ハリーとトントのレビュー・感想・評価
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じんわりとくるロードムービーの傑作
旅をする老人と猫。
それだけの映画ですが、なぜこれほど人の胸を打つのか。
普遍的な人間の悩みや問題を上手に見せていき、孤独な老人も猫に語り掛けるという手法で、身の上や心理を語ることができる。
猫は重要なアイコンで、近年でいえば、「ロスト・バケーション」でブレイク・ライブリーがほぼ一人芝居に挑戦しましたが、途中、遭難して飛べなくなったカモメが話し相手になるシーンがあり、主人公の心理が巧みに語られたのです。
当時、一人暮らしで、言い知れぬ孤独を抱えていた私は、この作品にえらく感動したものです。いまとずいぶん感受性が変わってしまったな。
自然体の明朗お爺さんのロードムービーにみる男の晩年
落ち込むことを知らない明朗お爺さんと一匹の猫の異色のロードムービーの佳作。ポール・マザースキー監督の丁寧で落ち着いた演出タッチが、主人公のユーモアとペーソスを上品に引き出している。そのお蔭で主演のアート・カーニーはアカデミー賞を受賞する。ハリーが旅先で出会う地方色豊かな人物たち、家出娘ジェシーや老カウボーイのカールトン、ネイティブアメリカンの酋長ツー・フェザーとのふれ合いが淡々と描かれている。特に劇的で刺激のあるストーリーではないし、そんなシーンも無い。敢えて挙げれば、若い女性とのランデブーくらいだが、ここは微笑ましいユーモアが上回る。社会から爪弾きにされても独り自然体で人生を送るお爺さんハリーから見たアメリカの姿。変化する社会にあって、男の晩年は普遍的に明るくはない。そんな不名誉な常識にカツを入れるような好感度高いお爺さんの数少ない模範例。
1976年 10月16日 高田馬場パール座
諸行無常
72歳の元教師ハリーと黄トラの猫トントの訳ありロードムービー。
冒頭からのエピソードで年寄が苦労する話に思え気が重くなる、不景気の時代なのだろう人間関係もせちがらくあまり感情移入できず退屈なのでなんで猫が出てくるのか考えてみた・・。
ロードムービーは色々な人との出会いがテーマとなる、一人旅より猫がいることで初対面でも相手の警戒心が薄まる効果はあるのだろう。時間繋ぎや転換のきっかけにも使える。特別な猫でなく平凡な黄トラであれば役者を食うこともない。したがって猫や犬は脇役として重宝なのだろう。思い出をなぞりたがるのは先の見えた年よりの行きつきそうな既定路線、老親が子供たちを訪ねるシチュエーションは小津監督の名作でもあるし、止せばいいのに昔の恋人まで訪ねてしまう、予想通り落胆の方が大きいのも古今東西、相場なのだろう、暗い話になりすぎると考えたのか、陽気な娼婦、奇妙なセールスマンやインディアンまで出してコメディ風に味を加減するのだがトントも虹の橋を渡り孤独老人の行く末やいかにと思ったら猫好きの老婦人からラブコール、トントそっくりの野良ちゃんまで出てきてなんとかほのぼの風でエンディング。この時代にこの手法を編み出した点は買いですが心の揺らせ方が実に雑な脚本でありました。
かはいふ人にわたしはなりたひ
老人が出てくる映画は、
最近までは自分の両親を思い浮かべながら見ていたけれど、今は自分の姿をそこに発見するようになったな。
この映画の面白いところは、年寄りは年寄り同士でこんなにユニークな会話を交わしていたのだと知ること。
中年後期の自分は、若者たちの独自の語彙や言い回しをいつも驚きながら耳にして、彼らの最先端の感覚を時には真似して取り入れていたものです。
でもね、「ハリーとトント」で交わされるシニアたちの生きざまが今はスッゴく新鮮!
