって笑えないのは、訛りが感知不可、この程度のゴア表現は今日日ありふれてるからなのかな…と考えました。
でもウッドチッパーに刺さった足の茶目っ気はとっても良かった!
タイプの異なるチンピラの対比、冒頭パンケーキの下りは、伊坂幸太郎『マリアビートル』の蜜柑と檸檬のようでした🍊🍋🚄は未見
面白さが分からなかった
アマプラのおすすめで初めて見ましたが、面白さが全く分からなかった。見てから評価がこれ程まで高いことを知り、はっきり言って驚きました。なぜ?
よく分からないのは、旦那さんの偽装誘拐の目的。お金が必要なのは分かるんですけど、いくら、なぜ、いつまでに等が分からなくて、切羽詰まっている感じもない。なので、誘拐でお金がいつ、いくら入って来ればいいのかという緊張感が全くない。そのせいで、警察署長さんに詰められていきなり怒り出すのが訳分からない。また、連絡取れなくなったという焦りも感じられない。よくみんなついていけたね。不思議でならない。
個別にみると俳優さんたちはみんなさすがだなあと思うんですが、お話自体の面白さが僕には分からなかった。
最初に実話ですというのも、ピンと来ない。
だんだんと泥沼化していく展開がコントみたい
だんだんと泥沼化していく展開が面白い。コント見てるみたいだった。
良かった点は、女性警官がめっちゃ良いキャラだったこと。気だるい感じで頼りなさそうなのに、頭の回転早いギャップが良い。
女性警官の旦那さんも優しそうな人柄が好き。2人のシーン見てるだけでほっこりできる。
2人の好きなシーンは旦那が朝ごはん作るとこと、仕事場で一緒にハンバーガー食ってるとこ。台詞少ないのに仲の良さがよく分かる。
マイクとのシーンは男の気持ち悪さがリアルだった。しかも全部話がウソだったの怖...。隣座ろうとして一瞬で対面に戻されたのは笑った。
最後の「お金より大切なものはそのへんに転がってる」みたいな台詞が引っかかった。
正直自分は「お金が全て」って考えだからなぁ。そのうちお金より大切なもの気づける日は来るのだろうか。
白に赤
何十年も昔
歩いて徒歩5分の所にTSUTAYAがあった
そこで借りて観て衝撃を覚えた作品
アマプラで無料配信終了のお知らせで改めて鑑賞
あんなに衝撃を受けた割にはなんだか淡々と話は進み、クライマックス的な所もあまりそうではなかった。
まぁ、死体ミンチはすごいんだけどね。
主役である妊婦刑事の登場もかなり遅い
話は借金で首の回らない男
それに雇われた強盗犯
それをなんとなく追っていく妊婦刑事
この3つのいわゆる群像劇のような感じで話は進んでいく。
これはいらないのではないか…みたいなストーリーもそれぞれの背景と生き方を表しているようで無駄ではないのかも
特に妊婦刑事のドラマは面白かった
死体を見てもケロッとしてるのにつわりで嘔吐したり、やたらお肉をたくさん食べる食事シーン
妊婦という設定含めて1番生命の濃いシーンが多かった。
どこまでも白い白い景色
すぐに凍る車の窓ガラス
みんなが観戦するのはアイスホッケー
この辺からお国柄がわかる
てか、お金を得るために妻が誘拐させる茶番劇をよく考えついたなと、呆れると共に少し頭いいなぁとか思ってみたり…
途中途中にあまり関係のなさそうな画像がアップで映る
テレビ画面や街の巨像
なんとなくドキッとする
微妙な演出だけど心に残る
その群像劇が交わりつつあるところで計画にどんどん綻びが生まれてくる
必要のない殺人が続々と
若かった時に観た衝撃はなかった
そもそもなんであんなに衝撃を受けたのかすら覚えてなかった
いい年こいた今、改めて鑑賞して思ったのはお金ではない幸せ
そしてそんな幸せはあちこちに転がっている
このことがすべてなのだと思った
それはラスト、あと2ヶ月で誕生する生命への期待と愛する夫との幸せ。それが彼女にとっての幸せ
その幸せがすべての人々の幸せとは当てはまらないのかもしれない。
さまざまなな形の幸せはあちこちに転がっている
そんな一例が夫婦の幸せなだけであって、自分自身の幸せを得るために生き方を改めて考えようと感じた一見凄惨な殺人事件の話ではあるのだろうけど個人的にはそんなメッセージを受け取った気がする
時を超えて今、改めて鑑賞してよかった作品
あまり監督、俳優を意識せず映画を観ている私がめずらしく名前を覚えた「コーエン兄弟」作品
受賞歴が“6倍役満”の映画。コンテンツレーティングもすごいことになってるし。なのに…虚無感と苛立ちだけが残った作品。
アマプラでは、コンテンツレーティングが、肌の露出・暴力・飲酒・喫煙・ 暴言,・性的なコンテンツと、大変なことになっているんですよね。その上ジャンルがコメディ/サスペンスなんだから、訳わかりません。
予習にチラっと.com様のページを覗いてみました。なんと!100件超えのレビューがあるじゃないですか!超高評価で面白いらしいじゃないですか!
