「玉手箱が開く時、過去の大切な贈り物が蘇る。」ニュー・シネマ・パラダイス とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
玉手箱が開く時、過去の大切な贈り物が蘇る。
日本の浦島太郎はお爺さんになったけど、イタリアの浦島太郎はこれからも歩み続ける勇気を貰った。
温かいものがこみあげてくる。そしてそれは涙になる。
悲しいんじゃない、憐れみでもない。自分が愛したもの、愛していてくれたもの、そんなものに改めて出会えた喜び。
「自分を愛せ。子どもの頃映写室を愛したように」アルフレードが言う。
映画好きにはたまらない。トーキーもちらっと出して、映画の初期から、TVの普及により映画の存続が危ぶまれた時代を駆け抜ける(結局、閉館した映画館はあるものの、映画そのものは衰退していないけどね)。映画が皆にどれだけ愛されていたか、街の人々の生活を織り込みながら話が進む。
別に、時折映画中に上映される映画について知らなくてもいい。映画の中の観客と同じ思いで映画を観た人ならば、十分その世界に入っていけるはずだ。締めだされてのブーイング。トトと同じキラキラした目で映画を観られればそれで、貴方はその世界の住人になれる。加えて、「へえ、トーキーってこんな感じだったんだ」「フィルムってこんな感じだったんだ」と当時の世界に浸れれば十分。
その物語を引っ張っていくのは、学歴はないけど人生の知恵が詰まった老映画師と、映画が好きで好きでたまらないトト。特に少年時代、あそこまで好きになれるものがあるってうらやましい。そして誰もなりたいなんて思わないだろうと思いつつ、密かにプライド掛けてやっていた仕事に、憧れてくれる小さな存在を知る。こんな幸せなことがあるだろうか。しかも、師と弟子のような二人を、悪ガキの友達にも見えるような描写(ex小学校卒業試験)。たまらない。一つ一つの当時の描写が丁寧に紡ぎだされる。
久しぶりに帰った故郷。浦島太郎。喪失感。基盤を失った気分。故郷は遠くにありて思うもの?
そんな気分に包まれている時に出会うあのラスト。
アルフレードは「帰ってくるな」と言った。「帰ってきても会わない」と。だとしたらあのフィルムはトトの為に取っておいたものではないのかもしれない。とうに捨てられたと思っていたのに大切に保管されていたもの。扱い如何によっては事故につながるのだから、いかにアルフレードが大切に扱ってきたのかが一目瞭然。しかも、上映できるように、繋ぎなおしてある!映写室・映画館での思い出があぶりだされてくる。それを大切にとっておいたアルフレード。
原点回帰。大切な人との思い出。それはトトにとっても、アルフレードにとっても。
そんな想いがグチャグチャになって、突き上げてくる。熱い思いが涙となる。
人生のいろいろな想いが押し寄せてくる、それでいて温かい気持ちに包まれる映画です。
編集の素晴らしさと怖さを知った作品です
ショートバージョンを最初に見ました
ノスタルジーです
でもロングバージョンは重なる愛でした
1つの作品でこんなにも違ったイメージを持つものに出会ったのは今のところこの映画しかありませんでした