「紅白の椿が流れる 娯楽時代劇の秀作」椿三十郎(1962) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
紅白の椿が流れる 娯楽時代劇の秀作
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総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:90点|演出:80点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
頭も腕もきれるのにどこか緩くて滑稽さがある三船敏郎演じる椿三十朗の圧倒的存在感は言うまでも無い。その他にも気持ちだけが先走りして空回りをする見るからに危なっかしい個々の区別はつきにくい若侍の集団、全く緊張感がなく緊迫した空気を和ます奥方、時々押し入れから現れて若侍以上に存在感を出す捕虜、昼行灯のようで実は一番正確に状況を把握している切れ者の城代家老、三十朗同様の抜き身の危険さを持つ仲代達也演じる半兵衛。敵味方とも魅力溢れる登場人物が多い。
狡賢く悪いやつらをやっつけるための話だが、そのための登場人物の個性と動きが作品を面白くしているし、それぞれが話を作るだけでなく作品を良く面白くする役割を持っている。危うく罠にはまって命を落しそうになった若侍が帰宅すると、捕虜がのんびりとお茶漬けを畳の上で食べているだけで雰囲気が変わる。そのあたりの緩急の付け方が上手いし、登場人物の役割にもそれは言える。
殺陣は最新の作品に比較すれば強引さがあってそれほど評価はしない。しかし相手のことを出し抜こうとする互いの陰謀と読みあいが刺激的だし、そこに潜入と斬りあいがあって緊迫感を作っている。その中に時々間の抜けた場面を挿んで滑稽な雰囲気も作り出し抑揚をつける。椿の紅白の区別は感心すると同時に可笑しいし、最後の決闘の場面の一触即発感は映画史に残る名場面。ただし血飛沫は飛びすぎ。
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