劇場公開日 2024年2月16日

「今のうちに、劇場で!」テルマ&ルイーズ 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今のうちに、劇場で!

2024年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

91年製作の米国映画。
2016年に、米国の国立フィルム・レジストリーに入ったことを汐に、同年カンヌでも再映され、リドリー・スコット監督自身が関わって4Kレストア版が作製され、2024年公開された。傑出した映画のデジタルライブラリー(4K)化は、米や台湾では公的に進められているが、はて日本では。フィルム保存の努力はよく聞くが。
この映画では、南部アーカンソーの仲良しの二人、ダイナーのしっかり者のウェイトレス、ルイーズ(スーザン・サランドン40歳台)と専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス30歳台)。二人で楽しい週末を過ごそうと車で繰り出す、旅先で出会った様々な出来事を経験するうち、二人は変わって行く。二人とも長身(サランドンは172cm、デイヴィスは178 cm)で、良く映えるし、目立つ。しかし、二人の弾け方は、それぞれに異なる。
ルイーズは過去のいきさつもあり、本来、持っていたものが、心の奥底から吹き上げる感じ。一方、テルマは、楽天家でやや浮気性、ただ不誠実な旦那に抑制され、家から自由に出ることも叶わなかったものが、外に出て解放され、一挙にタガが外れた感じ。何れにしても爽快感がある。あの心が解放されてゆくところを楽しむ映画か。フェミニズムの現れには間違いないが。
根底には、やや70年代へのノスタルジーが感じられた。
象徴的であったのは、66年型フォード・サンダーバード・コンバーチブル。最高のアメ車、しかし、乗り心地はともかく、マスキー法以前の車だから、排ガスも燃費も推して知るべし。室内でも喫煙し放題で、とても禁煙が進められていた90年代初頭の米国とは思えず、70年代の感じ。リドリー・スコット監督は、どうしてそんな設定を持ち込んだのだろう。既に、フェミニズム、排ガス、禁煙も進んだ世の中になっていたから、過去の事象としたのでは。二人で撮っていたポラロイドカメラは、80年代の終わり頃の製品だったが。
それに、ヒスパニック、黒人もマイノリティも、全くでてこない。やはり南部の白人中心社会のできごととするしかなかったのでは。その中で、私はハーベイ・カイテルの扮したハル刑事に共感し、彼の演技に好感を覚えた。彼は、東部のエスタブリッシュメントとはかけ離れた風貌だ。東ヨーロッパ系のユダヤ人のようだが。
トリヴィア;二人がテルマの家から出発するときだけ、サンダーバードは大型のキャンピング・カーを引いているようにみえた。編集時の見落としか。今度、BSでやるとき、確かめてみたい。

詠み人知らず