ベクシル 2077日本鎖国 : 特集
曽利文彦監督インタビュー
■実写では不可能なことを可能にしてくれる、3Dライブアニメの魅力
――モーション・キャプチャーを使ったアニメというのは日本で「アップルシード」があり、そのシリーズ最新作「エクスマキナ」も今年公開されますし、さらにこの「ベクシル」もあります。こうした技術は、さらに進化していくと思いますか?
「ただただリアルさを追求し、リアルな人間をCGで作っていくのはナンセンスだと思っています。だったら人間でやればいいのであって、技術の見本市みたいな作品を作る必要はない。ただ、どうしてもCGがないと描けないというものは、これからもずっと残ると思うので、そうした時にきちんとCGが使えればいいなと。自分の中では『ベクシル』は実写のつもりなんです。『ベクシル』みたいなスケールの実写が日本でも作れればいいなと思いますけど(笑)、それはすごく遠いことなのかもしれない。実写で映像化するのをあきらめなければならないストーリーが目の前にあった時、こうした3Dライブアニメという表現手法があることが、とてもありがたいと思っています」
――曽利監督はジェームズ・キャメロン監督のもとで「タイタニック」のCGを担当しましたが、そのキャメロンもこうした3D技術に興味を抱いていますよね。キャメロンと曽利監督とが同じ方向を見ているのかなと思うと面白いですね。
「キャメロンの中にも、何か実写でやりきれないことがあるんだと思います。『タイタニック』を作ってあまりにも大変だったと思うので(笑)。その後のCG技術の進化で、自分がイメージしたものを実写以上に作れる可能性を感じている部分があるんだと思います。多分、キャメロンくらいになると、実写でなければできないものと、そうでないものとが、自分の中できっちり別れていると思うんです。それで、彼の見えているものと同じようなものを、自分たちも見ているということなのかもしれません。実写とCGの両方をやってわかるものもあるんですが、自分は両方を経験ができたことがとても大きいと思いますね」
■声優初挑戦の俳優たちと、プロの声優の匠の技が融合
――黒木メイサさん、谷原章介さん、松雪泰子さんという声優初挑戦の3人が主演声優を務めていますが、アフレコはいかがでしたか?
「3人とも初めてなので不安もあったと思いますが、すごく一生懸命に取り組んでくれました。黒木さんは、鋭い眼やルックスも含め、ベクシルそのものでしたね。真っ直ぐな雰囲気が、だんだんキャラクターと同化していくあたりが面白かった。松雪さんはオーラがすごくて、松雪さんの演技そのものが、マリアに乗り移ったような印象が強かった。背中を見せているだけの場面でも、そこに松雪さんがいるような錯覚に陥ることがありました。谷原さんは、外見も整っていて男らしさが外に出ていながら内はナイーブで――それも非常に男性的だと思うんですけど、そんなところがレオンにシンクロしていていましたね」
――プロの声優さんと役者さんの違いは?
「声優さんは“匠”ですね。声の芝居に関してはプロフェッショナルで隙がなく、安心してお任せできる。普通の俳優さんは、特に今回は3人とも初めて声優をやるわけなので、細かく話し合いながらキャラクターを一緒に作っていきました。そこには完成されていない面白さがあり、予測の出来ない広がりを感じました。声優さんの匠な技に頼る部分と、初々しさの中で作り上げていく部分との両方が、うまいバランスを保てたと思います」
<<前のページへ