「人間は半分悪魔で半分天使 そしてその生は儚く移ろいやすい」天国の日々 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
人間は半分悪魔で半分天使 そしてその生は儚く移ろいやすい
「品格」という言葉があります。かつて日本の大相撲の世界で「僕が横綱になれないのは外国人だからだ」と言ったある外国人力士に対して、一部の識者たちが言い放った「彼には品格が欠けている」に使われていた、あの品格です(英語メディアでは “elegance and dignity” と翻訳されていたと記憶しています)。ここにこの言葉を持ち出した理由はこの作品にまごうことなき品格を感じたからです。ひょっとしたら今の時代では実現するのが難しい種類の品格かもしれませんけど。
本篇はまるで美術館の絵画たちにオマージュを捧げたかのような美しい風景を背景に進みます。しっかりと描きこまれた背景の前で動く登場人物たちはどこか儚げで頼りなく、流されて生きている感じがあります。自然は美しいだけでなく、時として人間に牙をむく恐ろしいものなのですが、この作品で展開される浅知恵から始まった一連の出来事を見ると、そんな自然の下で展開する人間の営みなぞ、地球の歴史の前では塵、芥のようなものだと感じました。
この作品の内容を例えば小説で読むと、かなり陳腐なプロットで物足りなさを感じてしまうでしょうし、舞台演劇でやろうとしてもほぼ実現不可能、よしんば実現できても舞台という特性上、役者たちがオーバーアクト気味になって、人の儚さ、移ろいやすさをうまく表現できるのだろうかという疑問が出てくると思います。ところが、映画というメディアを通すと、こんなにも美しく品格のある作品を創造することができるーーということで、この『天国の日々』はきわめて映画的な映画、これぞ映画と言えるかもしれません。私の中では文句なしのフルマーク星五つです。
名も無き者への共感&フォローありがとうございます。
この監督は映像に特化してると思われますので、自分とはちょっと合わない部分もあるのですが・・イナゴのシーンには絶句、絶望感すら覚えました。