白夜(1971)
劇場公開日 2012年10月27日
解説
フランスの名匠ロベール・ブレッソンが、「やさしい女」(1969)に続き文豪ドストエフスキーの短編を翻案して描いたドラマ。ある夜、画家の卵ジャックはセーヌ河に身投げしようとする少女を助ける。1年前にアメリカ留学に発ち、その夜に再会を約していた恋人が現れないのだという。苦しむ彼女に恋心を抱きながら、同時に罪悪感に苛まれるジャックはひとりテープに思いを語りかける。舞台は原作の19世紀ペテルブルクから、撮影当時のパリに移されている。日本では1978年に劇場初公開。2012年、35mmニュープリントでリバイバル。
1971年製作/83分/フランス・イタリア合作
原題:Quatre nuits d'un reveur
配給:エタンチェ
日本初公開:1978年2月25日
スタッフ・キャスト
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2020年9月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ブレッソン監督のドストエフスキー原作のラブロマンス。卓越した映像美が凄い。夜の水辺の街、水面に写るネオン、女性の美しい姿。決して積極的ではなく禁欲的でストイックな映像美。足音など音の使い方も相変わらず緻密。正に職人芸。これぞ至極というような感じ。溝口作品やタルコフスキー作品に匹敵するような最高級の芸術的映像美を堪能した。本作は他のブレッソン作品と比べるとラジオから流れる音楽や船上でのオーケストラの演奏など音楽の美しさをより効果的に使った演出が目立つ。マルトが部屋で音楽に合わせて体を揺らすシーンの美しさは圧巻。そして原作通りのラストの落とし所にブレッソン作品らしい厭世観が感じられて良かった。
2017年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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19世紀のペテルブルグではなく、20世紀のパリのポンヌフ(第9橋)で、現れない恋人を待つ女性と画家の青年が出会う。
彼女は存在そのものが美しい芸術のようだけどロマンティストではない。彼はとても孤独で貧しいけど悪意はなくロマンティストだ。
60年代後半のパリの街には音楽があふれている。吟遊詩人のように街角でギターやバイオリンや笛を演奏する人たちもいる。
セーヌ川を行く船も音楽と共に流れていく。
そうして彼と彼女の束の間の時間も流れて消えていく。
唯一音楽だけがそれを知り惜しんでくれるかのようだ。
なにも救いがないほどつらい孤独の中で、20世紀と言うさらに人間をコンクリートで囲ってしまう孤独の檻の中で、彼はなんとか持ち堪えているんだ。共感しないわけがないじゃないか!
40年前に見た映画だからあいまいなところはあるけど、心に染み付いている。10代のころ、4,5回は見に行ったと思う。池袋に文芸座とかいう映画館があった時に。
流れて過ぎていったあれらの音楽の曲名を知ることはできないだろう。DVDも発売されていないから二度と聞くこともできない。
だからこそ、一層懐かしく、胸がしめつけられる。
記憶が確かなら、あれは1968年のアカデミー賞芸術作品賞かなんかだったような気がします。最高に芸術的であることには間違いないと私も思う。万人に理解されるかは別として。
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