パリ、テキサスのレビュー・感想・評価
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見る/見られる、見せる/見せられる
覗き部屋と映画は似ている。映画は観客が一方的にスクリーンを見る。見る主体としての観客と見られる客体としての映画。覗き部屋は、マジックミラーのようになっており、客からは女性が見えるが、女性側は客を視認できない。見る主体としての男性客と見られる客体としての女性。映画研究者ローラ・マルヴィの「視覚的快楽と物語映画」の影響があるんだろう。映画がなぜ魅力的なのか、それは「のぞき見る」快楽があるから、そしてハリウッド映画においては大抵、男が女をのぞき見る構造をしているとローラ・マルヴィは言ったわけだけど、彼女が言ったことがそのまま映画の中で再現されている。
「見る/見られる」という関係において、確かに男が女を見ることの方が多かっただろう。しかし、「見る/見られる」は何かの拍子に「見せる/見せられる」という関係に反転するのではないか。この映画を久しぶりに見てそんなことを思った。主人公の男はかつての妻を覗き部屋の鏡越しに見たくなかったのか、背中を向けて話し始める。しかし、最終的には見なくてはいけなくなる。彼はあの時、主体的に「見た」のか、それとも「見せられた」のか。
強すぎる愛は相手を理想化し、コミュニケーションが成立しなくなる。
テキサスを放浪していたトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)は弟のウォルト(ディーン・ストックウェル)に引き取られる。
ウォルトと妻のアンはトラヴィスの息子ハンターを育てていた。
トラヴィスはウォルトの家でしばらく生活していたが、アンから彼の妻ジェーンの消息を知らされ、探しにいくことにする。
ジェーンを演じているのが絶頂期のナスターシャ・キンスキー。それだけでもうなにも言うことがないのだが、ヴェンダース作品としても、上位のクオリティだ。
強すぎる愛は相手を理想化し、本当の意味でのコミュニケーションは成立しない。
これは映画についての映画であり、コミュニケーションについての映画でもある。
ウォルトが編集した8ミリには理想的な家族がうつされていて、ハンターはそこにうつっているジェーンが本当のジェーンではないと語る。
トラヴィスはハンターに認められようとして、父親らしい服装や立ち居振る舞いを演じようとする。
場末の風俗店で、トラヴィスはマジックミラー越しに女と話す。客から女が見えるが、女から客は見えない。女はそれぞれの役割を演じ、客の要望に応える。
その店で働いているジェーンを演じているのは何度も言うように、ナスターシャ・キンスキーであり、超絶美人だ。マジックミラーを挟んだ会話は、スクリーンに映し出される女優のように遠い。
ジェーンもそうだが、息子のハンターも賢く、ものわかりがいい。
この映画じたい、構図も考え抜かれており、映像も美しい。
すべてが美しすぎて、理想的だ。
そう、この映画は映画的であるからこそ成功していると言える。
訳の分からないトラヴィス
ハリーディーンスタントン扮するトラヴィスは荒野をさまよっていたあげくガソリンスタンドで倒れた。
弟がトラヴィスを迎えに行ったものの得体の知れない展開だね。突然息子を連れて妻捜し。その上、この訳の分からないトラヴィスの妻がナスターシャキンスキーだというのも不思議だ。やっぱり育ての親より産みの親なのかな。ラストシーンもちょっと理解に苦しむよ。
見て良かった
この日は、なんだか遠い、広大な景色が見たくなってこの映画をチョイス。
まず一言、「見て良かった」
マイリストに入れてるけど、もしかしたら一度も再生しなかったかもしれない。その日の気分でいつも見る映画を決めてるけど、ずっとこの作品を見る気分にならなかったかもしれない。サムネだけで。
でも、クリックしてみて良かった。再生ボタンを押して良かった。
こういう、思わぬ感動に出くわした時、すごく嬉しくなる。
ロードムービー、とだけ知っていてあらすじなどは知らなかった。
