「タイトルなし(ネタバレ)」天国の日々 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
20世紀初頭、第一次大戦がはじまった頃の米国シカゴ。
鉄鋼所で上司を殴り飛ばして馘首された青年ビリー(リチャード・ギア)は、恋人アビー(ブルック・アダムス)とビリーの妹リンダ(リンダ・マンズ)とともに西部への列車に乗った。
麦収穫期のテキサス州で季節労働の麦刈り人の職を得た三人。
農園主のチャック(サム・シェパード)は、ビリーの妹と偽ったアビーに想いを寄せ、収穫期終了後にアビーと結婚する。
チャックが不治の病にあると知ったビリーの浅薄な打算の上での行動だった。
チャックの館で「天国の日々」のような暮らしを続けた一年、再び麦収穫の時期がやって来る・・・
といった物語。
初公開時にも観ているが、当時は劇場があまり良くなく、それほど感銘はしなかった。
冒頭の鉄鋼所から西部への描写の差異があまり見いだせなかったことや、シンプルすぎる物語のせいではないかと振り返れば、そう思う。
今回は、圧倒的に画質が良く、感銘は深い。
鉄鋼所のハスケル・ウェクスラーのカメラから、ネストール・アルメンドロスのマジックアワーでの撮影の差異。
列車での移動を挟んでの、その変化。
麦刈りを中心としたマジックアワーでの撮影の美しさはもちろんだが、時折挟まる晴天の画や小動物のアップも良い。
夜の収穫祭のシーンももちろん良い。
ストーリーのシンプルさ。
妹リンダのモノローグにより、神話的寓話的意味が深くなったことは大いに感じました。
なお、前作の処女作『バッドランズ/地獄の逃避行』との共通点もいくつか発見。
続けて観ると、こういうことがわかって非常にありがたい。
女性によるモノローグ(前作は一緒に逃げる恋人による)。
主人公男性の浅薄な愚かさ(本作のビリーに方が前作の主人公よりは幾分マシだが)。
冒頭の近代世界(本作では鉄鋼所、前作ではゴミ収集車の機械)。
年長者・年配者を傷つけての逃亡・・・
スタイルは出来上がっており、2作品撮って、その後、なかなか次作を撮れなかったのも納得がいくというもの。
アメリカンニューシネマでありながら、古典的神話的な映画。
70年代アメリカ映画で最重要な位置にある映画ということに首肯する次第。