しかも、各種映画祭では、素晴らし過ぎる受賞歴じゃないですか!
特にインディペンデント・スピリット賞でにおいては、作品賞や監督賞を含む、候補になった6部門全てを受賞すると言う快挙を成し遂げたとあるじゃないですか!
麻雀で例えたら親で、かつ「大四喜・字一色・四暗刻単騎・四槓子」の6倍役満でアガるみたいな?アカギも顔面蒼白みたいな?←詳しくないので“6倍役満”でググってみました。毎度毎度余計なことです。(余計ついでに書くなら、それ6917京回に1回しか起きない確率らしいです。もはや宇宙規模の数字です)
もといです。しかも実話ベースのお話じゃないですか。俄かに興味が湧いて鑑賞を決めました。
オープニングのテロップを読むと、かなりヘヴィーな内容のようです。音楽も重いよ!
これ『ベイビー・ブローカー』や『岸和田少年愚連隊』の時にもつくづく思ったのですが。
私、映画を見る目が本当にこれっぽちもないんかなぁ…と。
これだけの受賞歴がある作品にも関わらず、心がピクリとも動きませんでした。
好き嫌い以前の問題です。虚無感と苛立ち。そんな物が残っただけの感想です。
一個だけ「ひょっとして、これが笑う所なの?」と思ったのは、ハンバーガーとミミズのくだりだけでした。
しかも、全然笑えませんでした。
コメディー要素のある作品らしいので、わかる人にはわかる小ネタが、あちらこちらにちりばめられていた思うのですが、私にはそれがさっぱりでした。なので余計にイライラしました。
てか、最初からしておかしいて!ずっとおかしいて!
普通、パトカーってふたり一組で行動するんとちゃうのん?今まで観てき映画ってだいたいそうでしたもん。
本作を観ての収穫は、このレビュー書くために調べた“6倍役満”の件だけでした。
これだけで 断罪してしまうのは、観てきた1時間半が勿体ないので、作品について少し調べてみました。
実話ベースではなく、全くのフィクションだったのですね。「だからそれが何やねん!」というのが正直な思いです。
しかもコメディという点でも、アメリカ人の感性でなければ理解できないという内容らしいじゃないですか。
全く白けてしまいました。
それこそ「あぁ!時間勿体なっ!」でした。
実話っぽいフィクション?
まるで、最近起きた那須の遺体焼却事件のような展開、冒頭で実話とあるがエンドクレジットではフィクションと出る、コーエン兄弟のブラック・ユーモアらしい、同様にタイトルのノースダコタ州東部の都市ファーゴも冒頭で実行犯に合うために訪れる街でそれだけ、大半はミネソタ州のミネアポリスとブレーナード、コーエン兄弟はファーゴの方が語呂がいいからと言っている。
犯行の裏側を含めてつぶさに描くから動機も犯人も明確でサスペンスや、ミステリー感はない。なにが見どころかといえば実話っぽく描くことで犯罪を犯す人間の愚かさ、怖さのリアリティに挑戦しているところでしょうか。アカデミー賞からカンヌまで多くの賞をとった作品なので私みたいな素人がけなすのは意味がないだろうが、B級映画にしか思えませんでした。
without blackなblack comedy。アメリカはどうなる!白人曰く『Leave Me Alone』
2回目の観賞だと思うが。
妊娠である必要性が感じない事と、彼女の推理が台本通りでサスペンス無い事が疑問。
・警官が職務質問する時は絶対に二人いる。
黒人が余り出てこないブラックユーモア?こんなのでアメリカはどうなる!
白人曰く
『Leave Me Alone』
イエローな僕は答える。
『yes sir!!』
本当に笑って良いのかなぁ?
