「戦争をブラックユーモア満載で皮肉たっぷりに描く!」博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争をブラックユーモア満載で皮肉たっぷりに描く!
まず本作で一番驚くのは、邦題があまりにも長いことでしょうか。それだけでもこの映画が以下に変わっているかが分かります。
司令官ジャック・リッパー将軍が精神に異常をきたし、ソ連への水爆攻撃を命令してしまい、ソ連側が保有している核の自爆装置は水爆攻撃を受けると全世界を破滅させてしまうという、とんでもないがありえそうな物語です。
たが本作は完全にコメディタッチなのです。会議室の場面がホント皮肉たっぷりなコメディ具合。水爆攻撃を機にソ連をつぶそうと考える将軍ですが、大事な時期に愛人から電話がかかってくるという緊張感の無さ…。危機的状況であろうともいがみあう両国の代表者で、冷静と思われる大統領同士の電話でさえコミカルに描かれるというブラックコメディ具合です。
そうなんです、何十億人いや地球人類の全ての命は、この緊張感が無い人間達に握られているという驚愕のシーンなのです。映画の冒頭では、アメリカ空軍が「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」とコメントが入るのだが、映画のノリからするとそれさえも風刺と思えてしまう程です。
ストレンジラブ博士による、世界が破滅した後の人類の生き残り計画がこれまた突拍子もない。選抜された男性と性的魅力のある女性を1:10の割合で地下の坑道に避難させ核が消える100年後まで生き延びるというもの。妄想かも分からない計画に、権力者達は魅力高い女性が多いという事実に喜ぶ者まで出る始末です。いや~呆れてしまいますね。
その直後に淡い曲と水爆のきのこ雲の連続するシーンが映し出され、なんとも言えない気持ちで映画は終わってしまうのでした。これから核戦争がはじまってしまうんだと言わんばかりに…。
ちなみにラストシーンでは、ソ連の大使館が会議をカメラで隠し撮りしているのですが見つかってしまい、パイ投げが始まるというラストも撮られていたみたいなのです。水爆シーンの中、パイ投げ…。さすがにブラックユーモアの度を過ぎたと感じたのか、カットされたようですね。
両国の権力者のドタバタをよそに、命令のために意地でも水爆を落とすため命を懸け水爆と一緒に落ちていくキングコング少佐の姿が妙に印象が残る映画でありました…。