劇場公開日 2007年6月23日

「「よくこれを映像化できたな」というのが一番の感想」アヒルと鴨のコインロッカー といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「よくこれを映像化できたな」というのが一番の感想

2020年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原作である伊坂幸太郎の小説のファンで、何度も読み返したことがあるくらい好きな作品です。
「映画化された」という話を聞いたときは本当に驚きました。この作品は過去と現在のストーリーが交互に展開され、後半にその二つのストーリーが繋がっていくという作品で、伊坂幸太郎の持ち味である怒涛の伏線回収が存分に発揮された魅力的な作品でもあります。しかしこの作品は叙述トリックが多く登場する作品でもあり、「絶対に映像化不可能」だと思っていました。
原作ファンだからこそ、正直あまり期待せずに鑑賞いたしました。

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大学入学のために仙台のアパートに引っ越してきた椎名(濱田岳)。隣人の河崎(瑛太)という男から「同じアパートにいる引きこもり留学生のドルジに広辞苑をプレゼントしよう」という提案をされ、言われるがままに書店強盗を手伝わされるハメになる。渋々書店強盗に協力した椎名だったが、この事件の裏には2年前に起こった河崎と元恋人の琴美とドルジにまつわる物語が大きく関わっているのだった…。
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原作小説では主人公の椎名が書店強盗を手伝い河崎と親交を深めていくパートと、二年前に起こった河崎と元カノの琴美、そして留学生のドルジに関わる事件が描かれるパートに分かれており、二年前に起こった様々な出来事が現在の出来事の伏線となっているのがこの作品の魅力です。巧妙なミスリードもあり、恐らく初見で真相に気付くことができる人はいないんじゃないでしょうか。

しかし先述の通り原作小説は「文字だからこそ通用する」ような叙述トリックを多用する小説であるため、普通に映像化してしまうと絶対にラストに関わる重大なネタバレになってしまうんです。

「映像化不可能と言われていた作品を映画化」という作品はいくつもありますが、残念ながらそれらの作品は驚くほどにハズレの作品が多いです。無理やり映像化しようとして原作のストーリーを削ったり改変を行ったりして、せっかくの原作の魅力が削ぎ落とされている作品がほとんどなんですよね。

しかしこの「アヒルと鴨のコインロッカー」、期待しないで見たというハードルの低さもあるかもしれませんが、「ちゃんと映像作品として成立している」のです。これは本当に驚きです。もちろん映像化するにあたっての改変はありましたが、原作の良さを損なうことなくしっかりまとまった内容になっていたように感じました。原作ファンの私としても大満足のクオリティでした。

この映画を観て興味を持った方は、是非原作小説もご覧になってください。映画化にあたってカットされた部分もありますし、映画版と比較してみるのも面白いんじゃないでしょうか。オススメです!!

といぼ:レビューが長い人