スカイ・クロラ The Sky Crawlers : インタビュー
「イノセンス」以来となる4年ぶりの長編アニメーション「スカイ・クロラ」の押井守監督にインタビュー。「若者に見てほしい」という本作について、また、本作の公開記念として、自身の代表作を最新技術を導入してリニューアルした「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0」についても話を聞いた。そこからは、「スカイ・クロラ」で新境地を開拓した押井が目指す、“これから”が見えてくる。(取材・文:編集部)
押井守監督インタビュー
「年を取ったことで人間的なものに興味が出てきた」

■「スカイ・クロラ」映像化にあたって
――小説の映画化は初めてですね。
「『そういえば小説原作って初めてだな』って途中で気付いたくらいで、あまり意識してなかった。僕にとっては原作が漫画だろうと小説だろうと同じみたい。漫画の絵に依存してアニメーションはできないし、やったこともない。映画と印刷物は表現方法が全然違うんだから、漫画も小説も映画との距離という意味では同じだね」

――原作でも描かれている、空での戦闘シーンのスピード感と地上での鬱々とした感覚の対比はどのように意識しましたか?
「雲の上というのは何もないんだけど、膨大な空間があり、ギリギリの生命感みたいなもので充填されている。地上は人間の作ったもので埋め尽くされ停滞していて、雲の上のようにダイナミックに展開しない。地上は“分節化された空間”で、同じ場所を何度も行ったり来たりしているだけなんだ。だから、スクーターや車を飛ばしていても、ほとんど移動感がないように演出してる。いくら移動しても空間を獲得できない。それが地上と空の違い。空にはそういう垣根が一切ない、“分節化されざる空間”。圧縮された時間が強烈に流れてる。コンマ数秒でも判断が狂ったら死ぬしかない。地上では何時間遅れようが関係なく、日常というどうしようもなく停滞した時間の中で生きるしかない。その2つの時間を描かないと、キルドレたちが生きている時間が実感できないと思った。だから『空中戦すごい』って言わせる必要があった」
――確かに空中戦の描写は圧巻でした。

「でも、それを5分も6分もやっていられないんだ。劇中の彼らがそうであるように、結局地上に帰ってくるしかない。空の上ではどんなドラマも進展しないんだよ。生死が分かれるだけで。彼らの(戦闘機の)燃料が尽きるように、映画としても1~2分(空中戦を)描いたら地上に戻ってくるしかない。人間が生きるドラマが成立するのは、地上の時間だから。この2つの時間を描くことに勝算がないと、この映画はできない。3DCGで濃密な時間と空間を作り出すとことには自信があったけど、問題なのは地上のほう。どれだけまったり感が出せるかが勝負だった。結果として、なんとか出来たと思う。今のところ、映画を見た人たちからは『まったりしていてだるいんだけど、なかなか良かった』と言ってもらえているから(笑)。アニメで(ビム・)ベンダースがやったような、まったりした時間を描くのは、相当な技量がないとできないわけだけど、今回は原画や動画のスタッフが悲鳴あげながらもがんばってくれた」
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