(ハル)
劇場公開日:1996年3月9日
解説
パソコン通信によって見知らぬ男女が出会い、恋が生まれるまでを描いたラブストーリー。(ハル)というネームでパソコン通信の映画フォーラムにアクセスを始めた速見昇は仕事も恋もうまくいかず鬱屈していた。そんな彼に(ほし)というネームで励ましのメールが届く。その日から、2人はメールを交換し始め、本音を伝え始めるようになる。そして(ハル)は会うことを提案するが……。スクリーンに映しだされたメール文字だけでなく、2人の距離感をみずみずしく描いた森田演出が際立つ。
1996年製作/118分/日本
スタッフ・キャスト
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2022年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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ー ”パソコン通信”と言うのは今でいうSNSの遣り取りの初期段階なのだろうか・・。
冒頭から、”ほし”と”ハル”のメールの遣り取りを画面で映し出す演出が、斬新である。
(今作の公開は、1996年である!)
それを支える、”ほし”を演じた深津絵里さんと、”ハル”を演じた内野聖陽さんの、日々の屈託を抱えながら仕事をしつつ、相手の着信を待つ姿が切ない。-
■“ハル”という名前でパソコン通信を始めた昇(内野聖陽)は、“ほし”と名乗る男性と意気投合。
お互いに本名も顔も知らない気軽さから、それぞれの悩みを打ち明け合ったりする仲になっていくが、実は“ほし”は男ではなく、藤間美津江(深津絵里)という女性だったことが判明する。
◆感想
・森田芳光監督作品は殆ど鑑賞しているが、この作品はノーチェックであった。
ある映画雑誌を読んで、慌てて鑑賞した。(現在、午前4時。今日、大丈夫かな・・。)
■結論から言うと、とても面白かった。
理由は、”パソコン通信”のある意味無機質な遣り取りと並行して、昇と、美津江の厳しい日常がキチンと描かれているからである。
二人は、相互補完するように、相手が誰だか分からないからこそ、日々の辛さや愚痴を言い合うのである。
その中には勿論自身の嘘を含めてである。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作で、アクセントになっているのが、戸田菜穂演じるローズであろう。
自由奔放な彼女は、”ハル”の恋人になり、彼と行動を共にするが、別の男と良い仲になるだけではなく、実は“ほし”の妹であったという設定の妙であろう。
更に言えば、“ほし”は東京に住んでいる”男性”のふりをしながら、実は盛岡に住む女性である事である。
・だが、二人は”パソコン通信”を通じて、自分の本名、年齢も開示していく。
そして、”ハル”が東北出張に行った際に、東北新幹線の脇で、白い車で赤い服を着た“ほし”が合図をし、お互いに300キロ出ている車中と外からお互いを捕らえようとする姿。
<ラスト、二人が初めて東京駅で会うシーンは、白眉であろう。
笑顔と、恥じらいを浮かべつつ、最前列の車両に乗っていた”ハル”に素顔で近付いていく“ほし”の姿。
故、森田芳光監督作品と言えば「それから」「武士の家計簿」・・・と、「僕達急行 A列車で行こう」と、外せない「家族ゲーム」と思っていたが、今作を観て森田監督の先見性と、映画構成能力と製作作品の幅広さに改めて、深く頭を垂れた作品である。>
2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD
1996年。監督:脚本:森田芳光。
主演のふたり。深津絵里と内野聖陽が若い。
パソコン通信で知り合う(ハル)と(ほし)
グループでチャットがいつのまにか一対一のかけがえの無い“話し相手=相談相手)になって行く。
(ほし)がはじめ男性のふりをしてたり、
(ハル)の彼女が外国へ行ってしまって失恋したり、(ほし)にはしつこいストーカーがいたり、
(ハル)が(ほし)と同時進行で付き合ってた(ローズ)が、まさかの(ほし)の妹・・・
ショックだった!!
今ならSNSで知らない人とメールするなんて珍しくもないが、26年前は、最先端の
ネット黎明期だったんだ!!
パソコンの文章画面が半分を占める。
でもドラマティックだった。
ドキドキした。
応援してた!!2人を!
この映画、20数年前に観ています。
その時は内野聖陽を見て、なんでこの人が主役の(ハル)なの???
とても不満だった。
内野聖陽は今かなり好きな俳優だが、当時は(ハル)にはもっと甘いハンサムがいいな・・と思い込んでいた。
深津絵里さんが美しいこと!!
今とイメージが殆ど変わらない、美人で感じがイイ。
まさかこんなに感動するとは夢にも思わなかった。
森田芳光、最高!!