だから作品がスタートしてからすぐに、主人公の行動に釘つけ。
どういうことなんだろう?どうなっていくんだろう?って
ほんと冒頭からすぐに、惹きつけられていった。
ずっと興味を惹かれたまま、最後まで駆け抜ける。
そうだったんだ、そういうことだったんだ、と視聴者が知っていく方法も、なんだか今まで見たことない手法だったから、惹きつけられちゃったなあ。
そういう過去があったんだね。
息子ハンターが愛らしい。
息子とだんだんと距離を縮め、二人で車の旅のシーンはよかったなあ。
叔父叔母の心境、息子の心境、実母の心境、そして父の心境。
どれも、切なくて。でも皆シンプルに「大切に思っている」という気持ち。
そのパズルが上手くはまらない時に、すれ違ったり。
みんな「大切に思ってる」だけなんだけどね、、、。
父トラヴィスの行動、そして思いに
最後の最後まで惹きつけられる作品だった。
ハンターが母にゆっくり、近づくシーン。
近づいて、抱きつくシーン。とても、とても良かった。
音楽、ギターの音色がこの映画の雰囲気をさらに際立たせていた。
ロードムービー感。切なさもあり、広大な大地に呆然としているような、そんな雰囲気を掻き立てる音楽だった。
見れてよかった。
夫婦って
元ダンナなんて、声や話し方ですぐわかるじゃないか!長々話して気づくなんて映画的ウソの極まり。流石難解で知られるカンヌ受賞作🤗。で、星3つ留まり。ナスキンは演技達者というのはわかった。流石80年代の世界的人気の女優。
テキサスにもパリがあるらしい。
南房総の勝浦市も、
北海道の北広島市も同様のいきさつだ。そして
そもそもアメリカ東部の「NEW〜」という地名は、どれもおしなべてヨーロッパからの入植者たちが名付けた、彼らが元いた故郷の名だ。
帰らない故郷を、遥かに乞い想う名前だ。
テキサスには、かつてはフランス領だった時期があるのだ。
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広告看板を作っている弟が、行き倒れの兄を迎えに行って、
二人で失われた四年間と、兄弟として育った生い立ちを、それぞれ記憶を取り戻しながらの、車の旅をする映画。
お邪魔虫の居候が、放浪癖は治るはずもなく、兄は再び弟の家を出る。
その理由も告げずに。
僕には家族に10年を超える行方不明者がいる。
僕は彼の事を探す心と、彼を諦める心。そしてもしも再会が叶ったときの自分の心の持ちようについて
いつも考えている。
年間8万人の捜索願が出される日本。
出ていくまでの本人の心持ちや、その後の双方に流れる空白の時間を考える。
大都会LAで弟が手掛ける「巨大な広告看板」と、
砂漠の空き地に「ポツリと立つ兄の所有地の立て看板」の対比が 印象に残る。
心の拠り所を、遥か遠い街に残して、人は皆、流浪の人生というものをきょうも生きているのかも知れない。
いつか彼はその土地に到達するのだろうか?
いつかそのふるさとに、人は帰れるのだろうか?
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冒頭でバーブラ・ストライサンドの出演作「愛のイエントル」の看板が映ったことと、ジム・ジャームッシュ映画の常連ジョン・ルーリーの顔が見られたことは、少し嬉しかった。
弟夫婦の優しさと戸惑いが本当に素晴らしい。
そして、子役にやられてしまうのは勿論。
一緒には暮らせないのに、ガラス越しや背中合わせならばようやく語り合える男女の悲しさを魅せる。
パルム・ドール受賞 ✨
これはロードムービーなのか?
ナスターシャ・キンスキーはなんて美しいんだ!
ナスターシャ・キンスキーはクラウス・キンスキーにそっくりなのになんで美しいんだ!!
あんな若くてきれいな奥さんいたらおかしくなるのわかるけど、無責任。
弟夫婦とハンターの将来のことを考えてしまうから無責任なトラビスに共感できない。
レインマンやスケアクロウやオレンジロードエクスプレスみたいに旅の途中で主人公が成長していく、変化していくのがロードムービーだと思ってます。
これはロードムービーなのかな?
