「年齢を重ねた村人達の表情がステキでした」ニュー・シネマ・パラダイス greensさんの映画レビュー(感想・評価)
年齢を重ねた村人達の表情がステキでした
名作と言われる本作品。「泣ける映画」という世間のイメージに何となく圧倒されてしまい、これまで観たことがありませんでした。もったいないことをしました笑
今回映画館でリバイバル上映されると知り、今更ながらですが鑑賞してきました。
あらすじはレビューでもあちこちでのウェブサイトでも紹介されているとおりですが、個人的には、主人公のサルバトーレ(トト少年)が村を出て映画監督となり、30年たって帰ってきた時、取り壊し目前の映画館「パラダイス座」前に集まった村人たちの年齢を重ねた姿・表情がとてもステキで印象に残りました(登場人物が年齢を重ねてゆく様子を描いた作品は他に色々あると思いますが、その表情やたたずまいの移ろいを味わい深く描いた作品は、自分にはちょっと他に思い当たるものがありません)。因みに作品中では、登場人物たちの子供時代、青年期、壮年期、老年期と、違う俳優さんが演じている場合もあれば、一人の俳優さんが演じている場合もありますが、どちらの場合も素晴らしかったです。異なる俳優さん演じている場合としては何といっても3人の俳優さんが少年時代から壮年期までを演じた主人公サルバトーレですが、30年経って村に帰ってきた表情には少年トトをふと思い出させるような表情があって、一人の人物を異なる俳優さんが演じつないでいることに感動しました。
特に私個人としては、トトの母親役が素晴らしく感じました。戦争未亡人となって懸命にトトを育てている若い時代、村に帰ってきた息子を優しく迎える年老いた時代、それぞれを2人の女優さんが演じていましたが、どちらも味があって素晴らしかったです。
作品中で、夫の帰りを待っていたトトの母親が、夫が還らない人となったことを知って悲しむ場面があります。そういえば、戦争の時代にはどんなに待っても戦地から帰らず、二度と会えなくなってしまった家族が沢山いたんだな…と思い、ハッとしました(作品レビューは書いていませんが、「ラーゲリより愛を込めて」もそういうストーリーでした)。今の平和な時代なら、例えば自分なら、会いたい人に会おうと思えば、本人の連絡先さえ分かれば電話とかメールだってできるし、会いに行く。もちろん連絡先が分からなければ待つしかないけれども、苦しくても最後に会えるなら、トトの母親のように、会える日を信じて10年でも20年でもずっと待ち続ける、その気持ちは分かります。どんなに待っても、会えれば、待った時間の苦しみは全て一瞬で吹き飛ぶはずです。•••でも、戦争の時代は待っても待っても会えないことがあったわけなので、胸が痛みました。今の時代に生きていることにもっと感謝しないといけないな、と思いました。今も世界では紛争が絶えませんが、これからも、戦争にまつわる悲しみや寂しさを味わう人が出来るだけ生まれないことを祈る気持ちです。
たまたまこのところ、戦争にまつわる映画を3本続けて観たからか、たくましく懸命に生きるトトの母親の姿を見ながら、そんなことが心に浮かびました。
戦争未亡人のトトの母親に話題が少々偏りましたが、本作品は、俳優さんたちの素晴らしい演技のおかげで、年齢を重ねることの味わい深さを感じる作品でした。また自分自身が年齢を重ねて5年後、10年後に観てみたら、どんな風に感じるのか楽しみです。