「One of the most」ニュー・シネマ・パラダイス いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
One of the most
『午前10時の映画祭』にて鑑賞。
“郷愁”と言う言葉を映像化したものは数多くある中で、日本語としては矛盾している有名な慣用句である“最も郷愁を誘う映画の一つ”という冠がピッタリな作品なのであろう。自分としては“スタンド バイ ミー”の方に軍配を揚げるけど・・・
余りにも有名すぎてこれ以上の“映画”という芸術をメロディで具現化したものはないであろう劇伴曲を得た時点で今作品の価値が決まったも同然である。実は内容としては凝ったものではなく、映画好きな少年が体験した様々な記憶の中での成長をドラマティックかつメランコリックに紐解くという内容である。今作品は幾つかのバージョンがあることが鑑賞後に知ったのだが、だから消化不良のところがあるのだと合点がいった次第である。詳細な荒筋はもう有名過ぎて今更語るのも野暮であるから割愛する。
とにかくイタリア映画らしい、演者の人達の顔の表情の豊かさには目を見張るモノがある。喜怒哀楽以上の複雑なイメージをきちんと分かり易く表情に乗せている点は素晴らしい。かなりの高度な演出が、作品自体を生き生きとさせていることに凄みさえ感じさせる。いわゆる“メタ”映画としての作りは、多分今作品がきっかけだったのではないだろうかと思う程、周到に練られたストーリーでもある。そして古い良き時代の常套である、伏線やと回収、フリとオチのお約束も又安心感を与えるものだ。もうスレッカラシの自分なので涙を流す程の感動を生み出せない劣化が著しいので、ラストの検閲されたシーンの繫ぎ合せの映像に対してはそのベタさに微笑ましさの感情が勝ってしまったので涙腺は動かなかったが、ほっこり感には包まれた。イタリア映画の底力を見せつけられた作品である。