「製作50年以上経った今あらためて観ると、AIによる人間に対する反乱に強くリアリティを感じる」2001年宇宙の旅 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
製作50年以上経った今あらためて観ると、AIによる人間に対する反乱に強くリアリティを感じる
監督
スタンリー・キューブリック監督による1968年製作の米国映画。
原題は2001: A Space Odyssey、配給はワーナー・ブラザース映画。
2回目の鑑賞で、今回はprime video。
昔十代に映画館で見た時に、猿人が骨を投げ上げ、それが「美しき青きドナウ」のメロディと共に大スクリーンに浮かぶ宇宙船に繋がる映像の美しさ、知的な省略した飛躍の鮮やかさ(骨という道具の発見利用が、人類進歩の究極的成果である宇宙船に繋がる)、音楽と映像が共鳴する官能に、魂を吸い込まれてしまう様な感動を覚えたことは、今でも鮮明に覚えている。
画面の小ささからか2回目だからかは不明だが、今回は残念ながらそれは無かった。
ただ、1968年製作であるのに、宇宙船内のイス等の色・デザインの斬新さには驚かされた。特に、白い室内に映えるフランスのデザイナーであるオリヴィエ・ムルグによるという赤いイスの造形の白い宇宙船内部とのマッチングの素晴らしさには驚愕させられた。
そして、人工知能有するコンピューターHAL9000の人間に対する反乱は、相変わらず強く印象に残る。目の様な形態の赤いランプに意志を感じさせるキューブリッックの映像テクニックに凄みを感じた。乗組員の唇の動きから会話内容を知るHAL、それをコンピュータ視点で見せるのも上手い。
昔見た時は気付かなかったが、乗組員に嘘(木星に向かう目的等で)を突き通すことを強制されたことがHALのミスに繋がっていることが示唆されていて、脚本に感心させられた。人工知能AIに宿る心の様なものの存在、自分のミスを認められない無謬的性質、電源を切られてしまうことに対する殺人も辞さない抵抗、製作当時よりも現在の方が圧倒的に強くリアリティを感じさせられ、この映画が50年以上前に作られたことの凄さをあらためて実感。
ダグラス・トランブルによるという「スリットスキャン」による延々続く映像は、昔も今回も大いなる謎で、インターステラー等でオマージュされているせいもあってか、少し退屈でもあった。延々と続く自分には意味不明の映像だが、ネットサーチすると、宇宙の誕生から太陽系の形成、地球型の惑星の形成といった宇宙の歴史を、人類の進化を促す黒い石板モノリスをセッティングした高度な知的生命体が主人公に見せているということらしい。
ラスト、あの白い部屋の造形が何とも不思議で美しく、何処か懐かしくもあるが、解説的なものによれば、知的生命体が人類の進化のために設定してくれたという空間らしい。そして、ラスト主人公は老衰するが、進化した赤ん坊となって再生する。今回鑑賞でもそういったことは理解出来ずにいたが、人類の進化はいつか起こっても良いはずだから、納得出来るストーリー展開である。そして、人類を導く時間を超越した高度な知的生命体こそ、神ということか。キリスト教国米国らしい、神による人類の救いの映画なんだと理解した。
製作スタンリー・キューブリック、原作アーサー・C・クラーク、脚本スタンリー・キューブリック及びアーサー・C・クラーク。撮影ジェフリー・アンスワース ジョン・アルコット
美術トニー・マスターズ、ハリー・ラング、及びアーネスト・アーチャー、衣装ハーディ・エイミーズ、編集レイ・ラブジョイ、音楽アラム・ハチャトゥリアン、ジェルジ・リゲティ ヨハン・シュトラウス、リヒャルト・シュトラウス。特撮監修ダグラス・トランブル。
出演はケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダニエル・リクター。
> 目の様な形態の赤いランプに意志を感じさせるキューブリッックの映像テクニックに凄みを感じた。
> 乗組員の唇の動きから会話内容を知るHAL、それをコンピュータ視点で見せるのも上手い
そうそう。そうでした。上手いですよね〜。「そんな感じ」が、ちゃんとしますもんね。