ファウンテン 永遠につづく愛 : 映画評論・批評
2007年7月10日更新
2007年7月14日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー
3つの愛の形を通して「永遠」を探求
物語の中心、宇宙の中心、そして映画の中心に、黄金と植物の緑が溶け合って柔らかな輝きを放つ、大樹が立っている。その樹は、鉱物、植物、動物の狭間にあってその性質のすべてを持ち、人間がその幹に掌を近づけると、樹皮から繊毛のような産毛のような細かい糸が立ち上がって反応する。
そして、この大樹の美に触れることが、そのままこの映画が描こうとしたものを感受することでもある、というのが本作の仕掛けだ。映画はひとりの男の現代・中世・未来での3つの愛の形を通して永遠とは何かを探求し、男の目の前でこの樹が「永遠」を体現する。この樹木の形象は、実際の流木を用いたもの。この象徴的な存在の視覚化に際して、自然が創った形を使うという監督の判断は正しい。
監督ダーレン・アロノフスキーは、カバラとSFを融合させた処女作「π(パイ)」が魅力的だったが、そろそろこれを超える作品が欲しいところ。とはいえ、本作は第2作「レクイエム・フォー・ドリーム」よりは第1作に直結している。第1作は粗い粒子のモノクロ映像とテクノとドラムンベースの音楽が作品世界と同期していたが、本作は黄金と緑を基本色にした滑らかな映像が物語に合致。音楽には前作のクロノス・カルテットに加え、轟音音響派のモグワイが参加している。
(平沢薫)