劇場公開日 2007年6月23日

「牛タン弁当があるのなら、ブータン弁当があってもいいじゃないか。」アヒルと鴨のコインロッカー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0牛タン弁当があるのなら、ブータン弁当があってもいいじゃないか。

2018年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 中盤からのどんでん返しが上手い。前半、本屋で広辞苑を強盗するという場面がリアリティに欠け、なぜ盗まなきゃいけないのかさっぱりわからない。なにしろモデルガン2丁をわざわざ買うのなら、広辞苑を数冊買えるだろうに・・・隣の隣に住むブータン人留学生ドルジと恋人琴美(関めぐみ)との関係、彼女の勤めていたペットショップ店長麗子(大塚寧々)との関係とか、不自然なことが多すぎる。謎と不自然さに包まれているので、どうなることかと心配までしちゃいました。

 ひとつの真実が覆されると、全てが自然な展開となる。巧いな~ずるいな~悲しいな~と、観客の感情を揺さぶる見事などんでん返し。火野正平か枝豆をさえないキャラにしたような主演の椎名(濱田岳)の雰囲気もよかったためか、瑛太の存在感も輝いて見える(濱田が引き立て役とも言える)。さらに中盤以降に登場する松田龍平も魅力的に思えてしまう・・・特に“シャロンとマーロン”のつまらないショートストーリーだって心に残ってしまうんです。

 タイトルは「アヒルと鴨の違いを知ってるか?」という、どうでもいいようなテーマでしたけど、観終わってみると、日本語が喋れても未だに日本人に溶け込めないブータン人の悲哀まで感じられます。そして、犬を大切にする精神や、人の命をなんとも思ってないような悪人との対比。復讐をする行為はいかがなものかと思いますが、「風に吹かれて」のように答えを風の中に見つけられず、神様を封印することによって全てを正当化できないやりきれなさを感じさせてくれる。

 そのボブ・ディランの「風に吹かれて」がずっと使われているこの映画。本来は反戦歌であるのでストーリーとの関係も考えてみたくなります。戦争を続ける絶対悪を動物虐待を続けるチンピラたちと比較しても、テーマがこじんまりとしてしまってる。それでも外国人に対する偏見を取り去るとか、困ってる人を助けよう・・・などといったエピソードはよかったかも。

kossy