「縛られているもの、開放されていくもの。」テルマ&ルイーズ すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
縛られているもの、開放されていくもの。
○作品全体
互いが互いの縛られているものから開放していくような関係性が、ストーリーラインを大きく捻じ曲げなら進んでいく。そんな作品だった。
ルイーズは過去に縛られたキャラクターだ。最初のルイーズの殺人も、ルイーズの「私もレイプをされた」という深い傷のある過去や、放って置かれた彼氏の態度を見るために計画した今回の旅行(そしてその準備の様子)を見ていると突発的に物事を決める人間でなく、今までの出来事があった上で行動に移していることがわかる。レイプという出来事も、彼氏との関係性も、ルイーズはなんとか過去にしようと意識しているのだが、どこか自分の中で消化できずに残ってしまっていて、それがテルマによって消化されていく、といったような感覚を受けた。
テルマは今に縛られたキャラクターだ。いつまで続くかわからない、終わりの見えない夫との生活に嫌気が指しているが、そこから逃れることができない。しかし仮釈放中に逃げ出したJDと出会って、罪に縛られていながら自由に生きることを知る。旅行という「夫からの仮釈放」に近いテルマが、仮釈放中のJDから影響を受けて心の開放に結びつく、というのも面白いが、JDと関わったことによりさらなる窮地に立たされる。しかし、それすらも更なる開放に繋がる(コンビニ強盗、帽子盗み…今まで自分ができなかったこと、触れなかった世界)というストーリーラインがまた面白かった。
終盤にはメキシコへの方角や距離は曖昧となり、二人がその場にいることだけに焦点が当てられる。だからこそ、目的地にたどり着くかどうかという警察との攻防は一切抜きにして、本当に二人が望むことを決断するラストシーンが尚更輝いて見えた。
○カメラワークとか
・車のフロントガラスの枠を使ったフレーム内フレーム演出が大量に使われてる。車内と車外の空間を割ったり、車内にいる二人を割ったり。ワイパーでは拭けないフロントガラスの隅の汚れが二人をシンメトリーになるようなフレームとなる…というのも思い浮かんだけど、意識し過ぎだろうか。