「凶暴な幼児が性欲と暴力に溺れる」時計じかけのオレンジ akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
凶暴な幼児が性欲と暴力に溺れる
人間の本能剥き出しとも言える作品だ。製作当時からして近未来。ずっと主人公アレックスの一人語りがストーリーを説明してゆく。簡単に書いてもこんな話しだ。
よくわからないミルクバーでくだをまく若者四人組。このミルクバーのシーンはこの映画の奇妙な雰囲気をもっともよく表している。彼らは無法者だ。完全に廃墟のカジノで、棒やナイフを持って喧嘩もする。町では、浮浪者の酔っ払い老人を袋叩きにし、深夜の田舎をスポーツカーで飛ばして、森の中の一軒家にたどり着く。シンギンザレインを唄いながら老作家フランクの家で暴れまくる。目鼻を隠したマスクをし、股間を守るサポーターをつけたユニフォーム。別の日、色々あって、猫屋敷で老女を殺し、味方から嵌められるアレックス。
ポリスに捕まったアレックスは、刑務所に入れられる。しかし、そこで模範囚を演じていた彼は、実験段階の更生プログラムを受けることになる。
この秘密の更生プログラムがかなりいかれてはいるが、説得性をもつ。まずこんな短期では洗脳は無理だろうとは思うが、わけのわからん薬物と内容が少ししか見えないモノクロ映画とマルコムマクダウェルの演技が暴力的な人間から反暴力的な人間への転向を信じさせる。ステージでの証明実験シーンも説得性がある。
ここまでが前半だ。政府によって洗脳された犯罪者一号になった彼は、暴力はふるえなくなっている。そしてルートヴィヒを聴くと吐き気に襲われ、無力になる。
出所した彼は、世間に放り出される。しかし、実家では、別の男が息子の地位を占有しており、両親から見放される。
包みをもってとぼとぼと歩くアレックス。港で浮浪者たちに復讐を受ける。さらに、警官になったかつての仲間から森の中で虐待を受ける。そして最後は雨の中、老作家フランクの家に正体を隠して迎えられる。
老作家の妻はすでにいなくなっており、用心棒のジュリアンが車椅子の作家をサポートしている。
身も心もズタズタのアレックスは、そ知らぬふりをして入浴し、パスタとワインを頂くが、老作家は、彼の正体を見抜いていた。ルートヴィヒの音楽で苦しみ抜くアレックス!
洗脳についての映画であり、犯罪者更生についての映画であり、暴力的な人間についての映画である。