「赤いワンピースとグレーのスーツ。”七夕の逢瀬“を固唾を呑んで見守る。」(ハル) きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
赤いワンピースとグレーのスーツ。”七夕の逢瀬“を固唾を呑んで見守る。
「人と人の間には、今まで誰も知らなかったこんな出会い方もあるのだ」と示した、「パソコン通信黎明期」の映画。
・仲人さんを介したお見合いでもなく、
・共通の友人からの紹介による出会いでもなく、
・偶然同じ場に居合わせて顔を合わせた=同じ学校のクラスメートとか職場の同僚=というのでもなくって、
独りで村上春樹を読むように、
独りでアパートの自室で自分の日記帳を読み返している人たちのように、
モニターの字を辿っていく読者たちが愛読書の著者の世界に出会っていくように、そうして見ず知らずの二人がお互いのメールの文章に惹かれていく
・・という物語です。
でも悲しいかな、新しくて美しかったけれど、あっと言う間に終わってしまった出会いの方法でしたね。SNS犯罪がこれだけ隆盛になってしまうと。
一瞬だけの。花火のような。
宇多田ヒカルの、16歳での衝撃的デビュー作「AUTOMATIC」にも印象的なリリックがあるな
〽It's automatic
アクセスしてみると
映るcomputer screenの中
チカチカしてる文字
手をあててみると
I feel so warm
↑これ大好きなフレーズなんです。
モニターの明かりに浮かぶ深津絵里がとても綺麗だ。
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【台本から】
(ほし)
何かほっとしました。ちゃんと時間通りの新幹線にハルがいたことが・・
私に沢山のメールをくれたハルが、私の生まれ育った場所を200キロのスピードで通過して行きました。
このビデオは大切にさせていただきます。
苦しい時、寂しい時、このスピードのハルを見ることにします。
(ハル)
こんな方法でほしの姿を見られるとは思わなかった。今までメールで色々なことを書いてきた人がこの人だなんて・・
赤い服がとても似合っていた(良く見えなかったけど)。ともかく不思議でしょうがない。小学校の同級生に久し振りに出会ったような・・面影があるようで。面影どころか初めて会ったのにね。
僕もこのビデオを大切にしようと思っている。
・・森田芳光、いい脚本。いい台詞だ。
若い二人の小さからぬ高揚を感じて、スクリーンを見守る僕も手に汗を握る。
DVD特典には森田のインタビューが載っている、いわく「文字」と「字幕」に主役になってもらった理由。
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迷惑メールの削除とBL登録が朝のルーティン。毎日忙しい。
実は、我が家の近くの高速道路のパーキングで、殺人犯の夫婦が逮捕されたことがあるのです、それは北関東でSNSで呼び出した女子高生を死なせた夫婦でした。
今やこんなふうに、残念ながらメールもSNSも、凶悪犯罪の落とし穴や 詐欺グループの仕掛ける罠の非常に危険なツールとなってしまった。
時速200キロですれ違い、お互いのhonesty をハンカチで確かめ合った二人だったのだが、あの映画史に残るだろう美しいシーンは、あの速度のまま最早人と人との信頼関係の世界から通り過ぎてしまったと思う。
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手紙フリークの僕は小中と20人ほどと文通し、結婚した妻にもたくさんの手紙を書きました。
トム・ハンクスとメグ・ライアンの「ユー・ガット・メール」は残念ながら期待はずれ。
その映画の元ネタとなった「桃色の街」も文通のシーンがまったく希薄でがっかりだった。
しかし「ユー・ガット・メール」に2年先駆けて作られた本作「 (ハル) 」は、文字になった人間の言葉がしっかりと言霊を持って往復しており、二人の男女も主人公。
そして二組の私信の文字が主人公。
往復書簡のやり取りが主人公だったのだと思う。
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【きりんの自分語り】
せっかく思い出したのでメモ
《ハンカチを振るシーン》良かったなぁ。
思い出したっけ、うちの子を連れて近くの山に登ったとき、時間を決めて、うちの玄関先で妻に白いバスタオルを振ってもらったんだ。
携帯電話など無かった時代。
山の展望台からそれが見えたときのえも言われぬ感激ね。
もういいのにいつまでもタオルを振ってくれていた妻が、遠くふもとにいた。