「魔法の時は永遠に・・・」天国の日々 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
魔法の時は永遠に・・・
『天国の日々』は完璧である。少なくとも、テレンス・マリックの監督作品群の中で。
作品の全長は93分であり、見事な均衡を保ちながら屹立している。つまり、全体が30分・30分・30分という三幕劇作法を緻密に体現する。要するに、作品の佇まいが美しいのである。一般的に指摘される映像や音楽の美に限ることなく。
物語は至ってシンプルであるが、それは人間の業を見据えるためである。リチャード・ギアとサム・シェパードの間のブルック・アダムスを巡る対立も、両者の異質な個性ゆえの衝突を生み出す。その解決は死を以て中和される。
ここには輝かんばかりの魅力が秘められている。つまり、人間の本性である。彼らの運命である。生まれながらに備えもつ魂である。
この作品は比類がない。
人を惹きつけ、人を動かす。
観る者の心に激しく訴える。
「あなたは、自らの生命をどのように全うするのですか?」
そのとき、テレンス・マリックなら、こう応じるのではなかろうか。
「私は、創造の限りを尽くし切った」
そして、姿を消した。それから、彼は伝説の存在となる。
けれども、その20年後、伝説は復活する。『シン・レッド・ライン』とともに。
テレンス・マリック、彼を〈天才〉と呼ぶ人々もいる。
しかし、私は、彼をこう認識している。
〈唯一絶後〉――として。
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