2022年7月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
「人と人の間には、今まで誰も知らなかったこんな出会い方もあるのだ」と示した、「パソコン通信黎明期」の映画。
・仲人さんを介したお見合いでもなく、
・共通の友人からの紹介による出会いでもなく、
・偶然同じ場に居合わせて顔を合わせた=同じ学校のクラスメートとか職場の同僚=というのでもなくって、
独りで村上春樹を読むように、
独りでアパートの自室で自分の日記帳を読み返している人たちのように、
モニターの字を辿っていく読者たちが愛読書の著者の世界に出会っていくように、そうして見ず知らずの二人がお互いのメールの文章に惹かれていく
・・という物語です。
でも悲しいかな、新しくて美しかったけれど、あっと言う間に終わってしまった出会いの方法でしたね。SNS犯罪がこれだけ隆盛になってしまうと。
一瞬だけの。花火のような。
宇多田ヒカルの、16歳での衝撃的デビュー作「AUTOMATIC」にも印象的なリリックがあるな
〽It's automatic
アクセスしてみると
映るcomputer screenの中
チカチカしてる文字
手をあててみると
I feel so warm
↑これ大好きなフレーズなんです。
モニターの明かりに浮かぶ深津絵里がとても綺麗だ。
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【台本から】
(ほし)
何かほっとしました。ちゃんと時間通りの新幹線にハルがいたことが・・
私に沢山のメールをくれたハルが、私の生まれ育った場所を200キロのスピードで通過して行きました。
このビデオは大切にさせていただきます。
苦しい時、寂しい時、このスピードのハルを見ることにします。
(ハル)
こんな方法でほしの姿を見られるとは思わなかった。今までメールで色々なことを書いてきた人がこの人だなんて・・
赤い服がとても似合っていた(良く見えなかったけど)。ともかく不思議でしょうがない。小学校の同級生に久し振りに出会ったような・・面影があるようで。面影どころか初めて会ったのにね。
僕もこのビデオを大切にしようと思っている。
・・森田芳光、いい脚本。いい台詞だ。
若い二人の小さからぬ高揚を感じて、スクリーンを見守る僕も手に汗を握る。
DVD特典には森田のインタビューが載っている、いわく「文字」と「字幕」に主役になってもらった理由。
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迷惑メールの削除とBL登録が朝のルーティン。毎日忙しい。
実は、我が家の近くの高速道路のパーキングで、殺人犯の夫婦が逮捕されたことがあるのです、それは北関東でSNSで呼び出した女子高生を死なせた夫婦でした。
今やこんなふうに、残念ながらメールもSNSも、凶悪犯罪の落とし穴や 詐欺グループの仕掛ける罠の非常に危険なツールとなってしまった。
時速200キロですれ違い、お互いのhonesty をハンカチで確かめ合った二人だったのだが、あの映画史に残るだろう美しいシーンは、あの速度のまま最早人と人との信頼関係の世界から通り過ぎてしまったと思う。
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手紙フリークの僕は小中と20人ほどと文通し、結婚した妻にもたくさんの手紙を書きました。
トム・ハンクスとメグ・ライアンの「ユー・ガット・メール」は残念ながら期待はずれ。
その映画の元ネタとなった「桃色の街」も文通のシーンがまったく希薄でがっかりだった。
しかし「ユー・ガット・メール」に2年先駆けて作られた本作「 (ハル) 」は、文字になった人間の言葉がしっかりと言霊を持って往復しており、二人の男女も主人公。
そして二組の私信の文字が主人公。
往復書簡のやり取りが主人公だったのだと思う。
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【きりんの自分語り】
せっかく思い出したのでメモ
《ハンカチを振るシーン》良かったなぁ。
思い出したっけ、うちの子を連れて近くの山に登ったとき、時間を決めて、うちの玄関先で妻に白いバスタオルを振ってもらったんだ。
携帯電話など無かった時代。
山の展望台からそれが見えたときのえも言われぬ感激ね。
もういいのにいつまでもタオルを振ってくれていた妻が、遠くふもとにいた。
2021年10月18日
iPhoneアプリから投稿
中国語教室に通うハル、ストーカーに追われながらも職を転々とするほし。互いに独立した人生があり、本人の成長もある。依存したり、もたれあったりする訳でもない。会わないからこそ成り立つ構図、純粋な恋愛論が繰り広げられる。ネットを介してふたりに引力が働き交錯する。新幹線から互いにハンカチを振るシーンは、彗星に遭遇するが如く貴重で美しい。