劇場公開日 1989年12月16日

「監督の作家性が溢れ出ている」ニュー・シネマ・パラダイス ぽぽさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0監督の作家性が溢れ出ている

2025年1月10日
PCから投稿

・2時間版を鑑賞。3時間版も鑑賞して違いを知りたい!

・劇場爆破が「海の上のピアニスト」を思い出し、一層切なくなる。トルナトーレ監督の物語には究極に不幸な登場人物が出てこない(むしろ素敵な仲間や恋人、家族に恵まれ美しい風景の中で暮らしている)。しかし、観客の胸を絞めつけ感傷的にさせるという作家性の持ち主だ。

・アルフレードの「この地は邪悪だ」「ここにいると自分が世界の中心だと感じる」「帰ってくるな」「郷愁に惑わされるな」などのトトへのセリフが沁みる。狭い映写室から映像上の世界を見続けてきたアルフレード。トトには自分の足で外に飛び出し自分の目で広い世界を見てほしいと、息子同然の愛弟子を断腸の思いで手放してしまう。駅での別れのシーンでは、皆が最後までトトを目で追うのに、アルフレードだけが目を背ける。

ここで「サライ」が脳内再生されるのは私だけ?「遠い夢すて切れずに 故郷をすてた 穏やかな春の陽射しが ゆれる小さな駅舎」♪インターネットは無く電話も交通手段も不充分な時代。当時は夢を追って出るか、夢を諦め残るかの2択しか無いんだよな…。

ところが神父さんが遅れてやって来て「間に合わなかった」とおとぼけをすることにより、切ないシーンに少し笑いが生まれる。トルナトーレ監督作品って、全体を通じての美しさの中に、小粋さが盛りだくさん!センスの塊で、本当に大好きな監督だ!!

・最後の切断したキスシーンの総集
映画には検閲や映倫などの逆風が常にある。映画産業の衰退という荒波にも負けるなというアルフレードからのメッセージ。また、お母さんの「本当に愛してくれる女性と落ち着いてほしい」という言葉にもつながってくる。これ以上のラストってあるだろうか?ああ、本当にすごいセンスとしか言えない…。

ぽぽ