まぁ、演出だが頭悪い奴らばかりのサスペンス。
白とイエローとREDの血の火曜日サスペンスだねぇ♥
なんか違うんだよねタランティーノと。
『Time is money』で人生とお金は同じと理解できる。あと2ヶ月のお子ちゃまも時間を浪費して、28歳だねぇ。アンダーソンさんはアメリカだから、お亡くなりになってますよね。
思ったより普通かな
実話に基づいた話と冒頭テロップされて、見始めてすぐに、随分とコメディタッチだなって思った。吹替え版で見たせいか、誘拐役の2人、ジュリーもコメディっぽい会話と声で、違和感。案の定、計画はズサンで、打ち合わせも適当で、上手くいきそうな感じがない。
それでも、ナンバープレートをつけ忘れていなければ、何とかなったのかもしれないが、これが全ての発端か。警察官を殺し、目撃者のアベックを殺し、誘拐場面でもドタバタで手際が悪い。身代金の準備も計画どおり行かず、更には、受け渡しまで義理の父にやらせることになり、父が殺され、犯人の一人カールも傷を負う。挙句の果ては、誘拐した妻が騒いだといってゲオが殺し、カールはゲオに斧で襲撃され切り刻まれる。
まあ、よくこれだけ次から次へと殺人の連鎖が続くなあと感心。適当だから、上手くいかず、それを隠蔽しようとして次の殺人が生まれる。それがブラックなのだろうけど、自分には、それほど面白く感じなかった。でも、アカデミー賞の脚本賞、カンヌの監督賞を取っているのを見て、へえーって感じ。この脚本が良いとするならば、まるで本当に起こったドジな誘拐殺人事件っぽく見えたということか。
えっ、めっちゃクソやん
これ、実話??
主人公のおっさんやばすぎるやろ。
ほんま自分勝手な上に頭悪すぎる。
雇った誘拐犯もお金の為に人殺ししまくってんのに悠長で挙句仲間割れしてるし。
ほんま息子のこととか考えへんかったんかな?
警察も私たち幸せねって、人いっぱい死んでる事件の担当のくせにそんな他人事なんかいっ!
ドキュメントを観ているような感覚
・20年くらい前にDVDで観て以来、二度目。各所の印象が深く残っていたけど、ストーリーは全然覚えてなくて、観てみてとても面白かった。20年前に観たときは確か、盛り上がりのない静かな映画の記憶が強く残っていた。しかし改めて観てみたら、不安感やサスペンスの空気感や登場人物のキャラが全員立ちまくっててなんじゃこりゃあと驚愕だった。
・妊婦の警察官と主人公?の男が犯人ってだけ印象に残っていて偽装誘拐や頼りない主人公や奥さんが何かイタい人っぽい、警察官の旦那さんが売れてない画家とか面白い。実話を元にしているとは思えない展開で驚く。途中、本筋とは関係ない警察官の昔の知り合いの男が精神的に病んでいるとか、ああいうシーンが好き。物語上は無駄に思えるけど、なんかリアリティを凄く感じられる。多いとしんどいので加減が難しい。
・主人公の男の計画が一個も思い通りにならないのが面白すぎる。金を工面できそうってところだけうまくいっていたけど、偽装誘拐を頼んだ男の助言でしているのもまた面白い。それに巻き込まれて殺されるのも何だか不条理だけど現実ってそんな気もするという気になる。実際にはかかわりたくないけど。
・真冬の凍てつく空気が常に閉鎖的で緊張感の演出に一役買っていると思った。
ミンチは実話かーい。
自分の義父からお金を取るために自分の妻の偽装誘拐を計画したところとんでもない事態へと発展していく話。
まず「実話を元に」って最初に提示されてるけどこんな事件ないのが1番驚いた。劇中、多方にホラ吹きまくる夫のようにこの映画自体も最初からホラ吹きだったとは。
でも、死体を木を粉砕する機械に入れてるのはコーエン兄弟が着想として織り込んだ実際の事件でもあったらしくて、1番フィクションっぽいところはリアルなんか言って思った。人間ミンチからの人間ハンバーグが『キングスマン』で出てきてさすがにエグってなったのだが、本作ハンバーガーをマクドーマンドが食べてるシーンが2回出てきてより連想されたわ。
私はこの映画「銃を持てる社会」に対する疑問を投げかけてるように感じた。銃賛成派の主張として「もし銃を持った人が現れたらそれに対抗できるのは銃だけだ」っていう意見がよくあるらしいんだけど、この主張、義父が死ぬシーンで真っ向から否定されてる。撃たれて打ち返したけどそんな銃撃ったことない人が撃ってもちゃんと当たらんし、より激昂されるっていう。
手にすれば一瞬で人の命を奪う事が出来るという銃の魔力が、人を大胆な行動に突き動かせるし、自分は絶対的な力があると過信させる。ほんとに日本は銃が持てない国でよかった〜
あとはやっぱり、フランシス・マクドーマンドが可愛すぎる!その旦那さんもボーっとしてるけど、ちゃんと食料を提供してくれるの最高!
