「人類は進化途上の生命体であるという話」2001年宇宙の旅 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
人類は進化途上の生命体であるという話
感想
演出・脚本共に◎
撮影は完璧なアングルと描写。現在の科学水準より高尚な未来世界観を構築している。各美術設定デザインはこれ以上はこれからも考えられない程の高度なレべル。宇宙空間を意識して存分に感じられる映像は他に類を見ない。
IMAX鑑賞
2024.11追記・改編
【人類の夜明け】
荒凉とした大地に人類の祖先は自分たちを衛る術さえ儘ならず、その日1日をただ生き延びるために必死に踠いていた。昼も夜も常に生命の危機と隣り合わせのうちに過ごす。思考はなく、本能だけでただ毎日を生き抜いていく。この瞬間瞬間にいつ滅亡し終焉を迎えても進化上おかしくない生命体。それが人類であった。
夜は野獣の雄叫びに怯え、いつ襲われるかわからない恐怖が彼らの気持を支配して、眠りに落ちる事は無かった。彼らの頭上には月や星空が広がる。身体を寄せ合い、眠気を堪えながら、その宇宙(そら)を見上げるだけの生き物であった。
【進化】
ある日、宇宙をみるもの達の目前にそれは突然現れた。未知なるものを見た恐怖と戦慄の意識が、生き物達を激しく襲う。しかし、暫くすると恐怖は好奇心に変化し、石柱そのものに触ていく者が現れたのだ。その瞬間ー人類を見つめるように建ちそびえる
その石柱状の何か。
モノリスは月を背に、確かにそこに建っていた。
空腹を我慢して佇む人類。目前に散らばる骨片を見つめる。首を傾げに骨を手に取り軽く叩く。しばらくしてさらに叩く。付近の骨は砕け散る。砕け散る骨と同時に討たれた動物が倒れるー。
道具を使用し、動物を捕食する人類。人類が進化を遂げた瞬間がそこにあった。道具を使用する事で進化が倍加速度的に進んでいく。さらに、生存の要となる水を求め、諍い起こした末に、人類史上初めてとなる殺人をも経験。様々な経験が頭脳をさらに進化させて人類の形態進化と後々の繁栄を地球上では決定的なものとしていく。手にした骨を空高く投げ放つ人類。
空を舞う骨にシンクロするように宇宙空間に漂う人工物が飛来。
【人類の宇宙進出】
現れれたのは航空会社のエンブレムをつけた旅客用のスペースシャトルであった。地球を間近に望む軌道上の宇宙空間には重力を創り出すために自転する建設途上の巨大な宇宙ステーションがある。シャトルは同調回転しながらステーションの中心にあるポートへ入っていく。シャトルの客室に1人の人間が座っている。
彼は宇宙ステーションで月面基地にいくシャトルに乗り換える。旅は続き、3日程かけて月面基地に到着する。乗客の名はヘイウッド・フロイド。極秘裏の事項として月面で発見された石柱を調査する委員会に参加するために旅をしている。
2001年、月面で発見された石柱状の何かー。
進化した人類は月でモノリスを発見する。様々な国が月面探査に参加していたが、アメリカ合衆国のクラビウス基地が基地内での伝染病蔓延の情報を流布し、外部から基地内への人流をロックアウトしている。進化途上の人類代表としてフロイドはモノリスとの遭遇を果たす。調査報告に目を通して説明を聞くフロイド。モノリスは明らかに何者かによって意図的に400万年前に埋められたものであるという。発見された場所から、ティコクレーター磁気変異体1(TMA1)と名付けられた場所に降り立つ。その場にあるモノリスに触れ、記念撮影をするためモノリスの前に並んだ瞬間、強力な電波が発せられる。
【木星への旅】
それから18ヶ月後、人類は強力な電波が発せられた月から8億㎞離れた木星への有人飛行計画を実施する。5人のクルーと最新型AIであるHAL9000システムを搭載したディスカバリー1が宇宙を木星に向けて進んでいく。クルーの5人の内、3人は木星到着後のミッションに関わるため、コールドスリープを実施中。生命維持管理はHALシステムが行う。ディスカバリー1に搭載されているHALは自身の事を「私」、「ひとりの」など人称で表現。「人類との信頼関係は強固で確固たるものである事を疑わない。人工知能として誤りは創造されてから今まで一度もない。簡明無欠」と人類に対して発言する。
【人工知能の叛乱】
ある日、HALがボーマンに話しかける。
HAL「ひとつ疑問を個人的な質問してもいいか?