あんなふうに語り、あんなふうに立ち止まり、そしてあんなふうにベンチに座ってみたい。
未知の世界に向かう冒険旅行の前夜の気分です。
だから“同行者”として僕もハリーの旅に連れて行ってもらう、“僕のロードムービー”って感覚になってくる。
小道具、鞄、ピアノにタップダンス・・
ストーリーも画質も枯れていて、アナログレコードを真空管で聴くようなフィーリングかな。
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猫のトントがいい子。
僕も昔は黒猫ばかり7匹飼っていました。
ロードムービー
「資本主義め!」とか『警部アイアンサイド』の話題とか、アメリカ人らしくないアメリカ人のハリー。ユダヤ人らしいジョーク。ひねくれ者という言葉がピタリと当てはまる。飛行機ではなくバスやヒッチハイクで旅するロードムービーだったけど、結婚もして子どももいる老人の奥深い人生観にはあまりのめり込めない。
昔の恋人を訪ね、ダンスをするシーンもいいが、ラストに死んだトントに語りかける侘しさと、海岸で少女を見つめる姿が印象的。
午前十時の映画祭
ラインナップに興味はひかれつつ、朝起きが苦手な自分は数年来パンフレットをただ眺めていただけだったのだけど、今日奇跡的に用事もなく早起きできたので観てきた!
たま〜に早起きして午前中有効に使えると早起き最高じゃん!って思うんだけどなかなか習慣づかないんだよね。
レトロ感ある映像と音楽が良かった。
あとはなんといっても、トント可愛すぎ×100。
トントが画面に映るとトントを追うことに目が必死で字幕が全く読めません。本当にトントが可愛すぎ×100000000000。実際もすごくおりこうな猫ちゃんなんだろうなあ。
内容自体は、う〜ん、起伏に乏しく、抑制された感じ、つまらないわけじゃなくて、なんというか、年齢を重ねるごとに思い出すと味わい深くなる映画っぽい。私には評価をつけるのはまだ早いような気がします。早めに観たので、熟成させていきたいです。
ただちょっと長かったな。
自由に生きること
老人ハリーと愛猫トントとのロードムービー。
ハリーが旅とその道中で出会った人々との出会いを通じて、自らの人生を振り返る。
周囲の人々に迎合せず、また、頼ることもせず、自分とトントとを中心に自由に旅をする様は、私に「生き方」について考えさせてくれるチャンスを与えてくれた。
まだ若い私にとっては理解しがたい場面もあったが、学生の内にこの映画に出会えて良かったと思う。
よかった
20年前くらいにレンタルビデオで見て以来、初めてのスクリーン鑑賞。気難しいおじいさんが猫と暮らすような内容だったような気がしていたけど、全然気難しくなかった。長男の嫁に気遣いしていて、むしろ調整役をしていたくらいであった。
老後の事を考えると暗い気分にしかならず、ハリーのように海の近くで安息に暮らせたら素晴らしい。
旅の途中で出会う人々が善良すぎる感じはあった。もし自分がヒッチハイクなんかしたら悲惨な目に会うことしか想像できない。ファンタジーに近いものとしか捉えられない。
顔力と嫌々
まず私が古い映画を見慣れてない、という点は先に言っておかなければならないかも知れない。
私は最初、今作の評価は星3つだった。
しかしレビューを書くためにハリーの行動の数々、シーンの数々を思い起こすにつれ、あれ?あのシーンも好きだぞ。あのシーンも心に残った。と、いつの間にか星は4にまで上がっていた。
どうやら私はこの映画が好きなようなのだ。
そしてどうやらこの映画は世にいう「スルメ」映画なのだ。
ハリーはあまり否定をしない。
誰の考えも行動も受け入れる。
ひったくりと強制退去された時ぐらいだろう。怒りの感情を見せたのは。ハリーは自分の居場所を奪うものには敢然と立ち向かうのだ。
そしてハリーは自分の居場所を探すために信念を曲げない。
ハリーの強さは憧るものであると思う。
あと映画の見どころとしてはアート・カーニーの顔力とトントの抱っこをされてるときの後ろ足の「嫌々」。
ハリーとトントが心で繋がっているのが伝わりつつも、ベッタリではない辺りも好感のもてる点だろう。
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