ファーゴとは
洋画には「マルホランド・ドライブ」のように、地名を使ったタイトルが時々ある(邦画でもあったかもしれないが今は思いだせない)。タイトルだけではどんな内容かは全くわからないので、事前情報なしで見たい私にとっては都合が良い。
この映画はノーズダコタ州のファーゴという町のバーで、事件となる偽装誘拐を依頼するシーンから始まる。という訳で、タイトルのファーゴとは町の名前であることが分かる。ただ、映画のポスターから事件に関する物語だということが既に想像がついてしまっていたが。
誘拐事件、殺人事件の映画としてはそれほど面白くはなかった。特に、妻と義父までも殺されるのはちょっとやりすぎのような気もした。ただ、事件とは全く関係のないシーンが面白かった不思議な映画でもある。
主人公(女性警官)と同僚が、最初の殺人現場で、コーヒーを飲みながら現場検証をしていたり、車で移動中にジョークを言ったり(結局、字幕のJ3L2404のジョークは理解できなかったが)、夫のためにミミズを買ってやったり、昼食のビュッフェで、いちいち選ぶ料理をアップで撮っていたり(ある料理は躊躇して取らないシーンまであったのには笑ってしまった)、事件の情報収拾で出張して泊まるホテルで地元の刑事に昼食にいいお店を聞いたり、学生時代の日系?の元ボーイフレンドに会ったり、誘拐を持ちかけた夫がレストランで身代金渡しの深刻な会話をした後、満足でしたか?とレジ係に訊かれて、「うまかった」と答えたり、全体的にブラックコメディ仕立てになっていた点が特に面白かった。
ラスト、主人公夫婦の会話がいい。
(主人公が、3セント切手のデザインに採用されて鼻が高いと夫をほめ)私たち幸せな夫婦ね、愛してる、あと2ヶ月(子供が生まれるまで)。→ 身代き金の100万ドルより、価値のある3セントということかな。
あと気になったのが、偽装誘拐の理由が金に困ってとのことだったが、どんな理由で困っていたのか、また、犯人の一人が雪の下に隠した大金はどうなったのか。
独特な面白さ
自動車販売の営業マンのジェリーが妻の偽造誘拐を,2人の男に依頼することから物語が始まる。
ヘンな顔のおしゃべりな男と無口だけどキレると凶暴な男の2人組もなんともいえない面白さ。2人が道中で売春婦を買うのだけど、その2人の後のインタビューも面白い。
ジェリーの義父や弁護士とのやり取り、お客さんに対する仕事のいい加減さも笑える。
偽造誘拐のつもりが犠牲者が出てしまい、捜査を担当する警察官は妊婦さん。つわりがあったり、夫との会話がなんとも言えない可笑しさ。
爆笑する面白さではないけど、フフッて鼻で笑っちゃうような可笑しさが随所にあって独特なおもしろさがある。でも冒頭で実際にあった事件で名前以外は殆どが事実とあったが、こんなにコミカルな映画にしていいの?ちょっと不謹慎ではないか?