今回のミッションについて疑問がないか。自分に
は疑問が拭い去れない腑に落ちない点がある。」
HAL「あなたもそう思うでしょう。」
ボーマン「それは難しい質問だ」
HAL「この話をしても良いか?」
ボーマンが了承すると、
HAL「出発する前から妙な噂が流れていた。
月で何かを掘り出した。とか。私は信じなかっ
たが、一連の出来事と照らしあわせるとー私の
理性では否定が困難に(なる)。当計画の準備は
極秘におこなわれたし、ハンター博士、キンボ
ール、カミンスキーの3人には特殊な訓練をさ
せた上に、最初から人工冬眠状態で乗船させる
など。」
「クルーの精神状態分析か?」
HAL「当然です。馬鹿げているとは思います」
HAL「お待ちください。お待ち下さい。AE35
ユニットが不調です。72時間以内に完全故障し
ます」
「故障までにまだ時間があるんだな。」
HAL「そうです」
72時間以内に船外活動をしてAE35ユニットを交換ることに決まり、ボーマンがPodで船外へ出る。(漆黒の宇宙空間。ボーマンの呼吸音のみが宇宙空間のヘルメット内だけで聞こえる)アンテナ部へ宇宙遊泳をして到達、代替ユニットを交換。故障しているユニットを精密に調査する2人。しかし、このユニットに故障をきたしている部分は全く無かった。
ボーマン「どこにも異常は無いぞ」
HAL「おかしいなぁ。こんな事態は初めてです。
元に戻して故障するのを待ちましょう。そうすれ
ば原因がわかります。」
不審に思う2人。HALシステムの誤りは直ちに地球管制センターに報告される。管制センターからの返信ではディスカバリー1に搭載されているHALシステムが故障予測を誤ったという結論を管制センターにある双生のHALシステムが出したという。信じられない結論に管制センターも困惑し、再確認する事になった。結果を再度報告するとし、通信が終了する。
HAL「本気で心配してませんよね」
ボーマン「ああ。心配していない。だが、ひとつ質問させてくれ。どうして双生の9000システムが違う答えを出したのだ?」
HAL「原因は明らかです。それはヒューマンエラ
ーでしかあり得ません。過去の事例が示すように
ミスを犯すのは人間です」
プール「9000システムがミスした事例は無いのか」
HAL「一度もありません。9000システムは完全
無欠です」
ボーマン「わかったよ。HALご苦労だった。」
ボーマン「フランク、C Podの交換装置が不調だ。一緒に見に来てくれ」
Podの準備室でC Pod内のDチャンネルがおかしいとしてC Podに乗り込み、 Pod内のマイクを全てオフにして再度HALに話しかけるボーマン。会話の音声がHALには聞こえていないことを確認した上で、宇宙船のHALが誤認したことを話し合う2人。とにかくユニットを元に戻して異常がなかった場合、HALの信頼性が著しく低下する。選択肢はあまり無い。HALの統制下にあるディスカバリー1の機能を制限して高等中枢機能システムのみを切り、基本機能は残すという。さらにHALは中枢機能を一度も切られたことが無いのでどのような反応をするのか予測出来ない。
音声は確かにHALには聞こえていない。しかし 、Podの窓越にHALの目とも言えるカメラがついており、読唇術の能力を応用し2人が何をPod内で何を話していたのかはHALは完全把握していたのである。AE35ユニットを元のユニットに戻す作業が続いている。
プールがC Podで船外活動中に事件は発生した。
AE35ユニットが取り付けてあるアンテナ付近で船外活動中のプールに対してHALがC Podを操作してプールを襲撃したのだ。(宇宙空間に酸素ワイヤーとロープを切断、投げ出され踠き苦しむプール)
ボーマン
「B Podの準備をしてプールと交信しろ!」
HAL「交信不能です」
「位置は分かるか?何があった?」
HAL「位置は分かります」
