「「私にはどうでもいいことだ。」」逃亡者 77さんの映画レビュー(感想・評価)
「私にはどうでもいいことだ。」
“冤罪によって裁かれた男が無実を証明する逃亡劇”という結構よくある題材ですが、かなり好きな作品になりました。
「医者の経験に基づいた機転」vs「保安官の経験に基づいた勘」でそれぞれの視点で真実に迫っていくのは最後まで緊迫感があったし、頭の切れる人同士の頭脳戦という魅力だけでなく、その二人のキャラクターがとっても素敵ですごく良かったです。
キンブルの自身の知識と経験を余すことなく臨機応変に使い分ける捜査はもうさすがの一言。
その中で優れた人柄が垣間見えるのがまたいい。(彼の人望あってこそできたこともありますし。)
フットボールの少年とのシーンは大好きな一コマです。
ジェラードはその“ボス犬”っぷりに痺れました。理想のボスです。
ジェラードの部下たちとのチームワークも絶妙でした。
キンブルのターンでハラハラ、ジェラードのターンでわくわく、作中ずっといい緊張感で観ることができました。
そんな二人の渋くて微笑ましいラストシーンは本作で一番好きな名場面です。
タイトルにもして、作中でも繰り返していた、ジェラードがキンブルに言った「私にはどうでもいいことだ。」はとても深くて重要な一言だと思います。
確かにキンブルが有罪か無罪かはジェラードの「脱走した囚人を捕まえる」という職務には関係のないことだし、
情や情報は線引きや取捨選択をしないと仕事だけでなく生きるのも大変です。
その人がどんな人であろうと赤の他人は普段の自分の人生において風景やBGMに過ぎなくて、
今日も広い世界のどこかで誰かが生まれてるし亡くなってるけど、そのほとんどを知ることすらない中、
自分に害または益がある可能性がでると途端に重要な登場人物になる。
ライトを当ててる部分が交差して初めて関心をもつ。
ある人の「全て」がある人にとっては「で?」とか「へー」でしかないのが世の中だったりする。
当たり前なんだけどその事自体の怖さと、そんな中で冤罪にかけられた場合の怖さを考えさせられました。
冤罪って決して物語の中だけの話じゃないし実際に苦しんでる人もいると思います。
キンブルのような場合になると、当たり前にできていた買い物ひとつ寝泊まりひとつが至難の業になって、その中で探偵も自分の力でやらなくちゃいけなくて、
非がないのに不便と孤独に苛まれてしまいます。
だから真相がだんだんニコルズに近づいていく時はやっぱりかーとおもいつつそれだけはやめてー!ってなりましたw
でもよくよく考えたら人間の世界には法や理性なんかの+@があるからこうなるだけで、
野生の動物たちは生きることがすでにキンブルの逃亡劇のようなサバイバルなんですよね。
生きやすいんだか生きにくいんだかわかりませんw
彼が改めてどんな罪でどのくらいの刑で裁かれるのかが気になります。
トミー・リー・ジョーンズもハリソン・フォードも40代(当時)の貫禄じゃありませんでしたw
渋くて素敵でした。