結局6人?殺されてしまった事件に発展。でもホントはこんな事件はなくて、冒頭の解説もストーリーの一部らしい!何てこった🤷🏻♀️
まんまと騙されちゃったよ😏
こんな方にはお勧めの映画かも知れません。 ・犯罪物の映画が好きな人。 ・ブラックな笑いが好きな人。 ・役者の演技力を感じたい人。 ・ダメ人間が好きな人。
『人間は、おかしくて、悲しい』
何を書いてもこの公開時のキャッチコピーを超えるのは難しい、この映画にぴったりの言葉だと思います。
身内の中だけのちょっとした疑似誘拐をでっちあげて、必要なお金だけをせしめるつもりでいたのに、どんどん話は大きくなり、思い付きの嘘での場の取り繕いも通用しなくなり、追い詰められていく感じ。
これが『ユージュアル・サスペクツ』のキントであれば明晰な頭脳で騙し切りますし、
『羊たちの沈黙』のレスター博士であれば綿密な計画で次の案を繰り出し逃げ切るのでしょうが、
残念ながらジェリーは知能犯でもなければ、策略家でもないです。
全て思い付きと、甘い期待でドツボにはまっていきます。
ジャンルとしてブラックコメディにカテゴライズされる作品ですが、この映画が該当するのかは悩むところです。
笑うのが忍ばれるようなコメディというよりは、潜在意識にピリピリと響き過ぎて観ている内に笑えなくなってしまう話。
人が死ぬから。と言うよりも、"誰かの掌で転がされながら逃げ回る怖さ"が深層心理から引き摺り出されて、笑う処ではなくなってしまいました。
人の情けなさ、愚かさと並行して人の狂気も描かれています。
誘拐の実行犯となるカールとゲアの二人、見るからに癖のありそうな風貌でよくしゃべるカールと、全くしゃべらずに淡々と殺人を繰り返していくゲア。
ゲアは殺し方もえぐければ、死体の処理の仕方もえぐいです。
終いにはカールも殺し、木材粉砕機で証拠の隠滅を図るゲアの画は、多くのスプラッタ映画の決めカットを凌駕するほどに不気味で怖いです。
狂気と言えば、ストーリーとは全く関係のない展開で登場する日系人のマイクの姿も狂気じみています。
涙を見せながら身の不幸を語り、マージにすり寄ろうとする姿が全て偽りだと気付いた時の不気味さ。
この映画の根底が人間の愚かさだけではなく、更にその奥底に人間の狂気が含まれていることを受け手に強烈に印象付けていたように思います。
人の愚かさ、狂気と対比するように、主人公のマージは飄々と現場の状況をプロファイリングし、着実に捜査を進めます。
出産まで2カ月に迫った身重の捜査官、その設定だけでも最悪の事故が起きないか?と心配になりますが、彼女の明晰な頭脳は常に相手から最短で情報を引き出し、必要な調査を並行で指示し、最短で犯人の元へ辿り着く。
犯罪者たちを見て「人間は、おかしくて、悲しい」と一番思うのは彼女だと思います。
「なんでこの程度のお金で。。。」
「人生にはもっと素晴らしいことがあるのに。。。」
けれど、その言葉も全身が狂気に毒されているゲアには届くこともないです。
きっと、小賢しく愚かしいジェリーやカールには届く言葉なのだと思います。
彼らは、「ここまでする気はなかったのに、なんでこんなことになってしまったんだろう。。。」と後悔するのだと思います。
本当に『人間は、おかしくて、悲しい』です。
ラスト、自宅に戻り、画家の夫とベッドで寄り添うマージ。
事件の余韻もなく夫との時間を共有しくつろぐ彼女の姿も人間の不思議さをこの映画に加えているように思いました。
ストーリーとしては以上ですが、流石に名作と言われるだけあって、役者の存在感や舞台となる雪のミネソタの風景には圧倒されました。
オープニングの雪の中でシトロエンを引いてくるシーンの荘厳さは、いったいこれから何の映画が始まるんだろう?と不思議に感じる程。
音楽もシンフォニックな盛り上がりがあって、かっこいいという意味では凄くかっこいいんですが。
いい意味で違和感のある選択だったように思います。
また映画全体の画として、雪に覆われた世界は何度も繰り返される殺人と血を引き立たせ、この映画の狂気が映える映像だったように思います。
役者陣も、ウィリアム・H・メイシーやスティーヴ・ブシェミ等、愚かしい人代表の二人は当て書きじゃないか?と思うほど、期待通りの二人でした。
ピーター・ストーメアの静かな狂気はピリピリした怖さの伝わる演技だったと思います。
そして最後に、ヒロインのフランシス・マクドーマンド、役者として観るのは初めてでしたが、上の3人とは全く異なる理性を持ち、飄々とした立ち回りが映画としても一段階レベルを上げているように感じる程でした。
この作品でアカデミー賞の主演女優賞だとか、納得です。
ノマドランドも観てみたくなりました。
「嘘の塊」と「人間の愚かさ」
もう何回観ただろう。そして長いこと騙されていた。
そう、この映画は嘘の塊なのだ。
まず冒頭の約束の時間から間違っている。つまりどちらかが嘘を付いている。息子スコティが家族との食事も早々にマクドナルドに行くと言う。これも嘘かもしれない。ディーラー内で塗装料の件も上司に相談すらしない。ローン会社から車体番号を問われても嘘をつき続ける。
序盤だけでも嘘のオンパレードだ。
そして、嘘の象徴マイクヤナギタ。
目の前で涙ながらに身の上話をされて誰が疑える?
