「【暴力思想矯正映画かと思いきや、非人道的行為の数々を最後には許容してしまう、極北のエロティック&シニカル映画。ホラー映画と言っても、良いのではないかと思う作品である。】」時計じかけのオレンジ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【暴力思想矯正映画かと思いきや、非人道的行為の数々を最後には許容してしまう、極北のエロティック&シニカル映画。ホラー映画と言っても、良いのではないかと思う作品である。】
ー 誰でも知っている、この映画で、キーとして使われる「雨に唄えば」と「第九」。大昔にこの映画を観てから、「雨に唄えば」のメロディを聞くと、あの、作家の奥さんのレイプシーンを思い出すようになってしまった・・。ー
◆感想<初見時に、強烈に記憶に残っているシーン&内容に触れています。>
・アレックス達4人の悪童どころではない、暴力思想に支配された青年達”ドルーグ”がホームレスを棍棒で叩きのめした後に、作家夫婦の瀟洒な家に、”嘘を付いて入り込み”作家夫婦に「雨に唄えば」を歌いながら、悪逆非道の振舞いをするシーン。
奥さんの身体にフィットした赤い服を鋏で切り取り、夫を棍棒で殴りつける。
トンデモナイシーンが冒頭から続くが、瀟洒な作家の家の、白を基調にしたインテリアと、エロティック&バイオレンスシーンは、強烈である。
更に、彼らは翌日、再びある瀟洒な一軒家に忍び込み、白いペニス上のオブジェを老婦人に叩きつける。
ー 悪趣味な美術品と、アレックス達の悪逆非道振りが、妙にマッチして、独特の世界観を作り出している。ー
・アレックスのみが、逮捕され、”ルドヴィコ療法”を受けるシーン。眼を構成的に開かされ、定期的に目薬を差されながら、只管に残虐描写を見せられるシーン。
ー 大音量で流れる、アレックスの好きなベートーヴェンの「第九」。故に彼は、暴力シーンや、「第九」を聞くと、吐き気を覚えるようになるのだが、彼から本当に暴力思想が無くなったのであろうか・・。ー
・出所し、且つて暴力を振るったホームレスに会ったり、”ドルーグ”の仲間二人が、警官になっていて・・。
酷い暴力を受けたアレックスが逃げ込んだ家。そこは、且つて悪逆非道を働いた作家の家だった。車いす生活の作家(妻は、死亡している)からのベートーヴェンの「第九」による強烈な復讐。
ー この時点までは、アレックスへの因果応報映画として観ていた。だが・・。ー
・病院に収容されたアレックスは、一夜にして政府の”ルドヴィコ療法”の犠牲者として、祭り上げられ、大臣が詫びに来て、記者たちが多数訪れ、フラッシュを浴びせる中、大きなスピーカーが二つ持ち込まれ、大音量で流れるベートーヴェンの「第九」。
ー だが、アレックスは、「第九」に拒絶感も示さず、且つての悪逆な眼に戻り、大臣と肩を組んで、写真に写るのであった。そして、セックスシーン・・。ー
<スタンリー・キューブリック監督の
”人間の悪性は、簡単には変わらない”
と言う思想と、独特の美術が印象的な、エロティック&バイオレンスが横溢する、今から半世紀前の映画とは思えない、強烈なインパクトを持った作品である。>