「人間愛、人生愛、映画愛の最高傑作」ニュー・シネマ・パラダイス ともきちさんの映画レビュー(感想・評価)
人間愛、人生愛、映画愛の最高傑作
人間愛と人生愛と映画愛が三位一体となった最高傑作です。
その上、音楽も素晴らしい。テーマが流れてくるだけで鼻がツンとしてしまいます。
こんな作品は他にありません。
この映画館に出てくるお客は皆やかましくて汚らしいです。
でも泣いたり笑ったり囃し立てたり、とにかく感情に素直で自由で羨ましい。
こんな風に映画館で自由に感情を出せたら、すごく楽しいだろうなあと思います。
今の映画館じゃムリでしょうけどね。
だから爆破されて潰れ落ちる瞬間はとても哀しかった。
この映画館で観たであろう「夢」とか囁かれた「愛」など、大切にしまってあった宝箱が壊されるような痛みを感じました。
今回観させてもらった三軒茶屋シネマさんも7月20日で閉館。感情が入っちゃいました。
登場人物で一番いいのは、なんといってもアルフレード。学はないけど、トトに人生を教えます。
そんなアルフレードがトトとエレナの仲を引き裂くようなことをするのはなぜでしょう。
俺の考えでは、そのヒントはアルフレードが語ったお姫様と兵士の物語にあります。
兵士は99日間も窓の下、満身創痍で耐え抜いたのになぜ立ち去ったのか?
アルフレードには分かっていたのです。
トトの並々ならぬ映画愛と才能、だからこんな田舎町に縛られてやがて消える映画機械技師でいてはいけないこと。そして今は甘い二人でも、貧乏暮らしが台無しにするであろうことも。
それなら淡い初恋と生家の温もりは思い出としてとっておき、新しい世界へ行って自分の将来へ賭けなさいと導いているのです。
そしてそれは「ノスタルジーに囚われてはいけない」という言葉に表されたのです。
この言葉は我々観客の人生に向けたメッセージですが、同時に映画業界への警鐘でもあると考えています。
「ただ懐古主義で昔を懐かしんでいるだけではダメだよ。慣れ親しんだものを捨ててでも変わりなさい。変われなければ廃れますよ。」と。ここに映画への深い愛情を感じるのは俺だけでしょうかね。
ただ俺は懐古主義は好きです。
だからアルフレードの言葉をちょっと変えさせてもらうならこんな風にします。
「ノスタルジーに囚われてはいけない。ただ愛するだけがいい。」