映画が始まる前、重厚な音楽と共に「実話に基づいた話、忠実に再現した」と謳われれば信じてしまうだろう。
こんな事件どこかにありそうだよね、と思わせるくらい、世界のどこかで些細なことから始まった悲劇は繰り返されている。そのくらい人間とは愚かなのだ。
そして最後、「普通」「平凡」が一番だよねと訴えてくる。あれだけ凄惨な殺人事件を見せられた後に、小さなことに幸せを感じるシーンにとてもホッとさせられる。
「人生はお金よりも価値がある」
こんなありきたりなセリフが胸に響く。見事な展開、脚本だ。
この映画を名作にしてくれたのは他の誰にも代わりは務まらないと思わせるキャスティング。そして、音楽、撮影地。
どれをとっても完璧である。
衝撃の実話。一定のテンポなのに惹きつけられる不思議。
音楽が良かったです。牧歌的でありながら物悲しい曲調が舞台や内容に合っていて、印象に残りました。
展開はわかりやすく、リアリティがありました。メリハリなく常に一定のテンポで展開していくけれど退屈さはなく、むしろ惹きつけられるような独特の雰囲気を持った作品です。実話らしい、客観的で一歩退いたような画面作りが良かったです。1987年当時の雰囲気を作っている、そこそこ最近の作品かと思っていました。23年前だと知ってびっくり。
警察官に車を止められたあたりからはずっと鬱鬱として胸苦しく、どういう気持ちで観ていたらいいのかわからなくなりました。
鑑賞後にだいぶ気分が沈んだのですが、なんと!本作は本当はフィクションらしいですね!やってくれる…しかし救われました…。冒頭のテロップも含めてフィクションって…そんなのあり?実話でも脚本賞って取れるんだーとか呑気に思っていました。まさに衝撃の「実話」。さてはコーエン兄弟、相当の曲者だな?
ヒントはポールバニヤン(ホラ話の象徴)とマイクヤナギダの話(嘘)にあったんですね。マイクは話の大筋に関係がなく違和感があったので、なるほどな〜と思いました。あとはカールがお金を隠したことは誰が証言したのかも疑問に思っていました。ある意味どんでん返しの作品ですね。おもしろい。
フィクションだとわかるとブラックコメディの見方もできますね。パンケーキ好きな寡黙な大男とか、部下にもらったコーヒー捨てるとか、身代金値切ろうとする父親とか。初見はほぼ真剣な顔で観ていましたが、次からは笑って観られそうです。
荒唐無稽に見えて、悪事が泥沼化していく様は現実でも起こりうるかもしれないと思わせられます。この絶妙なバランス、上手いですね。
ポールバニヤンの像が撮り方によってやけに怖く見えてビビりました。
あと終盤の木材粉破砕機はエグいですね…。また雪に赤が映えること。実際に事故では起こったことがあるらしいです…考えただけで恐ろしい。
演者みなさん表情が良かったですね。特にピーターストーメア扮するゲアのあの何を考えているのかわからない薄気味悪さ、怖さはなかなか出せないと思います。
カールというかスティーヴブシェミが聞き込みの度に「全体的にヘンな顔」と言われていたのは少し笑ってしまいました。特徴的ですよね、好きです。シェプにぶん投げられるところもおもしろかった。『レザボア・ドッグス』のピンクよろしく金にがめついお喋りな小悪党、最高でした。
フランシスマクドーマンドも自然な演技ながら存在感があり、格好良かったです。役作りでミネソタ訛りの英語を習得したそう。ガンダーソン夫妻は素敵な関係でしたね。癒しでした。
ウィリアムメイシーのにっ、と音のしそうな愛想笑いも好きです。情けない役なのですが、その普通の人っぽさに自然と同情して観ていたので展開が辛かったです。
フィクションとはいえ、どんなことでも隠そうとしたり、小細工しようとするのは良くないですね。誠実でいたいと思わせてくれる作品でした。
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