「性愛と戦争と」愛のコリーダ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
性愛と戦争と
おそらく、このフィルムに、日の丸を持った子供たちや、藤竜也が軍隊の行進を避けて道の端を歩くシーンがなかったとしたら、ひたすら性愛に没頭する男と女の情念に関する記録を映したものにしかならなかったのではないか。
ラストで、たぶん大島監督自身によるナレーションが、この事件が1936年に起きたことを伝える。2・26事件が発生した昭和11年のことである。この年代についてわざわざ言及することは、子供たちに日の丸を持たせたり、藤の歩く道に軍隊を行進させたりすることと同じ効果を発揮している。
これらの効果とは、観客が、この性愛を主題とした物語の片隅に戦争の記憶が刻みつけられていることを意識させられるということである。大島監督は、何を狙って戦争の記憶というものをこのフィルムに挿入したのだろう。初めて観た大島作品なので、他の作品にも触れなければ分からないだろう。
論戦を朝までやってるTVのトークショーに彼が出演していたことの意味合いを、何となく感じ始めた。これは、彼の作品群を観なければならないな。
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