劇場公開日 1972年4月29日

「暴力と官能に満ち悪が元気で栄える世界」時計じかけのオレンジ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0暴力と官能に満ち悪が元気で栄える世界

2021年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1回目見た時は何が主題なのかさっぱり分からなかったが、2回見てようやく解った様な気がした。ただ、見誤ってる可能性もなきにしもあらずだが。

老作家は神的なものを象徴するかの様に赤ワインを主人公に熱心に勧める。その結果、自殺衝動に駆られ死にかけたものの、最終的には、主人公アレックスは良い子からまた悪に舞い戻る。あれだけ酷いことを老作家や金持ち老婦人等にしたにもかかわらず。アレックスを嵌めた連中も警官になっていて更生したアレックスに暴行を加える。ラストではアレックスはずるい政治家と組み生活を保証され、善なはずの老作家の方が処分されたらしい。近未来らしいこの世界では、神が不在であり、どうやらこれが主題の一つであるらしい。

ただ、神の存在は無くても、ベートーヴェンの芸術、暴力と官能に満ちたその音楽は素晴らしく、政治家もアレックスもかつての仲間達、復讐する老人も活力に溢れ、輝いている様にも見える。暴力にエロは、清く正しく教条的なものより芸術的で、圧倒的に魅力もあり、神の不在こそが、そういったヒトを惹きつける芸術性を創り出す。キューブリックの挑戦的なメッセージを聞いた気がした。

Kazu Ann