父ありきのレビュー・感想・評価
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父が亡くなった時の記憶も鮮明に甦りました
「父ありき」は、私の父が亡くなった直後に観た映画だったと思います。
その時には、子どもの目線が中心の映画という印象だったのだけれど、今観ると、徹底的に笠智衆さんが演じる父親視点の映画でした。
また一度も結婚していない当時の私と、子どもがいる今の私では、世界は全く違う分子で構成されているようで、ショックでした。
そして、ほとんど8割のシーンの記憶が無かった。それは衝撃的でした。
しかし、やはり名作です。
スクリーンで観返すことが出来て良かったです。
もう死ぬまでに二度とこんな機会は無いと思います。
自分の父が亡くなった時の記憶も鮮明に甦り、泣けました。
「ライスカレーを食べるか?」という笠智衆さんの愛情溢れる台詞が大好きです。
『ねッ、父さん。』
『ねッ、父さん。』なんて言葉、何年言ってないだろう。
と言うか『父さん』なんて上品で、小学校低学年は『父ちゃん』だった。だから『父さん』って一度も言わなかったって事だ。
そう言えば『パパ、ママ』が僕の世代では別格に上品だったなぁ。
25歳になったような息子が、親父と二人だけで旅行なんか行くか?
なんか薄気味悪い。戦中真っ只中。これから東京は焼け野原になる。小津安二郎監督は、その状況をどう判断していたのだろう?
また、親父の死なんて泣く様な話ではない。
西洋は『父親殺し』とか『子殺し』の哲学があるくらい。
『東京暮色』と同じ演出家にはどうしても見えない。
リベラルな父親が立派な息子を育て上げ、礼節を抱いて旅立つ。従って、父のいない社会は、これからどんな社会になるのか?
と言いたいのか?
まぁ、兎も角、いつもより台詞の回し方もぎこちないし、正面から撮るこだわりも少なかった気がする。
どっかに何かが隠されていると思い評価はする。
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