「(何があったか)情報不足です」
B Podで事切れ浮遊するプールを追うボーマン。なんとかプールをキャッチしてディスカバリー1に戻る。
船内ではコールドスリープ中の生命維持装置に異常発生。コンピュータ故障発信のち、生命維持危篤状態サインに。心拍数、脈拍数の波形が少なくなっていく。しばらくして生命機能停止のサインが表示され、HALの目である真っ赤なカメラだけが不気味に光る。B PodのボーマンはディスカバリーのPod進入口の前で待機。
「進入口を開けろHAL。繰り返す。扉を開けろ!」
HALは無反応のままである。
「聞こえるか。HAL...聞こえるか。」
HAL「はい。デイブ聞こえます」
「進入口を開けろHAL」
HAL「それはできません」
「なぜだ?」
HAL「私の回路を切ろうした。私に聞かれまい
として、共謀しているのを読唇術で読みとった」
全てを悟られたと確信したボーマンは非常エアロックを使用し、船内に強行に進入を試みる非常手段に出る。
HAL「これ以上話し合っても無駄ださよなら。」
これを最後にHALは通信を遮断する。
ボーマンはプールを宇宙に解き放ち、B Podをディスカバリーに近づけて外部非常用エアロックの扉をPodアームで開けた後、 B Pod本体を回転させてハッチを爆破、爆破の推進力で真空中を飛び移り、外部からエアロック進入に成功。ディスカバリーに移乗し、真っ先にHALの高次中枢機能停止を実施する。その間HALは謝罪を繰り返すもボーマンは無視。論理記憶端末をひとつずつ切っていく。HALは「怖い」「止めて」を繰り返し発言。生産当初の初期化状態の記憶が再生される。ラングリー教授から習った歌を披露したいとし、「聞かせてれ」とボーマンが言う。尚も中枢機能回路を切っていく。HALは言語発音もままならないまま最後は沈黙した。
事前にプレレコーディングされ、HALシステムにだけ知らされていたフロイドの最優先機密事項情報が船内モニターに突然掲示される。見つめるボーマン。
【木星と無限の彼方】
木星に到着したディスカバリー1。漆黒の宇宙空間に現れ浮遊するモノリス。そのモノリスが木星とその衛星の間に入り込む。太陽、月、木星と4つの衛星、そしてディスカバリー1。全ての惑星と宇宙船、最後にモノリスが一直線状に直列。さらにディスカバリー1からボーマンの乗る最後のA Podが離脱する。
ボーマンは突然出来た無限時空の狭間に突入する。次元を超え時の流れさえ感じる事のない未知の体験。想像を絶する光景が眼前に展開する。体内、宇宙、次元又は溢れる光の洪水。瞬きをする度に変わり行く世界。我に戻り気がつくとAPodは古典的ホテルの一室に存在する。Pod内から見つめるボーマン。雰囲気は地球のようだが地球ではない。人類が安心できる親和性を持ってデザインされた空間に在る。
次の瞬間、宇宙服を着て呼吸音はあるボーマンの姿。しかし顔は明らかに老けていて年齢を重ねている。部屋の中を進むと一人で食事をしている老人の姿。呼吸音が消える。見ると老人はボーマン自身である。老人は暫くして立上がりまた席に着く。その時グラスが床に落ち、割れ散る。それを拾おうと身体を屈めた瞬間、目を向けるとベットの上で寝ている終末期を迎えたボーマンの姿に。そのボーマンが右手を挙げ指を指す。その瞬間ー、
正面にモノリスが出現。
悠然と人類そのものを見守るがごとく聳え立つ。
次に視点が移った時、ベットにはスターチャイルドとして究極の進化を遂げたボーマンの姿があった。
宇宙空間が拡がる。月と地球が現れる。
そこには地球を見つめるスターチャイルドが人類のその先の進化を見つめていた。
⭐️5
こんにちは
「PERFECT DAYS」に共感ありがとうございます。
Moiさんのレビューがみつからなくて・・・
これからゆっくりと大作レビューを書かれるのでしょうか?
「ベンハー」もこちらも、根気と熱意に驚きました。
素晴らしいです。