テキサスの蒼い空とキンスキーの赤いセーター
ヴィム・ヴェンダースの代表作のロードムービーで、どこかで観たような気がしたら、後年の作品『アメリカ、家族のいる風景』も子供を探しに行くロードムービーで脚本も同じサム・シェパードでした。冒頭、どこまでも広がるテキサスの蒼い空と荒野の地平線を背景に一人の男が放浪しているシーンは、西部劇のように美しく惹き込まれます。四年間行方不明だった彼を弟がロスの自宅に引き取り、主人公の過去がポツリポツリと語られていき、生き別れの息子との関係修復がされていきます。善人である弟夫婦、ぎこちなくも実の父を慕い始める息子との関係は、寛容さと慈愛に満ちています。そして、息子と別れた妻を探す旅、妻との再会は教会の懺悔室での告解のようです。ミケランジェロ・アントニオーニなら愛の不毛を強調するかもしれないけど、余韻のある幕切れが人生のほろ苦さがあっていい感じでした。役者では、ハリー・ディーン・スタントンが味わいのある演技でした。何よりも、出番が少ないのに画面をさらってしまう、ナスターシャ・キンスキーの美しさにハッとしました。
ナスターシャ・キンスキーが綺麗
午前十時の映画祭で鑑賞。
カンヌでパルム・ドールを受賞したのが頷ける作品。
「嫉妬」は本当に怖い感情。嫉妬心で関係がギクシャクしてしまい、結果、修復不能になる。お互い、もっと信じ合うことができれていれば、こんなことにはならずに済んだのに。
でも、その感情を抑えることができないのが嫉妬。
久しぶりにナスターシャ・キンスキーを観た。本当に美しい女優。
二度と子供を手放すことはないと信じたいが、はたして、ちゃんと育てられるのか。
何かアンが気の毒に感じました。
結局はこども泥棒
午前10時ので鑑賞。
おそらく皆さんが泣いた電話部屋での会話、シラーっと観てました。むしろ過去のイヤな話(黒歴史)を蒸し返されたようにならんのかなって。
17,8の随分と歳下の女子と結婚して、女と一緒にいたいから定職に就かないなんて有り得るん?
しかも子供ができて、今度は逆にって、三歳の頃の映画であんなにイチャイチャしてたんは計算合わんのでは?
結局、弟夫婦が実の子のように育ててたのに、盗んで行って、元嫁に押し付けただけ。しかも、子供が自分で判断したように持っていって、なんか悪質って思いました。
ま、私は生みの親より育ての親って思う方なんで。
多分映像的には良かったかな。きっと。
いろいろな愛のカタチ
追いかけるのも愛、逃げるのも愛、忘れるのも愛・・・
いろいろな愛のカタチが凝縮されていました。
純粋な息子のハンターを中心に交錯する愛の表現は感性に訴えかけてきます。
広大な昔のアメリカの風景も手伝って、心に刺さる映画でした。
デトックスに成功!
「ミッシング」で回った毒消しに、初めて観るこの作品を選んで大正解。自分の求めているのは、やはり精緻に造り上げられたフィクション。ラスト前の二人の長過ぎる程長い会話にもなんか安心する。
ヴェンダースは画の人と「ベルリン天使の詩」のレビューに書いたけれども、今回は色の人でも有った。特に“赤”、帽子、モーテルのシーツと服の色から始まって、ナスターシャのふわふわセーターでクライマックス!
アメリカ人じゃないからこそ美しいアメリカを描ける、「パーフェクトデイズ」もきっと同じなんだろう。
前々から観たいと思っていた作品、午前十時の映画祭にて鑑賞する事が出...
前々から観たいと思っていた作品、午前十時の映画祭にて鑑賞する事が出来ました。
傑作ロードムービーという触れ込みでしたが、ロードムービー感は大分薄めです。
ナスターシャ・キンスキーの美しさにびっくりしました。
弟夫婦の心情を思うとラストは複雑に感じます。
赤の色使いが印象的で、お気に入りの作品になりました。
今観ると味わい深い
午前十時の映画祭での4K修復版
「パーフェクトディズ」のヴィムヴェンダース監督の代表作だと思うけれど、前に観たのは高校生だったので当時よくわからなかった
見返してみると子供だとわからないなかなか味わい深い作品だった
荒野で彷徨っているハリーディスタントンのイメージばかりついてる作品だけど、バラバラになった家族関係のカケラなんとかつなぎあわせようとする話。
母親役のナスターシャキンスキーが美しい
ミラーボックスの用心棒にちょい役でジョンルーリーが出ていてびっくりした。
説明過多にならない叙情的な物語
ただストーリーを追うだけではダメな映画なんだろうと思います。見るべきは各俳優の演技、特に表情でしょうね。過去と現在がつながったことで心が揺れ動くさまを皆がとても繊細に表現しており、子役の人もその辺りはまったく大人と遜色なくて感心します。
物語も大詰めになってようやく登場する、主人公の妻であり子供の母であるジェーンがえらい美人さんで誰かと思ったら、ナスターシャ・キンスキーでした。正面からもいいですが、とにかく横顔がきれいです。俗な見方をするなら美しすぎる妻を持った男の悲劇、ということにもなるんでしょうか。
「PERFECT DAYS」のヴィム・ヴェンダース監督の作品ということで見てみましたが、序盤の一言も発しない主人公とかセリフより表情に感情が現れているところとか、共通するところもありますね。「ベルリン・天使の詩」よりは俗っぽくて、「PERFECT DAYS」よりは動きがある話なので、とっつきやすい感じはしました。
ハリー・ディーン・スタントンが男の哀愁を見事に表現した秀作!
「パーフェクト・デイズ」がとても良かったので、午前10時の映画祭にてビム・ベンダース監督の過去の名作を初鑑賞。
ロードムービーでカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したというくらいしか予備知識なく見たのですが、味わい深い映画でした。
タイトルのパリがまさかテキサス州にあるパリだったとは知りませんでした。
荒野をさまよっていたトラヴィスが弟夫婦に保護され、徐々に記憶を取り戻し、息子との絆を取り戻し、ヒューストンにいる妻を探す旅にでる。
妻役のナスターシャ・キンスキーがなかなか登場せず、焦らされましたがやはり美人でした。彼女が画面に出るだけで視線がくぎ付けです(笑)
息子役の子供もいい味だしてましたねえ。
せっかく妻と再会できたのに、なんだか切ないラストでした。
大人の映画ですね。ライ・クーダーの音楽が沁みました。
ニュートラルなロードムービー
午前10時の映画祭で観賞。
俳優は自然な間や脚本。
街や小物は自然なセット。
魅せようとやっきな昨今の映画とは違いナチュラルでしたので文化や時代が興味深かったです。
洋版、寅さんのような‥
とても繊細だけれどもじんわり温かい
いい映画でしたね。
きっと何回も観たくなる。
荒野を歩き続ける男が何故何のために歩き続け、そして倒れ、そしてだんまり。
不思議極まりなくさっぱり分からないオープニングだが、音楽とトラヴィスなるその男の表情に釘付けになる。
トラヴィスが倒れ運び込まれた病院から連絡を受け、弟のウォルトがはるばる迎えに来るが、記憶が曖昧で、だどたどしいトラヴィスを連れ帰るのに苦労する。
それだってトラヴィスが飛行機を嫌がったから、2日かけてテキサスからロスに車で帰ることになったのだから。
なんだよ、何があってトラヴィスそうなったんだよ
でもやっぱり ストーリーに入り込む。
ウォルトが優しい。そしてアンもすごく優しい。トラヴィスの失踪後、トラヴィスの子供ハンターを我が子のように愛情を注いで育てた2人。7歳のハンターも素直に育ち、ハッキリと覚えていない父親トラヴィスとの再会も、最初こそぎこちなかったが、だんだんと打ち解けていく。
アンから妻の消息について打ち明けられたトラヴィスは、妻のジェーンを探すことに。そしてそれを聞いたハンターも、もちろん行きたい。それまで父親としての記憶も曖昧だったが、行くか行かないかもハンターに決めさせて、家への電話にも責任を持たせるためにハンター自身に電話させる。
トラヴィス自身も父親らしく成長を遂げていっていたのだ。
だが、突然いなくなったハンターを心配するウォルトとアン。ハンターからの電話に、頬に一筋の涙をつたわせながら安否を確認するアンの気持ちが切なすぎた。ついに私まで泪してしまった。
そしてトラヴィスとハンターの、ママを探す旅が始まるのだ。2人の、前からそうだったかのような仲のいい父子のやり取りが、空白の4年間を感じさせない。
そしてとうとうジェーンを探し出すが、そこで何故トラヴィスが、さまよい歩き続ける程に、心が壊れ記憶をなくしてしまったのか露になる。
そしてジェーンもトラヴィスを愛してはいたが、不安定な夫と小さな子供を支えるには若すぎたのだ。
トラヴィス、ジェーン、ウォルト、アン
の演技がすごく良くて、表情だけでものすごくいろんな感情が伝わってきたが、何よりもハンターの純真な演技が響いて素晴らしかった。
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